HOME > 特集記事 > 【2017年12月号】 酒粕パワーで芯からぽかぽか 薬膳冷え知らず鍋を作ろう!

酒粕パワーで芯からぽかぽか 薬膳冷え知らず鍋を作ろう!

発酵ブームの昨今、塩麹や甘酒とともに注目されている「酒粕」は、寒い季節にピッタリの食材です。今月は、発酵学者の前橋健二先生の研究室で、酒粕を使った「酒粕水炊きぽかぽか薬膳鍋」にチャレンジ!

酒粕鍋イメージ写真


発酵文化のスペシャリストと作る!
「酒粕水炊きぽかぽか薬膳鍋」

前橋先生の研究室入口写真
東京農業大学にある
前橋健二先生の研究室へ!

日本古来の優れた醸造技術が生み出した発酵食品のひとつ「酒粕」には、さまざまな健康効果があるといわれています。「でも、酒粕ってどう使えばいいかよくわからない…」という人のために、「健康レシピ」でおなじみの山根明子先生が、酒粕を使ったレシピを伝授。発酵食を研究している東京農大教授の前橋健二先生の研究室で、「酒粕水炊きぽかぽか薬膳鍋」を作りながら、酒粕の魅力を伺いました。

お話しを伺った先生

右:前橋健二先生 左:山根明子先生

“発酵学者”と呼ばれる前橋健二先生
東京農業大学教授。1994年、東京農業大学農学研究科醸造学専攻修士課程修了。食生活を豊かにする調味料、おいしさや味などをテーマに研究。発酵による食材の変化、発酵調味料、味の解析や味覚のしくみなど、「発酵」と「味」について、多方面から科学的アプローチを続けている。テレビ、雑誌等でも活躍中。
元気通信の健康レシピでおなじみの山根明子先生
調理師・国際薬膳師・フードコーディネーター。薬膳の考え方をベースにしたシンプルで体とココロにおいしいレシピ作りをモットーに雑誌や書籍を中心に活動。『ひとりごはんの薬膳レシピ』(誠文堂新光社)、『ほろよい薬膳 体をほぐして温めるおつまみレシピ』(誠文堂新光社)などの著書がある。

「酒粕水炊きぽかぽか薬膳鍋」の材料(3人分)

昆布水 水1.5L
昆布約10cm
骨付き鶏もも肉のぶつ切り
(水炊き用)
600g
熟成酒粕 60g
10g
生姜 2片
にんにく 1片
水菜 1束
春菊 1束
白ねぎ 2本
豆腐 1丁

お好みで塩、ポン酢しょうゆ、ゆずこしょうなど

酒粕の注目成分「レジスタントプロテイン」とは?

熟成酒粕の写真

「今回使うのは、酒粕を半年以上寝かせた熟成酒粕です。通常の板粕より旨みが多く柔らかくて溶けやすいので、鍋にぴったりです」と明子先生。
前橋先生いわく「酒粕は熟成されていると、旨み成分も増します。酒粕は日本酒の製造過程で生まれる搾り粕ですが、“かす”といっても非常に栄養豊富です。発酵過程でまず蒸した米を麹菌が消化してでんぷんを糖に変え、その糖を酵母菌が食べてアルコールやさまざまな香味成分を発生させます。それを搾った後に残る酒粕には、食物繊維やビタミンB群などの他、大量の酵母や難消化性タンパク質である“レジスタントプロテイン”が含まれています。麹菌の消化に耐えたレジスタントプロテインは腸まで届いて便通を整えたり、血中のコレステロールを下げる効果があるといわれ、近年注目されている成分です」

下ごしらえのひと手間がポイント!

昆布水
鶏肉の下ごしらえ

まず、ボールに水1.5Lを入れ、昆布を20分以上浸して鍋のベースになる「昆布水」を作ります。
次に、鶏肉に塩をまぶして5分ほど置き、水1Lを沸騰させた鍋に投入。再度沸騰したら、ざるにあげます。明子先生いわく、「このひと手間によって、鶏肉の臭みがなく、旨みの際立つ鍋を作ることができます」

酒粕とショウガ、にんにくを鍋に
昆布水と鶏肉を鍋に投入

にんにくは包丁の腹でつぶし、生姜は皮付きのままスライス。土鍋に溶けやすいように小分けした酒粕、生姜、にんにく、昆布水を入れて強めの中火にかけます。沸騰直前に昆布だけ取り出して、茹でた鶏肉を投入します。

研究室で酒粕の旨みたっぷりの土鍋をコトコト

鍋をはさんで取材

土鍋を弱めの中火にし、鶏肉が柔らかくなるまで30分ほど煮ながら、ときどきアクをとります。「農大生だったとき、授業で初めて酒を作ったときにできた酒粕も、鍋に入れて食べましたよ」と懐かしそうに語る前橋先生。麹菌の働きで肉がより柔らかくなって旨みも増すそうです。

鍋のベースになるスープが完成!

こんな感じに白濁してきたら、鍋のベースになるスープの完成!醸造や発酵に関する資料がずらりと並んだ研究室中に、風味豊かな酒粕の香りが…。明子先生いわく、「胃腸を温め疲労回復効果の期待できる鶏肉と一緒に酒粕、生姜、にんにくなどの冷え改善食材をコトコト煮込んだスープには旨味がたっぷり凝縮されていて、一口飲めばお腹の中から温まります」

滋養たっぷりの酒粕スープで身体の芯からぽかぽか!

