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生薬百選 65 ツワブキ


ツワブキに含まれる成分には抗菌性があるため、民間薬として、できものや切り傷等に使用されていたようです。
現在、ツワブキは民間薬としての使用よりも、食用もしくは園芸用として利用されることが多いようです。

研究所がある、長野県では越冬することが困難なため、群生しているツワブキを見ることはありませんが、私が生まれ育った長崎県の生月島では、逞しく繁茂するツワブキを見ることができます。
若い葉が生い茂る季節になると、茎の部分を食用とするため、おばさん達がのんびりとツワブキを採取する光景を目にします。

ツワブキの葉はフキと同じような形をしていますが、形態観察をするといろいろな違いが確認できます。
ツワブキの葉は濃い緑色で光沢がありますが(1)、フキの葉は緑色が薄く、光沢はありません。(2)
顕微鏡で観察しますと、フキの葉の表面には細かい毛が確認できます。(4)一方ツワブキの葉の表面にはフキの葉で見られた細かい毛は無く、葉脈に沿って生える長い毛が観察できます(3)。

写真1.左:ツワブキ(1)、右:フキ(2)
写真2.葉の表面 左:ツワブキ(3)、右:フキ(4)
写真3.茎の断面 左:ツワブキ(5)、右:フキ(6)

次に茎の断面を観察してみました。
ツワブキは維管束が不均一に配置されていますが(5)、フキの維管束は均一に配列されており、茎の中央部には穴が開いていました(6)。
ツワブキとフキの形態観察で以上のような違いを確認することができました。

見た目が似ている植物も、葉の表面で確認される毛の違いや、維管束の配列の違いなど、様々な特徴を見つけて判別することができます。さらに含有する成分の違いを確認することで、植物を鑑別することができます。最近ではDNAを調べて、植物の特定を行うこともありますが、まずは、植物を観察することが大事です。

ちなみに、個人的な好みですが、フキよりもツワブキの方が柔らかく、美味しいと思います。


■ 古川 康二 (養命酒中央研究所・商品開発グループ)