HOME > 健康の雑学 > 【2006年8月号】ヒトを治す「ペット」が持つパワーとは?



ヒトを治す「ペット」が持つパワーとは?


皆さんのなかにも、犬や猫などのペットを飼っている方がいらっしゃると思います。
太古の昔から、人間と動物は時として共存し、今でいうところの「ペット」を飼ってきました。
今も昔もペットを飼う理由は「かわいいから」「一緒にいて楽しいから」といった部分はかわらないと思いますが、昨今では「動物が人を癒す」効果が科学的に検証されはじめ、数々の医療・福祉の現場で、動物の持つ癒し効果が活用されています。

今回は「ペット」が人の健康や元気にどのように作用するのか、雑学を交えつつお送りしましょう。



世界的に評価の高い「乗馬」と「イルカ」の力



人が動物を「飼う」歴史は、古代まで遡ります。最初は、狩猟を行う際の「お供」としてだったり、鼠などの小動物から穀物を守る番として、人は動物を飼っていました。


そこに「愛玩」という意味合いが加わってきます。古代エジプトの上流階級では空前の猫ブームが起こり、貴族たちが猫を寵愛しました。犬や猫に限らず、たとえば鯉や金魚などを飼って「愛でる」ことも、中国をはじめ全世界的に広まっていきました。


日本に猫がペットとして輸入されたのは平安時代の頃。当時はもちろん「ノラ猫」なんていません。とても貴重な動物だったため、当初は犬のように縄でつないで飼われていたそうです。しかしあるとき、家の柱や衣類、穀物などを食い荒らすネズミを追う習性を猫が持っていることがわかり、それ以来放し飼いされることになりました。ちなみに1602年には、街ぐるみのネズミ対策として京都所司代、板倉勝重が「猫放し飼い令」を出しています。


「愛玩」と、狩猟やネズミ駆除などの「役割」、双方の意味で愛されてきた動物達。しかし、一部では古くから「療法」として活用されていました。古代ローマ時代、負傷兵を馬に乗せて移動させた際に治癒効果があることがわかり、負傷兵のリハビリとして「乗馬」が奨励されていたといいます。


時は流れて1875年のパリでは、乗馬が麻痺を伴う神経障害に有効な治療となることが発見されました。以降、イギリスやドイツでも奨励されはじめ、日本には1970年に紹介され、世界的な広まりをみせています。乗馬の揺れ、馬が歩くリズムが神経に作用して、病気治療や予防に繋がるといわれている他、騎乗することで通常よりも目線が上がり、大きな動物を操作しているといった認識から自己評価が高まり、心の病の改善に繋がるとの声もあります。


乗馬の他に、世界的に効果が認められているのは「イルカ療法」。特にアメリカでは盛んに取り入れられています。イルカと一緒に泳ぐことにより、精神的な障害や自閉症、うつ病に効果があるとされ、実際の改善例も報告されていますが、科学的な解明はまだこれからといったところです。イルカと馬、双方に共通しているのは、頭の良さ。相手を観察し、意思を通わせようとするところが、人間のコミュニケーション能力を刺激し、活発化させるようです。


こうした動物とふれあうことによって身体と心の健康向上を図る療法は、「アニマルセラピー」と呼ばれています。日本では1995年に「ヒトと動物の関係学会」が設立され、本格的な研究がスタートしています。先駆けて福祉などの現場ではすでに取り入れられ、老人ホームなどではお年寄りが一様に表情を緩め、性格が明るくなって外交的になった事例も多くみられています。


しかしながら動物は、飼うことが大変なのも事実です。動物アレルギーを持つ方もいることでしょう。そこで替わりとなるのが「ぬいぐるみ」。単なるぬいぐるみではなく人工知能を持ち、声に反応してバリエーション豊かに動く点が特徴です。産業技術総合研究所では、あざらしの形をしたセラピーロボット「パロ」を開発。アニマルセラピーの見地から開発され、特別養護老人ホームなどで一定の効果を得ているとのこと。平成14年「最もセラピー効果があるロボットの発明」としてギネスブックにも掲載されました。


ストレスを解消して心をリラックスさせ、脈拍などの安定をもたらすといわれるペット達。ぜひ触れ合う機会があれば、積極的に動物達にアプローチしてみてください。