HOME > 特集記事 > 【2013年1月号】 笑う門には福来る(^▽^) “笑い”のびっくりパワー
笑うと風邪をひきにくい?笑いは成人病予防に効く?笑えばボケ防止になる?そんな調子のいい話があるかい!——と思わずツッコミを入れたくなるかもしれませんが、これが実際にあるんです。昔から「笑いは百薬の長」とか、「一笑一若(一度笑うと、一つ若返る)」などといわれますが、最新の医学研究では、笑いによる驚くべき健康効果が明らかになっています。
そこで今月は、現役ドクターにして落語家でもある立川らく朝さんに、笑いによる医学的3大効果をはじめ、落語と健康にまつわる耳より話を伺いました。
さらに、鎮痛作用から美肌、ダイエットまで、笑いのびっくり効果の数々や、お正月にたっぷり笑って、がっつり元気になれるおすすめスポットやDVDもご紹介。さあ、2013年は福々しい笑顔パワーで、心身ともに健やかな新春を迎えましょう!
内科医として生活習慣病の治療に取り組みながら、46歳で落語界に入門。落語界唯一の医師にしてプロの噺家として、全国で独自の“健康高座”を展開しているDr.らく朝さんに、落語をはじめとする笑いの効能について伺いました。
1954年、杏林大学医学部卒。慶応大学病院健康相談センター医長を経て、内科クリニック院長に。2000年に立川志らく門下に入門、2004年に立川談志に認められ二つ目昇進。プロの落語家で医師という立場を生かし、健康教育と落語をミックスした「健康落語」「健康一人芝居」などの新ジャンルを開拓。『笑えば治る 立川らく朝の健康ひとり語り』(毎日新聞社)、『一笑健康』(春陽堂書店)など笑いと健康をテーマにした著作や連載も多数。 |
オリジナルの健康落語を始めたのは、ある医療関係者の会合の飲み会での雑談がきっかけでした。そこに居合わせた看護師長が「健康の話って、なんだかつまんないのよねぇ」とぼやくので、私は「落語みたいに楽しくできたらいいですよね」と答えたんです。
昨今は笑いと健康の因果関係を究明しようという研究が増えていますが、私もある医師に頼まれて、私の健康落語を聞く前と後で、観客のストレスが下がるかどうかという実験に協力したことがあります。「らく朝の健康落語を聞いたら、ストレスが増えちまった」なんて結果が出たらことだなと思い、最初は「やだよ」と断ったんですがね(笑)。
医学的な研究データによってわかっている笑いの効能は、大きく分けて3つあります。
『立川らく朝の不労長寿』という拙著の中で、「落語国の住人になろう」という話を書いたことがあるんですが、これは「いい加減のススメ」なんです。古典落語の登場人物というのはたいていいい加減でマイペースで我慢なんてしやしません。人の酒でも平気で飲んじゃうし、若旦那はたいてい道楽息子だしね(笑)。一見ろくでなしばかりのようですが、見方を変えると彼らはネガティブな面を隠さずにさらけ出しているわけです。 落語を聞くというのは、落語家のつくった世界で登場人物とコミュニケーションをとるということです。笑いの基本は、このコミュニケーションにあります。何人かいると必ずその場を和ませようとジョークを言ったりする人がいますよね。それは、「人や場に対する思いやり」の表れです。思いやりのない所には、笑いも生まれません。笑いを投げかけることで、笑いが返ってきます。つまり笑いとは、コミュニケーションの中から生まれてくる気遣いであり、サービス精神なんです。まずは自分から笑いましょう。そうすることで、周りにもきっと笑顔が伝染していきますから。 |
2013年1月28日(月)に立川らく朝さんの健康落語や古典落語が楽しめる「らく朝 築地独演会」が築地本願寺ブディストホール(東京都中央区)で開催されます。ぜひ足をお運びください。 詳細はこちらをご確認ください。 http://rakuchou.jp |
笑いの健康効果については方々で研究が進められています。諸説ありますが、あなたはどのくらいご存知ですか?
