甘柿は渋柿の突然変異種 |
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芭蕉の句に「里古(ふ)りて柿の木持たぬ家もなし」とあるように、古来より日本には柿の木が多く植えられています。生育環境が日本の国土に適しており、食の対象としても、保存食としても重要な役割を果たしてきました。
平安時代にはすでに「さわし柿」が作られ、干し柿にできる甘い白い粉は「柿糖」として甘味料にも利用されてきました。『延喜式(えんぎしき)』には、御料地の果樹園に柿が百株植えられていたという記録もあります。
鎌倉時代に編さんされた『夫木和歌抄(ふぼくわかしょう)』にも、柿を詠んだ歌はごくわずかしかありません。
役馬の 立眠りする 柿の花 柿落ちて うたた短き 日となりぬ
柿の木は日本の西南部に自生しており、日本だけでも1,000 種以上あります。弥生時代以降に栽培種として大陸から伝来したものが多く、鎌倉時代の遺跡から立木が発見された事例もあります。
植物名の由来ですが、黄赤色に熟すことから「かがやき」や「あかつき」と呼ばれていたのが短縮されたなど諸説あります。別名に「朱果(しゅか)」「赤実果(せきじつか)」など。
一方、中国では、唐時代の段成式(だんせいしき)が『酉陽雑俎(ゆうようざっそ)』で柿の七徳を示し、評価された時代もありました。その七徳として、「1. 樹齢が長い 2. 葉陰が多い 3. 小鳥が巣を作らない 4. 虫が付きにくい 5. 紅葉の美しさ 6. 果実が美味 7. 紙の代用として習字ができること」と書かれています。
薬用としては生薬名を「柿蔕(してい)」といい、柿の蔕(へた)の部分を薬としてしゃっくり止めや鎮咳、夜尿症に使います。
花言葉は、「恵み」「優美」「自然美」です。 出典:牧幸男『植物楽趣』 |