HOME > 健康の雑学 > 【2011年12月号】 お鍋の雑学
日本のみならず、世界の食卓を彩る鍋。時代や地域によって作法が異なる点も興味をそそります。相撲部屋のちゃんこ鍋から、遠くポルトガルの鍋の“シメ”、江戸庶民の鍋料理などの雑学です。
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皆で集まって鍋を囲む楽しさは、誰もが認めるところですよね。ただし、古今東西を見渡してみると、鍋の囲み方も実にさまざまです。
「鍋をつつく」という言葉がありますが、実際のところ日本では、菜箸やお玉を使って取り分けるスタイルが主流です。文字通り、鍋をつつく習慣があるのは中国や韓国などのアジア諸国。自分の箸やスッカラ(柄の長いスプーン)を鍋にドボンといれて具を取ります。ヘンに気を回してお箸を逆さにしたり、菜箸などを使って取り分けると、逆に「他人行儀な人だな…」とマイナスなイメージをもたれてしまうこともしばしば。アジアを旅行して現地の人と鍋を囲む機会がもしあるなら、「郷に入りては郷に従え」の精神で臨みましょう。
逆に、菜箸どころか「お鍋」まで一人一個というケースがよくあるのは、アメリカなどの欧米諸国。アメリカのしゃぶしゃぶレストランでは、一人一個というスタイルがよくあります。アジアと欧米、どちらが良い悪いの話ではなく、文化の違いといえるでしょう。ちなみに日本には、“おひとり様”のための鍋料理店も存在します。どういうわけか、大阪や京都など関西圏に多くみられる業態ですが、この場合も当然ながら一人につき鍋一個です。鍋を“囲む”ことはできないけれど、一人で鍋が食べたくなった時には最適ですね。鍋のヘルシーさが注目を集めている昨今ゆえ、女性の一人客も多いのだそうです。
ただ、鍋のルーツを辿ると、「一人鍋」もあながち異質というわけではありません。江戸時代、小さな鍋を使って2、3品を煮た鍋料理「小鍋立て」が庶民の間で流行しました。1人か、多くて3人程度で囲むくらいの規模の鍋です。
もともと、汁ものなどの料理は囲炉裏の上からぶら下がる自在鉤に鍋をひっかけて作られていました。しかし、大勢の人がひしめいて暮らす江戸においては、いわゆる大家族ではない“核家族”も珍しくありませんでした。住居自体も狭いため、田舎の豪農のように囲炉裏自体がない。そこで登場したのが七輪です。七輪自体、そんなに大きなものではないので、小さな鍋がフィットしそうですよね。また、暖を取る火鉢も「小鍋立て」の熱源として利用されていたそうです。