野菜を投入
鍋完成!

あとは具材を入れるだけ。6等分にした豆腐、5㎝の長さに切った水菜と春菊、斜めうす切りにした白ねぎを土鍋に投入。火が通りやすい野菜ばかりなので、あっという間にできあがり! 「酒粕をはじめ、冬が旬の水菜や春菊、ねぎなどの食材のエキスが溶けこんだスープを余すところなくいただける鍋は、薬膳料理としてもおすすめの調理法です」と明子先生。

鍋を試食!

完成した「酒粕水炊きぽかぽか薬膳鍋」を元気通信スタッフと早速試食。「スープを飲み干すと、身体の芯からあったまる~」「手足の先までぽかぽかになって幸せ!」と口々に語るスタッフ。酒粕には酒の成分も染み込んでいるので、アルコールによる血行促進効果があるほか、核酸の一種であるアデニンによる血管拡張作用があるという説も。また、日本酒に含まれている旨味成分α-エチル-D-グルコシドには、肌の角質の新陳代謝を促し、潤いを守る働きがありますが、これが酒粕にも含まれているのだとか。

先生試食&スタッフたち

「スープにコクがあるから、何もかけなくても美味しい!」「塩をちょっと入れるだけでもイケるけど、途中でポン酢を入れても味の変化があって飽きないね」と、みんなお好みで思い思いに鍋をエンジョイ。
「じわ~っと複雑な旨みがあって美味しいですね」と前橋先生も鍋を堪能。「“生きている調味料”である酒粕には、食材の旨みを引き出す力があり、単に甘いとか辛いというだけでない、旨みの引き出しがたくさんあります。旨いと感じるのは、身体によい成分が豊富に含まれているからです。もちろん、加熱しても酒粕のほとんどの健康機能は損なわれません」。
食べものは発酵するほど健康機能が増すと言われていますが、発酵が進んだ酒粕には未解明な成分も多く、未知数の健康機能があるようです。

日本酒とも相性抜群

日本酒の副産物である酒粕の入った料理は、やはり日本酒との相性も抜群です。


コラム酒粕水炊き鍋にぴったり!
酒粕を使ったおつまみはいかが?

おつまみ1酒粕とドライフルーツのパテ

酒粕とチーズは、発酵食品同士で相性も抜群。酒粕に薬膳で肺を潤す食材といわれるチーズと、腎の働きを高めてくれるとされるくるみ、干しぶどうを入れて混ぜるだけの簡単パテは、鍋を煮ている間に作れる手軽さです。

酒粕とドライフルーツのパテ完成写真

材料)作りやすい分量
熟成酒粕 50g
クリームチーズ 50g
蜂蜜 大さじ1
くるみ 20g
レーズン 20g
粗挽き黒こしょう 少々
クラッカー 適量
作り方)
  1. 熟成酒粕とクリームチーズ、蜂蜜をボールの中でよく混ぜ合わせる。
  2. くるみをフライパンで乾煎りし、包丁で粗く刻む。
  3. (1)(2)とレーズンをよく混ぜ、適量をクラッカーに載せて粗挽き黒こしょうをふればできあがり。

おつまみ2「えびの酒粕ハーブ焼き」

冬に弱りやすい腎の働きを高め、足腰の冷え改善、疲労回復によいとされるえびに、酒粕とハーブを組み合わせるだけで簡単に複雑な味の深みが生まれます。

えびの酒粕ハーブ焼きの完成写真

材料)2人分
えび(ブラックタイガー) 8尾
熟成酒粕 大さじ1
25cc
ドライハーブ
(オレガノ、タイム、バジル
などお好みのものを混ぜて)
小さじ1程度
オリーブオイル 大さじ1
にんにく(スライス) 1片
片栗粉 大さじ1
少々
粗挽き黒こしょう 少々
えびの下ごしらえ 片栗粉大さじ1
水大さじ3
作り方)
  1. えびの殻と尾、背わたを取ってボウルに入れる。下ごしらえ用の片栗粉と水を注いで軽くもんだら、流水で汚れを洗い流す。水気を軽くふきとったら、片栗粉をまんべんなくふる。
  2. ボールに熟成酒粕と湯、ドライハーブを加えて混ぜる。
  3. フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れ、弱火で香りが出るまで温めたら、(1)を加え、中火強にしてえびの色が変わるまで炒める。
  4. (3)に(2)を加えて全体に絡めながら中火で軽く表面に焼き色がつくまで炒め、塩、こしょうをして器に盛りつければ完成。


まとめ

酒粕は定番の漬けものや甘酒以外にも、鍋やみそ汁、惣菜、おつまみなどに多彩に使えるヘルシーな調味料です。「酒粕水炊きぽかぽか薬膳鍋」は寒い季節にぴったりなので、ぜひ年末の鍋シーズンにご家庭でチャレンジしてみてください。

  • ※酒粕はアルコール分を含んでいるので、運転前の摂取等にはご注意ください。
  • ※飲酒は20歳になってから。


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