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ついに世界無形文化遺産に登録!和食が健康に効く「6つの法則」

2013年12月、ついに「和食」がユネスコの世界無形文化遺産に登録されました!そこで今月の元気通信では、世界一の長寿食として医学的にも注目され、世界的にもヘルシーフードとして人気が高まっている和食文化にフォーカス!長寿食研究の第一人者・永山久夫先生に、なぜ和食がヘルシーなのか、その理由を伺いました。




「おいしい!美しい!ヘルシー!」ユネスコもミシュランも認めた和食のチカラ

世界的な和食ブームといわれる昨今、2013年の海外消費者調査では、中国、香港、台湾、韓国、フランス、イタリアの6ケ国で「好きな外国料理」のトップに和食が選ばれました(ジェトロ調べ)。また、『ミシュラン・ガイド』日本版に選ばれた三ツ星店も、その8割以上が和食店で、いまや本国フランスをしのぐ軒数を誇っています。
そして今年、世界無形文化遺産の食文化としては「フランスの美食術」や「メキシコの伝統料理」「地中海の食事」「トルコの伝統料理ケシケキ」に次いで世界5番目に登録され、さらなる注目を浴びています。和食がなぜ世界に絶賛されるのか、食文化研究家の永山久夫先生に伺いました。


お話を伺った先生 永山 久夫 先生
食文化史研究家。食文化研究所、綜合長寿食研究所所長。西武文理大学客員教授。1932年福島県生まれ。古代から明治時代までの食事復元研究の第一人者。長寿食や健脳食の研究者でもあり、長寿村の食生活を長年調査。ユニークな語り口で新聞連載やテレビ出演も多い。
著書に『和食の起源』『日本人は何を食べてきたのか』(青春出版社)、『万葉びとの長寿食』(講談社)、『和食のすすめ』(春秋社)、『なぜ和食は世界一なのか』(朝日新書)、『100歳食 レシピ編』(家の光協会)ほか多数。




画・永山久夫



法則その1 旬!

和食の最大の特徴は、季節感です。米、野菜、果物、魚介には「彩り・風味・旨み・栄養価」が、最も充実している季節=旬があり、その時季に食べることを重視します。つまり、和食は四季がある日本だからこそ成立した「食べ頃の文化」なのです。日本人は約1万年前の縄文時代から、この食べ頃を守ってきました。その季節にしか巡り合えない食材を心待ちにし、旬の食材を喜んでいただくことで、その食材の持つチカラを最大限に摂り込んできたのです。

伝統的な和食とは、そうした祖先の「知恵の集大成」なのです。季節の滋味を愛するからこそ、私たちの祖先は里山の山菜やキノコなどを採り尽くしたりせず、次世代に残すように気遣ってきました。和食は自然を大切にするエコロジーな食文化ともいえます。
現代では、冬でも夏の野菜や果物が手に入るため、季節感が曖昧になっています。いつでも食べられることで、日本人が長年培ってきた食べ頃の知恵を失わないようにしたいものですね。

法則その2 生!

食べ頃の食材の栄養価を損なわず、おいしくいただくためには、煮炊きしたり調味料を加えたりせず、素材の持ち味だけで食べるのが一番です。例えば旬の魚なら、スパッと切って生で食べるのが最もおいしい。細胞が壊れると、うまみも逃げてしまうからです。先人はそのことを経験的に知っていたのです。そこから和食に欠かせない「刺身文化」が生まれました。どんなに盛大にごちそうを並べても、刺身抜きではメインディッシュがないことになり、正式な日本料理とは呼びません。

ただし、生の刺身を安全に食べるには、料理するまな板も、盛り付ける器も、菌が繁殖しないように常に清潔にしておく必要があります。日本のように豊富な水でまな板や包丁を清潔に保てる環境や気遣いがあってこそ、和食特有の刺身文化が育まれたといえます。

法則その3 一汁三菜!

旬を集めた和食の基本は「一汁三菜」です。主食は「ご飯」で、一汁は汁物、三菜は、魚系の「主菜」、魚系または野菜系の「副菜」、野菜系または大豆系の「副々菜」という三品のおかずです。
主菜から動物性タンパク質を摂り、汁物、副菜と副々菜から各種ビタミン、ベータカロテン、食物繊維、ポリフェノール、タンパク質など、香の物でビタミンB1や乳酸菌など、老化予防に欠かせない抗酸化物質を摂るわけです。1日1回、夕食にこうした献立をつくれば、一日に必要な栄養をバランスよく摂取できます。



一汁三菜を配膳する際は、例えば初春なら汁物にフキノトウを塩梅よく盛る、あるいは桜花の季節なら桜の花びらをお膳に添えるなど、食べる人がその膳を見ただけで季節の気配を感じられるようなあしらいに。和食のおもてなしの心とは、食べる人に喜んでもらおうという繊細で温かな心遣いなのです。

法則その4 発酵!

