HOME > 健康の雑学 > 【2006年3月号】丸ごと食べよう!脈々と続く「ホールフード」文化
「ホールフード」という言葉をご存知ですか?
一言でいうと「丸ごと食べる」、つまり野菜などでも実だけを食べるのではなく、葉や根や皮なども含めて丸のまま食べよう、という考え方です。
「ホールフード」という言葉自体は新しいものですが、考え方としては古くからあったことですよね。それが飽食の時代を経るとともに薄れてきていました。
さらに農薬に対する危険性が取り沙汰され、流通上の効率から葉を落とした状態で出荷するケースも増えてきています。
しかし、皆さんご存知のとおり今年の冬は野菜の価格が軒並み高い状況です。こんなときこそ、野菜をムダなく食べて、栄養を摂ることが大切!ということで今回は、日本人の叡智の結晶といえる「残りもの料理」についての雑学をお届けいたしましょう。
日本の「グルメ史」を紐解くと、必ずといって登場する人物といえば北大路魯山人です。
画家、陶芸家、書道家、漆芸家などの顔を持つ魯山人は「美食家」としても名高く、「美食倶楽部」や「星岡茶寮」などの料亭を創業し、自ら考案した料理を自らの食器で振舞っていました。
素材を吟味し尽し、高級食材ばかり扱っていたイメージを持たれがちな魯山人ですが、じつは「ホールフード」の考えをも併せ持つ料理家でした。魯山人が板場へ立つと、出る残飯の量はいつもの1/3。大根の皮を剥くのはお客様への体裁料理、もしくは皮が古い時に限る、なんでもかんでも剥いて捨てる料理人は駄目だ、という信条を持っていました。
どんな食材でも必ず「持ち味」がある、利用できるものをすべて利用してこそ、はじめて「料理」、すなわち「ものの理(ことわり)を料(はか)る」という名に値し、料理人の資格がある、とまで語っています。
魯山人の出身は京都。寺社仏閣の多い土地柄からか、昔から京都には「残り物」をうまく活用する文化がありました。干した大根の葉に「軒しのぶ」という粋な名前が与えられ、食されていたのも京都ならではのこと。また、湯葉を作る際、竹に付着した湯葉さえ「樋(とい)湯葉」としてから揚げにするなど、食材を大切にする文化の影響を魯山人も存分に受けていました。
野菜に限らず、日本全国には残り物をうまく使った料理が多々あります。たとえば青森のじゃっぱ汁。冬場、脂ののった鱈のアラや野菜の切りくずなどを入れた郷土料理です。「じゃっぱ」という呼び名自体が「雑葉」、つまり残り物の葉や皮などからきているという説もあります。
また、今では一般的な食材といえる動物の内臓「モツ」も、明治初期頃には貧しい人々の滋養強壮を担うスタミナ食として持てはやされていました。
では実際、野菜の「捨てられがち」な部分にはどのくらい栄養が含まれているのでしょう?
大根の皮にはビタミンC、そして毛細血管を丈夫にするビタミンPが多く含まれ、高血圧の予防や脳卒中予防などに効果があるといわれています。一方、大根の葉はビタミンA、ビタミンC、ビタミンEなどが豊富。捨てるにはあまりにももったいないと思えるほどの栄養価です。味噌汁の具やきんぴら、和え物などにして、美味しくいただいてみてください。
さらに今年高値がついた野菜といえばキャベツ。キャベツの芯は食物繊維を多く含み、ビタミンCも豊富です。さらに一番外側の緑が濃い葉、捨てていませんか?この部分には体内でビタミンAに変わるベータカロテンが多く含まれているんです。ご存知のとおりビタミンAは目に良いとされ、さらにがんや生活習慣病予防にもよいとされています。
とかく捨てられがちな部分ほど、多くの栄養を含んでいるものです。アクが強い場合は充分にアク抜きして、料理に活かしてみてください。ただ、ジャガイモの芽のように毒素を含むものも稀にありますのでご注意くださいね。