icon_plant_mini 薬酒が誕生するまで

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この不思議な液体アルコール

アルコールには、以下のような作用があります。

  • 飲むと酔う(陽気にさせる)
  • 血行•血流を促進する
  • 食欲を増す
  • 体を温める
  • 安眠を促す
  • 疲れがとれる

よく酒をたしなむ人に胃潰瘍や十二指腸潰瘍になる人が少ないといわれているのも、この“陽気になる”作用(自律神経の抑制作用)によって、潰瘍の原因となるストレスや不安が発散されるためといわれています。
そのほか学習記憶促進作用がある、殺菌作用や溶解作用がある、熱源になる(7kcal/g)など、大変有用な液体なのです。

薬酒なるほどMEMO

合薬(あいぐすり)
人と人との間に相性があるようにその人の体質に合ってよく効く薬のこと。薬酒の場合は体質を選ぶということはほとんどないが、よく効くかどうかは最初に口にしたときの感じが一つの目安。飲用感が快く感じたときは、体の状態と薬(効能)が合っており、効果も早く的確にあらわれる性質がある。

薬になる動植物・生薬の発見

今から数千年前、人々は酒に薬草類(生薬)を浸し薬酒にして飲用することを考え出しました。酒の効用と生薬を一つにしたら、より効果的な薬ができ、しかも楽しく飲めるのではないかとの考えからでした。
当時、酒は今日のように酔うための飲み物ではなく、貴重な医薬でした。 食べ物としての穀物や果実は人間の生命を司る霊力を持つと信じられ、酒はそのエキスなので霊力がより濃厚であると考えられたのが始まりです。
古代、酒が貴重な医薬であったことは、“酒は百薬の長”ともいわれ、また現在の「医」の字の古字が「醫」で医が酉(さけ)によって支えられたかたちになっていることからもわかります。一方、人々は日常の食生活の経験の中から、口にする動植物の中に特別な作用を持つものがあることに気付きました。
たまたま体の具合がよくなかったとき、口にしたものによっては体の調子や気分がよくなることに気付き、その経験を集積して、薬になる動植物、つまり生薬を発見したのです。

薬酒なるほどMEMO

女の腰に火をいけよ
女性の腰部は冷えやすいから温めよということわざ。ふつう皮膚温は血液の流れの多少で調節されているが、女性の場合この調節機能が失調しやすいため、局所的に皮膚面の血流が異常に少なくなることがある。腰や手足が冷たくなるのはこのためで、こんなときはぜひ薬酒を試されることをおすすめしたい。

酒と生薬の出会い

生薬を発見して、次に人々が考えたことは、これをどのようなかたちにしたら、より効果的にその効用を体に取り入れることができるかということでした。
これらの薬を必要とする病人は健康な人と同じような粗い加工(料理)の仕方では体が受け付けないからです。
まず水で煮て成分を取り出し、服用する方法が考え出されました。漢方の煎じ薬(湯液)がそれであり、西洋料理のスープも薬効成分や栄養を水で煮出して病人に与えたのが始まりとされています。
また、生薬を細かくすりつぶし、粉や丸材にして服用する方法も考えられました。やがて人々は「酒服」といって、これらの薬をもう一つの薬である酒と一緒に服用する方法を試みるようになりました。
薬としての効果がより高まるのではないかとの考えからでしたが、さらにその経験と知恵を発展させて、酒の中へ直接生薬を入れ成分を取り出して服用する方法、つまり“薬酒”にして飲用する方法を編み出しました。

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香水
15世紀、フランス王アンリ二世の妃カトリーヌは従者に薬酒造りの名人を多く抱え、香りの高い香木を用いて強壮酒などを造り好評を得た。これが王侯貴族の間で反響を呼び、 薬酒造りを活発化させることになるが、今日、フランスの香水やリキュールが有名なのはこのあたりに理由があるともいわれている。
コーディアル(Cordial)
薬草類を酒に浸し、香味と甘味を加えて造られる強壮剤で一種の薬酒。あるアメリカ映画の中で、男たちが大仕事に出かけるとき仲間に “Haven’t you got a little cordial or something”(コーディアルか何かないかね)という場面があった。力をつけて行こうぜというわけである。

生薬を酒に浸して薬酒に

生薬を酒に直接浸し薬酒にすると、いろいろな利点や特徴のあることがわかってきました。

まず、アルコールの作用によって、生薬に含まれている薬効成分が自然に近い状態でよく浸出します。浸出した成分はアルコールと一体になっているため、体内によく吸収されるとともに血行に伴われて体内にいきわたり、効率よく効果を発揮します。

さらに、体が温まる上、生薬の薬効にアルコールの効用が加わるため効果の幅が広くなるなどの特徴が生まれます。用法上も、異物感や違和感がなく飲みやすく、生薬の自然の香味が心身に快い刺激となって楽しく飲用できます。

アルコールには保存作用があるので、品質を損なうことなく長く保存でき、いつでも飲用が可能であるなどの利点のあることがわかりました。

酒と生薬を一つにしたらより有効な薬ができるのではという考えから生まれた薬酒。人々は、酒と生薬を一つにしたときの特質や利点を、かなり早い時期から見いだし活用してきました。

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国字
わが国で使われている漢字の大半は中国から入ってきたものであるが、日本特有の風土、文化、生活様式などから独自で作られた文字のこと。峠、裃(かみしも)、畑、堀、躾(しつけ)、噺(はなし)など意外に多い。 薬酒も中国が本場であるが、わが国の風土や疾病状況に合わせて日本で独自に発達してきた薬酒もある。養命酒もその一つ。

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