和食の味付けで最も大きな働きを担っているのが、味噌、しょう油、酢、みりん、日本酒などを使った発酵食品です。高温多湿な日本の気候風土が、和食のベースとなる多彩な発酵食品を生み出したのです。発酵食品とは、微生物の力で文字通り発酵した食品で、消化能力や免疫力を高めたり、血行や排泄を促進する生きた酵素を豊富に持っています。特に米食民族にとって、炭水化物の消化促進のためにも酵素は不可欠なのです。
人の体内でも、SODという人体に発生しやすい活性酸素を除去する酵素がつくられますが、年齢と共に体内でその生成力が衰え、体内から減っていきます。また、酵素は熱に弱いので、加熱によって壊れてしまいます。その点、和食は加熱しない料理が多く、生きた酵素が豊富に含まれているので、和食を食べれば自然と酵素を補うことができるのです。

法則その5 五味五色!

日本には古来より「五色を食べる」という養生法がありました。色は和食の季節感を表現するものであり、自然を象徴するものです。自然の食材に色があるのは、命を守るためです。例えば鮭の身が紅いのは、川を上る際に過酷な運動と強力な紫外線によって生じる活性酸素から身を守るため、抗酸化成分のアスタキサンチンを持つカニやエビを食べるからです。緑黄色野菜が鮮やかな緑やオレンジ色なのも、ビタミンやベータカロテンという抗酸化成分の色素によるものです。つまり、さまざまな色のパワーを持った魚や野菜を食べることで、人はそのパワーを摂り込み、五色五様の持ち味を堪能できるのです。

例えばおせち料理の定番「五色なます」は、五味五色が揃った代表例です。なますとは刺身の前身で魚介ですが、五色なますの場合は野菜が中心。大根(白)、にんじん(赤)、きゅうり(緑)、しいたけ(黒)、油揚げ(黄)を、酢、しょう油、みりんという発酵調味料で和えたシンプルな料理ですが、栄養バランスがよく、見た目も鮮やか。まさに和食ならではの一品です。

法則その6 うまみ!

甘い、辛い、酸っぱい、苦いといった味に加え、ダシ文化に裏打ちされた「うまみ」との多彩なハーモニーも和食ならではの特長です。フランス料理や中国料理では、味を濃厚にするのに肉などの動物性タンパク質や脂肪を多く用いますが、和食は昆布やかつお節といったダシのうまみを利用するので、カロリーを抑えられ、肥満や心臓病予防にもなります。

ダシに用いる昆布にはグルタミン酸、かつお節にはイノシン酸が含まれていますが、グルタミン酸とイノシン酸は非常に好相性で、これらのうまみを摂取すると心地よさを覚えるため、ヒーリング効果も期待できます。さらに、かつお節にはトリプトファンという必須アミノ酸も含まれており、幸せホルモンといわれる脳の神経伝達物質セロトニンの原料になるため、不眠やうつ気味の人にも有効といわれています。



和食で健康長寿!

日本人女性の平均寿命は世界№1の86.41歳、日本人男性も79.94歳と世界第5位です。2013年には116歳の日本人が、女性最高齢としてギネス世界記録にも認定されました。寿命は、その人が普段何を食べているかによって大きく左右されます。日本人の長寿の秘訣は、まさに日本人が普段食べている和食にあるといえます。世界中で高齢化が進むいま、和食に秘められた長寿効果に世界中から注目が集まっているのは必然的なことです。


画・永山久夫


しかし、これからの時代は単に長生きするだけでなく、「健康寿命」=日常的に介護を必要としない自立した生活ができる期間をいかにのばすかが重要になってきます。日本人女性は長寿世界一ですが、健康寿命は平均寿命より13年も短い73歳、男性も健康寿命は平均寿命より9年短い70歳です。つまり晩年は10年前後も要介護になる人が多いということです。欧米志向に傾きがちな食習慣を、一汁三菜の和食志向に回帰することで、ぜひ健康寿命をのばしましょう。

コラム おせちは「一汁三菜」の超豪華版だった?!

和食の基本である「一汁三菜」の原型は、武家社会の本膳料理であり、江戸時代に庶民に広まりました。実は、お正月に食べるおせち料理の重箱も、「一汁三菜」の豪華バージョンなのです。重箱は上から「一の重」「二の重」「三の重」ときて、最下段は死を連想する四は使わず「与の重」となります。

一番重要なのは、「一の重」に入れる「祝い肴」で、祝い肴は、関東なら「黒豆・数の子・ゴマメ」、関西なら「黒豆・数の子・ゴボウ」になります。いずれも昔は貧しい庶民でも入手できた食材で、この三菜さえあれば、おせちが整いました。祝い肴にはかまぼこ、きんとん、だて巻き、昆布巻き、寄せ物など「口取り」を添えます。さらに「二の重」は尾頭付き鯛の焼き物、「三の重」は五色なますなどの酢の物、「与の重」は煮しめなどの煮物となり、これに主食のお餅と汁物が付きます。



縁起物であるおせちは、例えば真っ黒になるまでまめ(勤勉)に過ごせるようにという願いを込めた黒豆や、子孫繁栄を意味する数の子、恵みの太陽を象徴する赤い鯛など、さまざまな意味が込められています。そうした言い伝えや言霊のチカラによって、「今年も無病息災で頑張ろう!」と、精神的な活力を養えるのも和食の奥深さです。

2014年で82歳になるとは思えないほどお元気な永山久夫先生も、もちろん「一汁三菜」の実践者。長寿食である和食の健康長寿効果を身をもって証明されているといえます。和食が世界無形文化遺産に登録されたのをきっかけに、ぜひ失われつつある古きよき和食文化のチカラを改めて見直していきましょう!



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