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はちみつの雑学

「女王ばちをめぐるみつばち組織の厳しいオキテ」「古来より世界中で愛されてきたはちみつ」「クマの好物は本当にはちみつ?」――今月は「はちみつ」の雑学です。


女王ばちをめぐるみつばち組織の厳しいオキテ

みつばち組織では、女王ばちは巣の絶対王者です。しかし、女王ばちと他のはちの遺伝子に違いはありません。ただ、みつばちの巣にある「王台」と呼ばれる特別室に産み付けられた幼虫だけが、働きばちの約3~4倍に成長し、はえ抜きの女王ばちとしてめきめきと頭角を現します。その秘密は、王台に貯蔵されたローヤルゼリーです。働きばちが分泌したローヤルゼリーには多様な栄養が濃縮されており、それを生涯食べ続けることで、女王として毎日1,500~2,000個の卵を産み続け、働きばちの30~40倍もの長寿をまっとうするのです。「氏より育ち」ということわざがありますが、何を食べて育ったかでここまで差が出てくるのです。
女王ばちの身の回りのお世話は全て働きばちの仕事です。といっても、働きばちは全員メス。オスの仕事といえば、女王ばちがまき散らすフェロモンにつられて空中で交尾し、子孫を残すことぐらい。しかも交尾直後に絶命し、交尾できなかったオスたちも巣から追い出されてのたれ死にます。みつばちの組織に男女平等はないのです。オスばちは英語で「Drone」といい、ドローンの語源にもなっていますが、この言葉には「働かない居候」という意味もあるのだとか。
なんとも過酷な女王ばちの絶対王政ですが、次代の女王ばちが育ってくると、現職の女王ばちは勇退し、一部の働きばちをお供に従えて引っ越します。しかし、中には頑として退かない女王ばちもいます。そうなると、新旧の女王ばちが最終兵器の刺し針を使ってデスマッチを繰り広げます。なんとも厳しい組織に見えますが、これも種を絶やさないためのみつばちの知恵なのです。


古来より世界中で愛されてきたはちみつ

「はちみつの歴史は人類の歴史」――これは英国のことわざですが、はちみつの歴史は非常に古く、『ギリシア神話』にも、養蜂の神が登場します。紀元前のスペインや南アフリカなどの洞窟遺跡には、はちみつを巣から採取する「ハニーハンター」の壁画が見られます。今のように防護服がなかった時代は、はちに襲撃される危険性が高かったと思われますが、古代人にとって栄養たっぷりの甘いはちみつは、リスクを冒しても手に入れたい貴重な食べものだったのでしょう。養蜂の歴史が古いヨーロッパでは、みつばちは大切な家族と考えられていたようで、英国では主が亡くなったり、娘が結婚をする時は、巣箱に向かってちゃんと報告する習慣があるのだとか。
日本でも、古くからはちみつが薬として重用されていましたが、やんごとなき人しか口にできない贅沢品だったようです。平安時代には藤原道真が、牛乳から作ったドロドロの「蘇(そ)」にはちみつを混ぜたレアチーズケーキのような「蘇蜜」を愛食していたといわれています。養蜂が普及するのは、江戸時代になってからですが、当時の日本では、みつばちの巣を仕切っているのはオスばちだと考えられていたようです。まさか城主が女王ばちで、城を守るサムライたちも全員メスとは、ゆめゆめ想像できなかったのでしょう。


クマの好物は本当にはちみつ?

今秋、ディズニーの実写版映画『プーと大人になった僕』も公開されて話題を呼んでいる『クマのプーさん』。原作は、A・A・ミルンが1926年に発表した英国の児童小説『Winnie-the-Pooh』で、冒頭からプーさんが樹によじ登り、みつばちの巣からはちみつを獲ろうとするシーンが描かれています。アニメーションでもはちみつはプーさんの象徴となっており、プーさんがデザインされたはちみつグッズも多々あります。
しかし、実際のクマも本当にはちみつが大好物なのでしょうか?テディベアやプーさんのモデルになったといわれるアメリカグマ(アメリカクロクマ)は、木の実や草、昆虫、魚類から、動物の死骸まで食べる雑食性ですが、はちの巣や養蜂箱を壊してはちみつを食べることもあるようです。また、クマの中で最も小さくおとなしいといわれるマレーグマも、養蜂箱をしばしば狙うそう。プーさんのようにかわいいと思いきや、養蜂場からは害獣扱いされているようです。
ただ、クマが養蜂箱やはちの巣を壊す真の狙いは、はちみつというより、サナギやハチノコであるという説が有力です。はちみつも栄養満点ですが、サナギやハチノコはタンパク質や脂質がより豊富なので、クマが冬眠する際の栄養源にもってこいなのです。ちなみに、巣を襲われたはちは当然クマを刺しますが、分厚い毛皮には刺さりにくいため、耳や鼻を狙うのだとか。もっとも、クマにとっては、はちに刺されることより、冬の空腹のほうがずっと怖いのかもしれません。