HOME > 生薬百選 > 【2008年9月号】生薬百選 54 栝楼根(カロコン)


生薬百選 54 栝楼根(カロコン)



お盆も過ぎ、ここ信州は一気に秋の装いが増してきました。秋といえば「真赤な秋」という童謡がありますが、その歌詞に「〜カラスウリって まっかだな〜」というフレーズがあります。ということで、随分強引なこじつけですが、今回はカラスウリにちなんだ生薬を紹介します。 日本の公定書(日本薬局方)にはカロコン(栝楼根)という生薬が収載されており、「本品はTrichosanthes kirilowii Maximowicz、キカラスウリTrichosanthes kirilowii Maximowicz var. japonicum Kitamura、またはオオカラスウリTrichosanthes bracteata Voigt(Cucurbitaceaeウリ科)の皮層を除いた根」と記載されています。写真は当所見本園のキカラスウリですが、葉はキュウリやメロンに似ており、夏に白い涼しげな花を咲かせます。


キカラスウリ(2005年8月5日撮影)
キカラスウリ(2005年8月5日撮影)


根は、下の写真のようにサツマイモのような形をしています。成分は主にでんぷん、trichosanic acidなどの脂肪酸、アミノ酸、トリテルペンなどで、漢方処方や民間薬として解熱、止瀉(下痢止め)、鎮咳の目的で使用されます。一般の方々には根を粉末とした「天花粉(ベビーパウダー)」の方が有名かもしれません。



キカラスウリの根(2008年8月 当所見本園)
キカラスウリの根(2008年8月 当所見本園)
生薬「栝楼根」
生薬「栝楼根」

また、「ウリ」の仲間ですから当然実も付きます。これは、日本薬局方には収載されていませんが生薬として使われており、実全体(果実)は栝楼実(かろじつ)、中の種子だけは栝楼仁(かろにん)、逆に外側の皮(果皮)だけは栝楼皮(かろひ)と呼ばれ、根と同様に解熱、止瀉の目的で使用されます。栝楼根は厚生労働省の出した通達により、医薬品原料としてしか使用出来ないことになっているのに対し、実は医薬品的効能効果を標榜しなければ食品原料と しても利用できます。


キカラスウリの未熟果実(2007年10月 当所周辺)
キカラスウリの未熟果実
(2007年10月 当所周辺)
生薬「栝楼仁」
生薬「栝楼仁」
生薬「栝楼皮」
生薬「栝楼皮」


蛇足ですが、日本薬局方に記載されている3種のうち日本に自生しているものはキカラスウリとオオカラスウリで、分布は前者が北海道南部〜奄美群島と広く、後者は四国以南とのことです。なお、キカラスウリの実はその名の通り黄色で「真っ赤」ではありませんのであしからず。


■ 泊 信義(養命酒中央研究所・主任研究員)
鹿児島県出身。薬草園管理の責務を果たしながら、生薬のDNA鑑別、栽培試験を行なってきましたが、最近では生薬、和漢天然素材を応用した商品開発に関わるようになってきています。