HOME > 特集記事 > 【2014年6月号】 蒸し暑くてだるだる、長雨でうつうつ 梅雨どきの不調は「気象病」のせいかも?!

蒸し暑くてだるだる、長雨でうつうつ 梅雨どきの不調は「気象病」のせいかも?!

「今日はどんより曇り空で、なんか元気出ないなあ……」
朝、窓の外に雨雲が重たくかかっていたりすると、そんな気分になることがありますよね。
実はそれは気のせいではなく、ちゃんと因果関係があるのです。特にじめじめ蒸し暑い梅雨どきは、冷えや偏頭痛、自律神経失調症、うつなど心身の不調が起きやすい季節です。そこで今月の元気通信では、天気予報の達人が、天気と健康の関係や、梅雨どきに多い5つのリスクに負けないコツを伝授します!


天気と健康のワケアリ関係とは?

NHKの天気予報の顔としても親しまれ、天気と健康の問題に長年取り組んでいる村山貢司さんに、天気と健康の意外な関係について教えていただきました。


お話を伺った先生 村山貢司 先生

一般財団法人気象業務支援センター 専任主任技師 気象予報士。花粉学会評議員、環境省熱中症委員会委員を務める。東京教育大学農学部卒業。1972年、財団法人日本気象協会入社、1980年代よりNHKニュース7などNHKニュース番組のキャスターを歴任。1996年に気象予報士資格を取得。2000年〜2007年に「NHKニュースおはよう日本」「NHK週刊ニュース」の気象キャスターを担当。気象、生気象、地球環境が専門分野で、特に花粉症や熱中症の専門家として活躍。『体調管理は天気予報で!!』(東京堂出版)など著書多数。

毎日、気象によるストレスを受けている?!

「今日はジメジメ蒸し暑い天気だなあ」「昨日は暑かったのに、今日はやけに肌寒いなあ」――そんな風に感じることも、実はストレスになります。天気は毎日変わるので、私たちは知らないうちに天気からストレスを受けているわけです。こうしたストレスを緩和する方法を「健康気象学」といいます。
梅雨どきは天気が崩れやすく、不快に感じる日が多くなるので、ストレスがたまって心身に不調が出る可能性が高くなります。


8割の人は天候に体調が左右されている!

健康な男女1500名、高血圧やリウマチなどの持病を持った男女1500名の計3000名を対象に、「天気の変化はあなたの体調に影響を与えますか?」というアンケートをとった結果、持病のある人の87%、健康な人の83%が「影響がある」と回答しました(2005年に調査)。四季がある日本は、世界の中でも気象の変化の激しい国なので、それが体調に影響を及ぼしていると感じている人が、持病のあるなしにかかわらず5人中4人もいるのです。


天気予報の気温と体感温度は違う?

「今日の東京の最高気温は25℃でした」と報じられても、「えっ?今日は汗ダラダラでもっと暑かったと思うけどなあ」という経験ありませんか? 一般に、天気予報で伝えられる気温は、直射日光が当たらない広い芝生上で風速5mの風を当てて測定した温度です。なので、25℃と報じられても、同じ日に日向のアスファルトの上を歩いたときには+5℃ほど高い30℃位になっています。
実際の観測温度とは別に身体で感じる温度を「体感温度」といい、蒸し暑い梅雨どきは体感温度が高くなり、不快指数も増します。


地球温暖化や都市化で気象が不安定に!

地球温暖化や都市化の影響で、100年の間に日本の気温は1℃、東京は3℃も気温が上昇しています。21世紀末には、日本の平均気温は今よりさらに3〜4℃上がり、雨量も10%前後増えると予想されています。…というと、気温が上昇し続けているように思われがちですが、2014年はエルニーニョ現象の影響で冷夏になると予想されており、気候が変化している時期は、極端に暑くなったり寒くなったりして、気温がとても不安定です。激しい気温の変化は、体に大きな負担をかけるので、健康な人でも体調を崩しやすくなります。


コラム)「気象病」は東洋医学にも関係あり!

気象の変化が体に直接影響したり、持病が悪化したりすることを「気象病」と呼びます。気象や環境と病気の関係を研究する学問を「生気象学」といい、19世紀のドイツの生気象学者が気象と病気の関係を科学的に分類しました。さかのぼると、はるか古代ギリシア時代から、気象の変化は病の原因になると信じられており、東洋医学でも1000年以上昔から気温や湿度の変化と体調の関係が重視されています。


梅雨どきに多い5つのリスクに負けない対策!


リスク1 蒸し暑さと梅雨寒の寒暖差に体がついていけない!

蒸し暑さと梅雨寒の寒暖差に体がついていけない!

1年のうち、春に次いで気温差が激しく体調を崩しやすいのが梅雨どきと秋の長雨のときです。梅雨どきは、梅雨前線の北側に入ると気温が下がって「梅雨寒」になり、梅雨前線の南側に入ると一気に蒸し暑くなります。人間は気温の変化に1週間ほどで順応します。たとえば梅雨寒が続くと、体がそれに慣れてきますが、突然暑くなるとそれに体がついていけず、体調を崩す原因になります。特に、梅雨寒の日は、リウマチや関節痛、ぜんそくの発作が増えるので要注意です。

対策→ 「気温変化5℃=洋服1枚」の備えあれば憂いなし

気温が5℃下がれば、衣服が1枚余分に必要です。でも、前日との気温差が10℃近くあるという予報が出ていても、いきなり2枚も余分に服を着る人はまずいません。1枚足りなければ、当然体が冷えることになり、体調不良につながります。
急な気温の変化から体を守るためには、サッと羽織れる薄手のジャンパーやカーディガン、女性ならストールなど、簡単に脱ぎ着できるアイテムを常に携帯しましょう。何か羽織ることで、「これで寒くないはず」と心理的にも冷えへの不快感を軽減できます。

リスク2 どんよりじめっと暗い日が続くとうつ傾向に!

