HOME > 健康の雑学 > 【2008年4月号】世界の「春の食卓」



日本と世界の「座る」歴史


アントニオ・ビバルディ作曲の「四季〜春〜」の軽快なメロディに代表されるように、日本に限らず四季のある国にとって、春は心躍る季節です。当然ながら、食卓も春の装いになります。そこで今回は、世界の「春の食卓」を巡りつつ、日本の「春の食卓」はどのように移り変わってきたのか、ご紹介しましょう。



欧州の食卓に春を呼ぶ「ホワイトアスパラガス前線


ヨーロッパにおいて、春の訪れを告げる食材として真っ先に挙がるもの、それはホワイトアスパラガスです。“グリーン”は一年を通じて市場に出回りますが、土をかぶせ日光を避けて育てられた“ホワイト”は、春ならではの食材。瑞々しく、苦味と甘味が絶妙なバランスを保つホワイトアスパラガスは、ヨーロッパ各国の市場にズラリと並びます。スペインを皮切りに、フランス、ドイツ、オランダへと北上していく為、日本の桜前線のように「ホワイトアスパラガス前線」があるほどです。

食べ方は、塩茹でが一般的。茹で汁はスープとして食卓に上ることもあります。軽くソテーして溶かしたバターをかけたり、卵黄とバターで作る「オランデーズソース」をかけて食べる料理もヨーロッパの人々に愛されています。日本では缶詰で売られていることが多いですが、生のホワイトアスパラガスの味は格別。北海道では5月頃に出荷されるようなので、一度「お取り寄せ」してみるのもよさそうです。

そしてもうひとつ、代表的な春の食材がタンポポ。現在の日本でも一般的に咲いている「西洋タンポポ」です。食べるのは主に葉の部分。あのギザギザした形状がライオンの歯を彷彿とさせることから「ダンデライオン」の名がつきました。春の食材特有のほろ苦さが、メインディッシュの付け合せやサラダとして重宝されています。また、根を乾燥させ、焦げ目がつくまで炒って、ミキサーで粉末にしてコーヒーのように漉して飲む「タンポポコーヒー」もポピュラー。カフェインが入っていないので、妊婦の方にもおすすめです。利尿作用促進にもよいとされています。そもそも日本では「野の花」として位置づけられるタンポポですが、欧米では「野菜」や「ハーブ」の一種として栽培されているほどです。

魚では、日本と同じく鰊(にしん)が春の食卓に上ります。日本では春告鳥がウグイス、春告魚が鰊。しかし鰊の漁獲量が減ったことにより、春告魚の名をメバルや鰆(さわら)に譲っているような状況です。ヨーロッパでは復活祭の前に肉食を禁じる地域があったことから、その時期に鰊料理が尊ばれたとか。現在でもオランダでは街中の屋台でファーストフードのように売られています。しかも、顔を上に向けて口を開け、鰊の尻尾をつまみあげて頭から丸ごと飲み込む食べ方が一般的!なんとも豪快です。



冬、そして飢饉を乗り越えるための食材


さて、日本の春の食卓に話を戻しましょう。日本人が春の山菜を食べていたとされるのは縄文時代から。青森市の三内丸山遺跡から「タラの芽」の種が発見され、灰汁抜きなどの技法も確立していたのでは、と推測されています。

有名なのは万葉集に収められた、光孝天皇の『君がため 春の野に出でて若菜つむ わが衣手に雪は降りつつ』という歌。万葉集にはノビルやフユアオイなども登場しています。当時からイタドリやからし菜、わさび、ナズナなど、多くの春の食材が食されていたようです。


また、春を感じるために、その時期に食べたことももちろんですが、東北地方などでは次なる冬に備えるため、山菜に塩漬け、乾燥などの加工を施し、貴重な保存食としても活用していました。貧窮する藩の財政を立て直し、名君の誉れ高い米沢藩の上杉鷹山なる殿様は、山菜のパワーに着目。気候のあおりを受けやすい稲作と並行して、飢饉に備えて山菜の研究を奨励したり、たんぱく源となる「鯉」の養殖を城のお濠で始めるなど、積極的に「食の政策」を進めていました。そのため、全国で飢饉により餓死者が出る中でも、米沢藩の民の食卓は安泰だったそうです。

また、修行僧たちは質素な食事の中でも厳しい修行に耐えることができました。それには豆腐などを作る大豆だけでなく、山菜など春の食材も一役買っていることと思います。春の食材のパワーをすでに先人達は知っていたといえるでしょう。





春の味覚を満喫しに出かけよう!


吉野フォレストヒルズ 花ごころ


奈良県吉野郡の山あいは、古くからわらびの名産地として知られています。同施設内の5ヘクタールに広がる“わらびの園”は圧巻。貸しバンガローもあり、キャンプ場としても機能しています。実際に天然のわらび狩りが楽しめるのは4月半ばから6月にかけて。バンガロー宿泊者は山菜づくし弁当や山菜うどん・ご飯などの食事を楽しむことも可能です。

詳細はこちら





寺山竹の子園


東京・日の出町にはたけのこ狩りができるスポットが複数あります。そのうちのひとつが「寺山竹の子園」です。例年4月下旬から5月中旬までがシーズン。自ら掘ったたけのこは、1kgあたり400円で持ち帰ることができます。たけのこを掘る道具の貸し出しもあり、見つけ方、掘り方のコツを丁寧に教えてくれるので、初心者でも安心です。同園では竹炭・竹酢・竹製品等の販売も行なっています。

詳細はこちら


沼津港


春の「海の幸」を味わいたいなら、全国各地の港にある市場がおすすめ。最近では観光客も多く、市場内や周辺で獲れたての魚を味わうことができます。なかでも静岡県沼津港は飲食店が充実。駿河湾で獲れる春の味覚、桜海老が絶品です。しかも乾燥させたものではなく、生の桜海老を満喫できるのが現地ならでは。春と秋に獲れる生の「しらす」もぜひ味わってみてください。

詳細はこちら