HOME > 特集記事 > 【2015年6月号】 スウェーデン式予防法に学ぶ 虫歯&歯周病ゼロをめざす7つの習慣

虫歯&歯周病を防ぐ秘策とは?スウェーデン式デンタルケア最前線

6月4日〜10日は「歯と口の健康週間」です。そこで今月の元気通信は、虫歯予防ケアの先進国である北欧スウェーデン式の虫歯予防法の第一人者のドクターに、家族みんなで一生虫歯にならない虫歯ゼロ&歯周病ゼロにする秘策を伺います!


日本歯学センター院長 田北 行宏 先生

1964年大分県生まれ。日本大学松戸歯学部卒。アメリカ、スウェーデンに留学し、インプラントをはじめ、最先端の口腔・歯科医療を学ぶ。適正な歯科ケアによって、歯科治療ゼロの社会をつくることをミッションとしている。



あなたの虫歯&歯周病リスクをセルフチェック診断!

普段の食習慣や歯磨き習慣から、あなたがどのくらい虫歯や歯周病になりやすいかがわかります。
次の項目の中で、あなたに当てはまるものは幾つありますか?


Check

  • check 甘い飲みものが好き。
  • check おやつを1日に2回以上食べる。
  • check 歯磨きは1日に1回だけ。
  • check 歯ブラシを3か月以上交換していない。
  • check 歯科検診には半年以上行っていない。

診断

  • check が3つ以上の人 ……  × 虫歯&歯周病リスク赤信号!
  • check が1〜2つの人 ……  △ 虫歯&歯周病リスク黄信号!
  • check がゼロの人 ……  ○ 虫歯&歯周病リスク青信号

赤信号、黄信号だった人はもちろん、青信号だった人も、年齢が上がるにつれて虫歯&歯周病リスクも上がるので、油断は禁物。まずは虫歯&歯周病の原因を知って、正しいケア方法を身に付けましょう。


虫歯と歯周病の違いとは?

虫歯も歯周病も口中の細菌によって起こりますが、原因菌が違います。簡単にいうと、虫歯は歯の組織に虫歯菌が感染して歯が溶かされ、歯周病は歯と歯肉の境目の溝に歯周病菌が感染して歯を支える歯槽骨(しそうこつ)が溶かされる炎症です。虫歯は初期段階から痛みを感じ、神経にまで及ぶと激痛を感じますが、歯周病はかなり進行して腫れがひどくならないと痛みを自覚しにくいという違いがあります。


虫歯は感染症! 菌の増殖を抑える決め手は?

虫歯は母から子にうつる?!

母子のイメージ画像

生まれたばかりの赤ちゃんの口中は、虫歯菌ゼロです。しかし、7割は母親から、3割は祖父母などからスプーンや食物を共有したりすることで唾液により感染します。親も子も虫歯が多いのは遺伝と誤解されがちですが、虫歯は虫歯菌が媒介してうつる感染症なのです。乳歯が虫歯になれば、永久歯にも虫歯菌は受け継がれるので、歯が生え始める8カ月目頃から、虫歯菌に感染しないように親が留意することが大切です。


虫歯ができる4つの条件とは?

甘いお菓子イメージ

虫歯ができる必須条件は次の4つです。

  1. 歯がある
  2. 口中に虫歯菌がいる
  3. 虫歯菌の栄養源(糖類)がある
  4. 虫歯菌が増える時間がある

虫歯菌の栄養源となる糖類は、甘いお菓子だけでなく、惣菜の調味料や、米、パンなどの炭水化物にも含まれます。虫歯菌が増えると、そのかたまりである歯垢に酸が発生し、酸が歯を溶かして虫歯ができてしまいます。


虫歯のできやすい場所TOP3

虫歯になりやすい場所は、次の3カ所。いずれも歯ブラシだけでは磨くのが難しい場所です。

虫歯のできやすい場所TOP3
  1. 歯と歯の間
    歯と歯の細い隙間に歯ブラシの毛先が入りにくく、歯垢を取りにくい場所です。
  2. 奥歯の溝(咬合部:こうごうぶ)
    形状が複雑で歯ブラシが届きにくく、隅々まで磨きにくい場所です。
  3. 歯の根元(歯頚部:しけいぶ)
    歯質が柔らかな根元は、歯垢が残って虫歯が進行しやすい場所です。

命に関わる危険も?! 放っておくとコワい歯周病!

40歳以上の日本人の約7割は歯周病!

虫歯とともに気を付けたいのが歯周病です。歯と歯茎の境目に歯周病菌が集まると、歯茎が炎症を起こし、放っておくと歯を支える骨まで溶けて歯が抜けてしまいます。「朝起きると口の中がネバネバ」「歯を磨いただけで血が出る」「口臭が強い」「歯茎が熟したトマトのように赤い」「歯がグラグラ」——こんな人は、歯周病の可能性大です。


歯周病はさまざまな病気の原因に!

日頃、歯磨きを怠っていると、歯周病菌は約3カ月毎に口中で倍増します。そして、歯周病菌と闘ってできた血ウミが歯肉から染み出てきます。歯周病になってしまうと、常にその血ウミを唾液と一緒に飲み込んでいる状態になる…と考えるとゾッとしますよね。口の中が菌だらけで不潔だと、口内炎ができやすくなり、風邪も治りにくくなります。歯周病菌が血管に入り込むと、動脈硬化や狭心症、心筋梗塞などのリスクが高まるほか、糖尿病を悪化させる原因にもなります。また、妊娠中に歯周病になると、早産や流産、低出生体重児などの要因にもなります。


喫煙者は歯周病リスク大!