笑うと“脳内麻薬”といわれるベータエンドルフィンが分泌され、モルヒネを上回る鎮静・鎮痛効果を発揮します。これは“ランナーズハイ”の一因とも言われています。リウマチ治療研究者の吉野槙一博士の実験によると、リウマチ患者に林家木久蔵(現・林家木久扇)師匠の落語を聞いてもらって痛みの程度を調べた結果、落語の後は全員痛みが楽になり、その効果が3週間持続した人もいたそう。 爆笑するとよくお腹が痛くなりますが、大笑いすると腹筋や横隔膜を激しく上下させるので、かなりの運動量になります。目安としては3分ほど笑うと約10kcalの消費になるとか。また、笑うと呼吸が活発になり、酸素消費量や血流も増えるので、中性脂肪を燃焼しやすくなります。 東洋医学では「万病一元、血液にあり(あらゆる病因は血液にある)」と言われます。大いに笑って筋肉と横隔膜を存分に動かすと、全身の血の巡りがよくなります。また、副交感神経が優位になることで手足が温かくなります。 ストレスがあると、交感神経が緊張して血行が悪くなり、筋肉も緊張し、肩こりの原因になります。笑うと交感神経の緊張が緩み、副交感神経が優位になるので、心身がリラックスしてストレスが解消され、肩こりの緩和につながります。 笑うことで腹筋や横隔膜が動いて内臓のマッサージになり、胃腸の血流がアップ。また、副交感神経が優位になることで胃酸や唾液の分泌も促進されます。ドイツの哲学者カントも「笑いは消化を助ける。胃酸よりもはるかに効く」という名言を残しています。 傷口がふさがるのは、傷ついた所にもしっかりと血液が巡るからです。笑うと血液の抹消循環がよくなるので、傷やケガの治りが早くなります。また、笑うことで免疫力が上がるので、自然治癒力がアップし、傷口の感染予防にも一役。 笑うと目の周りや頬、口角など顔の表情筋が動くので、血行が促進され、肌の新陳代謝もスムーズに。シミや大人ニキビの予防になり、肌の色ツヤもよくなります。また、免疫力が上がるので、アトピー性皮膚炎の治癒力も高まるといわれています。 笑うことで“記憶の中枢”と呼ばれる海馬(新しいことを学習する際に不可欠な大脳の器官)の容量が増えると言われています。また、笑うと脳の血流量がアップするため、脳の働きが活性化されます。笑いを理解するためには多くの脳神経細胞を使うため、ボケ防止になるという説もあります。 岡山県の医師・伊丹仁朗博士の実験によると、がん患者に寄席を見せ、その前後に採血をしたところ、がん細胞を殺すナチュラルキラー細胞が正常値より低めだった人は、観劇後に全て活性化していたそうです。笑いだけでがんは治せませんが、がんに負けない免疫力を養う一助になるといえるでしょう。 “癒しのホルモン”と呼ばれるセロトニンの不足は、うつなど心の病の原因になりますが、笑うことで脳幹からセロトニンが放出され、精神バランスが整います。また、“ハッピーホルモン”の異名を持つベータエンドルフィンが血中に分泌され、多幸感がもたらされます。 |
一年間頑張ってきた疲れもほぐれ、いいイミで脱力モードになる年末年始は、笑いの活力を注入するまたとない時期といえます。お正月は寄席に行ったり、抱腹絶倒のコメディ映画を観て、大いに笑い転げて新年の健康祈願をしましょう!
戦後すぐに開業された老舗「新宿末廣亭」は、東京の定席としては唯一のレトロな木造建築。表の木戸にはその日の出演者の名前がずらり。 |
寄席というと、何やら「敷居が高い」と感じる方もいるようですが、老若男女が集う寄席は、いつ行っても明るい笑いに包まれており、家族でも、デートでも、お1人様でも、初心者でも気軽に楽しめることうけあい!まだ寄席経験のない人ために、「新宿末廣亭」を舞台に寄席の魅力をご紹介します。 |
寄席とは、落語を中心とした多彩な演芸を観客に見せる興行小屋のことで、起源は江戸時代といわれています。「新宿末廣亭」「上野鈴本演芸場」「浅草演芸ホール」「池袋演芸場」の4つが定席として有名ですが、居酒屋、カフェなどで開催される落語会もあり、各地で身近に楽しめます。
寄席に着いたら、まずは「てけつ」と呼ばれる切符売場でチケットを買います。予約の必要がなく、開場したら入場はいつでもOK、何時間いても木戸銭は同じという気軽さ! かしこまったドレスコードもなく、観客はみんな普段着の気楽な格好。でもお正月は晴れ着姿も多く、普段よりぐっと華やかになるそう。 |
切符売場でチケットを買うと、その日の出演者の順番などが書かれた番組表を渡してくれます。 |
古きよき寄席の伝統が息づく造りの新宿末廣亭。席はその場で自由に選べます。 |
上手下手の両側は、畳に座布団の桟敷席。あぐらでも体育座りでも、楽な格好でどうぞ。お子さま連れにもおすすめ。 |
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新宿末廣亭では12月30・31日以外は年中無休。正午から始まる「昼の部」と、夕方から始まる「夜の部」に分かれていますが、昼夜入れ替えなしで好きな時間から見られるので(再入場は不可)、中には朝から晩まで寄席漬けになっている愛好家の姿も。通常は10日毎に上席(かみせき)・中席(なかせき)・下席(しもせき)と演目がチェンジしますが、お正月はオールスターが綺羅星のごとく顔見世する1日3部構成の「特別興行」になるので、一段と華やかに! 家族で初笑いを楽しむのにもってこいです。 ●新宿末廣亭の特別興行は1月1〜20日。 詳細は公式HPをご覧ください http://www.suehirotei.com/ |
バラエティに富んだ寄席は、長時間いても飽きずに楽しめます。 |
寄席では、前座の落語から始まり、合間に漫才や曲芸、手品などの色物が入って、笑い声と拍手に包まれながらテンポよく展開していきます。一説では、落語を聞くと左脳の血流量が増え、色物のときに左脳が休まるのだとか。大笑いするとお腹も空くので、観客は「お中入り」と呼ばれる休憩時などに腹ごしらえ。場内ではお弁当やお菓子、飲み物なども販売しており、持ち込みもOKです(※アルコール飲料は場内ご法度)。やがて大トリになると、「いよっ待ってましたぁ!」のかけ声とともに真打ち登場。場内はどっと沸いて最高潮に盛り上がり、寒い日でもいつの間にか身体がぽかぽか、ストレスもすっきり! |
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