HOME > 健康の雑学 >  【2019年10月号】 銭湯の雑学

銭湯の雑学

「ペンキ絵も現代風に。進化する銭湯アート」「銭湯の黄色いアイコン『ケロリン桶』の秘密」「今も昔も人気ドラマや映画の舞台背景に欠かせない銭湯」——今月は銭湯の雑学をお届けします。


ペンキ絵も現代風に。進化する銭湯アート

昔ながらの、東京の銭湯によくみられるペンキ絵。定番は雄大な富士山や日本三景ですが、近年では「東京スカイツリー🄬」や「北陸新幹線」など、現代的なモチーフも増えています。中には、従来の常識を打ち破る斬新な銭湯アートが見られることも。
例えば、昭島市の「富士見湯」のペンキ絵は、愛嬌(あいきょう)のある招き猫や鯨、亀などが大胆に描かれていて、とてもポップな雰囲気。また、豊島区の「大塚記念湯」の脱衣所は、天井いっぱいに星空やロケットが描かれためくるめく宇宙空間が広がっています。

ただ、ペンキ絵はお風呂の湯気で劣化しやすいため、どんな傑作も数年ごとに描き替えられる運命にあります。そんなはかなさもペンキ絵の魅力かもしれませんが、最近ではペンキ絵ではなく、プロジェクションマッピングが楽しめる銭湯も登場。
練馬区の「天然温泉 久松湯」では、湯船につかりながら、浴室の壁に映し出される洗練された光のアートが満喫できます。近い将来、IT技術を駆使した最先端の銭湯アートがお目見えするかもしれませんね。


銭湯の黄色いアイコン「ケロリン桶」の秘密

全国の銭湯で長年愛されている黄色い「ケロリン桶」。少々のことではビクともしない耐久性を誇ることから「永久桶」の異名も持つ超ロングセラーアイテムですが、その発祥は高度成長期の1963年にさかのぼります。
「ケロリン」とは、富山県の製薬会社「富山めぐみ製薬」の鎮痛剤の名。ある広告会社の営業マンが、風呂桶の底に広告を入れるアイデアを思いつき、家庭薬配置業で有名だった内外薬品(のちに他2社と共同で富山めぐみ製薬を設立)と独占契約を結んだことから、「ケロリン桶」が誕生したのです。
折しも東京五輪(1964年)の前年で、衛生面を考慮したプラスチック製のバケツが一斉に普及した時代だったこともあり、従来の木桶より衛生的なプラスチックの「ケロリン桶」は、瞬く間に全国の銭湯に普及していきました。

ちなみに、初代の「ケロリン桶」は白色でしたが、汚れが目立たない黄色に変更になったそう。また、「ケロリン桶」には関東用と関西用の2サイズあり、関西用のほうが一回り小ぶりです。理由は、関東ではかけ湯の際にお湯をカランからくみますが、関西の銭湯では湯船から直接湯をくむ習慣があるため、桶が大きいとかけ湯がしにくいからです。現在では桶だけでなく、湯桶ストラップや湯桶イヤホンジャックなどのケロリングッズがあり、ケロリン・ヘルスケアショップで入手できます。


ケロリン桶


今も昔も人気ドラマや映画の舞台背景に欠かせない銭湯

東京の銭湯が最も多かったのは1968年。ちょうどその頃にお茶の間で大人気だったテレビドラマ『時間ですよ』(TBS)は、舞台が東京下町の銭湯という設定でした。若き頃の橋田寿賀子さんや向田邦子さんが脚本を務め、昭和のスターが数多く登場していました。

銭湯が減ったといわれる現代でも、ドラマや映画に銭湯は度々登場します。人気テレビドラマ『ドクターX ~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日)では、主人公の米倉涼子さんが銭湯に入るシーンが毎回登場するのが話題になりました。
映画でも、銭湯と古代ローマ風呂をテーマにした『テルマエ・ロマエ』が2012年に大ヒット。日本アカデミー賞など、国内外の映画祭で多数受賞した2016年公開映画『湯を沸かすほどの熱い愛』も、銭湯を営む家族の物語です。

近年では、銭湯でミュージックビデオやグラビアの撮影をしたり、銭湯で映画上映や音楽フェスを催したりするなど、従来にない形で銭湯が利用されることが多くなっています。銭湯が減っているとはいえ、今も昔も銭湯は老若男女に愛される存在なのです。


銭湯で音楽フェスのイラスト