喫煙すると、歯肉の炎症を体が治そうとするのをヤニが妨げるうえ、煙の一酸化炭素が歯肉の血行を妨げて歯を支える骨が栄養不良になるので、歯周病になりやすくなります。また、歯並びが悪く汚れが残りやすい人や、唾液が減ってドライマウスになりやすい高齢者も、歯周病リスクが高いといえます。


スウェーデン式予防法に学ぶ〜虫歯&歯周病ゼロをめざす7つの習慣〜

「虫歯大国ニッポン」VS「虫歯ゼロ大国スウェーデン」

虫歯ゼロ大国スウェーデン イメージ

かつてスウェーデンは、虫歯大国といわれる日本より子どもの虫歯の多い国でした。しかし、約30年前に国を挙げて国民の虫歯根絶に取り組んでからは、子どもの虫歯は日本の約10分の1以下に減りました。虫歯ゼロ大国スウェーデン式の歯科予防法をぜひ取り入れましょう。


1 歯ブラシだけではNG!
こんな歯のお掃除グッズをプラスしよう

家の掃除をするとき、狭い場所や手の届きにくい場所をきれいにするのにいろいろな掃除用具を使いますよね。歯磨きも、歯ブラシだけでは6割ほどしか磨けないので、虫歯になりやすい場所に合わせて、次の3つの歯のお掃除グッズをプラスしましょう。

歯磨き道具いろいろイメージ
  • 歯と歯の間の歯垢は「デンタルフロス(糸ようじ)」で除去しましょう。糸だけのものより、持ち手がついたタイプのほうが使いやすいのでおすすめです。
  • 歯と歯肉のすき間は「歯間ブラシ」でブラッシング。極細から極太まで各種サイズがあるので、歯のすき間に合わせて最適なものを選びましょう。
スポットブラシと歯ブラシ
  • 歯ブラシが届きにくい奥歯の溝や歯間は、ブラシ部分が小さく、毛先も細い「スポットブラシ」で磨きましょう。
  • 歯ブラシは毛先が開いてへたってくると、ブラッシング効果が落ちるので、3カ月に1度は必ず交換しましょう。

2 食後や寝る前にはブラッシング&マッサージ

歯磨きは最低1日に2回以上しないと、虫歯菌や歯周病菌が残りやすくなります。口腔内の酸化が進む食後10〜15分以内に歯磨きをすることで、虫歯の進行を食い止められます。就寝中は唾液の分泌が減って虫歯になりやすいので、歯磨きせずに寝てしまうのは禁物です。歯だけでなく、歯茎をマッサージするようにブラッシングすることで血行がよくなり、歯周病も予防できます。


3 「フッ素」のチカラで歯をガード!

フッ素は歯の表面に付くことで、まるでよろいをまとうように、歯を丈夫にしてくれる効果があるので、歯磨き剤はフッ素入りのものがおすすめです。スウェーデンではフッ素を子どものときから使うことで、虫歯予防に役立てています。


4 食後の「キシリトール」で歯垢&酸をブロック!

スウェーデンのお隣フィンランドでは、歯磨きやフッ素のほかにキシリトールを食後に摂ることを推奨することで、国民の虫歯を激減させました。天然由来の甘味料キシリトールには、虫歯の原因となる歯垢や酸をつくらないように働きかける力があるのです。甘いおやつの代わりに一部キシリトール入りのガムやタブレット(キシリトール濃度の高いものが理想)を摂ることをおすすめします。


5 0歳のときからデンタルケア

子どもの歯磨きイメージ

スウェーデンでは、まだ歯が生えていない赤ちゃんのときから、授乳後に歯ブラシを口の中に入れて、自然に歯ブラシに慣れさせます。そうすると、乳歯が生えてから急に歯ブラシを入れられることにストレスを感じなくなり、食後に歯磨きをすることに抵抗を覚えなくなります。


6 高齢者は根面虫歯にご用心!

25年以上前には、80歳以上の日本人は1人平均4本しか歯が残っていませんでしたが、80歳で20本以上歯を残そうという厚生労働省と日本歯科医師会の提唱する「8020運動」の推進により、現在では20本以上残っている人が4割以上います。しかし、ちゃんと噛める健康な歯が残っている人は多くはいません。加齢に伴い特に注意したいのが、歯茎が下がることにより、根元にできる虫歯(根面虫歯)です。根面虫歯を防ぐには、歯間ブラシで入念に磨くようにしましょう。


7 定期的な歯科検診のススメ

歯科検診のイメージ

歯の状態は人によって千差万別なので、歯の健康のためには、プロの個別ケアとメンテナンスが必要です。定期的に歯科検診を受けていれば、磨いているつもりでも磨き足りない個所や、逆に強く磨き過ぎて傷ついている箇所、隠れた虫歯など、自分では気づけない問題を適切に改善できます。歯科医院で、3カ月に1度は定期健診を受ける習慣をつけましょう。



まとめ

どんなに健康なものを食べたり飲んだりしていても、それを取り込む入口である口の中が虫歯菌や歯周病菌でいっぱいでは、本末転倒です。虫歯&歯周病を防ぐことは、全身の病を未病で防ぐことにもつながるのです。



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