どんよりじめっと暗い日が続くとうつ傾向に!

通常、眠っている間は副交感神経が優位で、朝明るくなって目覚めると交感神経が優位になるのですが、梅雨どきは朝も厚い雨雲がかかって暗い日が多く、切り替えがうまくいかなくなります。曇りの日は、晴れの日より昼間に気温が上がらないことも多く、交感神経と副交感神経のバランスが悪くなって、自律神経失調症になりやすくなります。
さらに、日照時間の少ないどんより暗い日が続き、じめっとした湿気によるストレスも多い梅雨どきは、健康な人でも気分が落ち込み、うつ病が最も増える時期です。

対策→ 雨曇り日でも室内をピカッと明るく!

自律神経失調症やうつを防ぐ方法として、まず朝起きたらカーテンを全開にして室内に光をとり込み、それでも曇っていて暗かったら部屋の電気も点けて、「朝だよ!」と体に認識させましょう。
うつ病の治療でも、明るい部屋で気分転換させる方法が用いられていますが、暗い日が続く梅雨どきは、できるだけ室内を明るくするのがポイントです。

リスク3 汗が乾きにくい梅雨どきは熱中症の危険度大!

汗が乾きにくい梅雨どきは熱中症の危険度大!

人間の深部の体温は37℃位ですが、皮膚の温度は33℃ほどです。人間は病気と闘う際、免疫細胞が活発に働く38℃位に体温が上がりますが、病でもないのに体温が上がるのは体にとって障害となります。これがいわゆる熱中症です。梅雨どきは、体温を下げるために汗をかいても乾きにくく、熱が逃げにくくなってしまい、熱中症のリスクが高まります。
汗をかくための水分は血液によって運ばれますが、抹消の血流が増加すると、脳の酸素が減って偏頭痛の原因になります。また、蒸し暑いと皮膚の表面にどんどん血液を送り込むために、心臓にも負担がかかります。

対策→ 冷却ポイントは首回り。汗をぬぐって、熱を飛ばす!

命にかかわる危険を伴うこともある熱中症を防ぐには、エアコンで温度や湿度を下げるのが1番です。エアコンによる冷房病を嫌う方は、扇風機やウチワで皮膚の周りの熱気を風で飛ばすだけでも効果があります。特に頸動脈のある首を集中的に冷やすのが効果的です。首回りにベタベタ張りつく汗を、蒸発しやすいアルコール成分の入ったウェットティッシュや、水で濡らしたハンカチなどでこまめにふき取るだけでも体温を下げる効果があります。梅雨どきの外出時には、扇子やウェットティッシュを携帯するようにしましょう。

リスク4 梅雨どきに大繁殖するカビ・ダニ・食中毒菌

梅雨どきに大繁殖するカビ・ダニ・食中毒菌

梅雨どきの高温多湿な環境は、カビ・ダニ・食中毒菌が繁殖するのにもってこいです。暖房も冷房も要らない快適な季節を経て、エアコンを再稼働することが多い梅雨どきには、エアコン内に繁殖したカビや雑菌が肺炎などを引き起こすことがあります。また、この時期はダニの死骸やフンなどのハウスダストによるアレルギーのひとつであるアトピー性皮膚炎も増えます。さらに、食べ物がいたみやすく、食中毒が発生するリスクも高まります。

対策→ エアコンからカーペット、冷蔵庫まで大掃除を!

しばらく使っていなかったエアコンを稼働させるときは、内部で繁殖していたカビや雑菌が一気に噴き出してきます。それを吸い込むのを避けるには、エアコン内を清掃し、さらに窓を開けて換気をよくしてエアコンを数時間点け放しにし、できるだけカビや雑菌を排出させてから使いましょう。
ダニの駆除には、梅雨前の晴れた日に畳やカーペットの掃除や日干しをしたり、フローリングの板の隙間や部屋の隅の清掃を徹底しましょう。ちなみに畳にカーペットを敷くとダニが繁殖する原因になるのでやめましょう。
またこの時期に多い食中毒の予防には、冷蔵庫内の清掃を行い、冷却不足をもたらす食材の詰めこみ過ぎをやめ、包丁・まな板の入念な熱湯消毒、生ものの加熱を徹底することでかなり防げます。

リスク5 快晴1時間=曇天2時間、紫外線量は変わらない!

快晴1時間=曇天2時間、紫外線量は変わらない!

梅雨どきは曇っているからと、紫外線対策を怠る人がいますが、晴れた日に1時間外にいるのと、曇った日に2時間外にいるのでは、浴びる紫外線量は同じです。また、梅雨の晴れ間や、カラ梅雨の際には、真夏並みの紫外線を浴びることになり、将来、シミが増えたり、白内障になるリスクも高まります。

対策→ 曇りの日もUV加工のサングラスをお忘れなく!

皮膚への紫外線ダメージを防ぐには、雨曇りの日でも、UVクリームを忘れずに塗ることが大切ですし、梅雨の晴れ間には帽子や日傘、サングラスなどのUV対策もお忘れなく。ただし、色の濃いサングラスをかけると瞳孔が開き、サングラスの隙間から入ってくる紫外線ダメージを受けやすくなるので、白内障リスクを減らすには、UV加工がしてある比較的薄い色のサングラスを着用するのがおすすめです。

まとめ

梅雨どきに注意すべき天気予報のポイントは、「梅雨前線が自分の住む地域を通過するとき」と「最高気温と最低気温の差が前日よりも大きいとき」の2つです。防寒用の洋服や、汗拭きグッズ、扇子、UVアイテムを常に携帯するようにしましょう!



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