利尿や腫れ物に利用 |
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まだ梅雨が明けず、湿気が多い7月は体調を崩しやすい季節です。しかし植物にとっては、雨と湿気は成長の恵み。ギボウシは、梅雨に入ると急速に成長し、重なり合った葉の間から長い花茎を伸ばし始めます。7月になると花茎にたくさんのつぼみを付け、下方から花が咲き始めますが、朝開いて午後にはしおれてしまうという儚い命の一日花です。 ギボウシの名前の由来は、つぼみの姿が橋の欄干にある擬宝珠(ぎぼし)と似ていることや、葱坊主に似ていることから生まれたという説があります。別名に、「ギボシュ」「ギボ」「ギボシ」「ウルイ」「ゲーロッパ」「タキナ」などがあります。「ウルイ」は、アイヌ語で「タチギボウシ」を「ウルキナ」と呼んでいることに由来し、「ゲーロッパ」はカエルがこの葉の下に棲みつくこと、「タキナ」は渓流の飛沫を浴びて育つことに由来します。学名のHosta undulataは、属名がオーストラリアの医師Hostの名に由来します。
ギボウシの花の色は、淡紫、紫、白色などがありますが、いずれも淡い色合いで渋みがあるため、日本人に好まれてきました。江戸時代中期になると観賞用に庭園に植えるようになり、園芸種も多数生まれました。16世紀末~17世紀初め頃に書かれた『饅頭屋本節用集』には、「秋法師」の名で登場しています。大型の「玉簪」はこの頃に中国からもたらされたという記録があります。1712年にこの植物を最初にヨーロッパに紹介したのはケンペルで、1789年にヒッツベルトが実際に持ち込みました。現在、ギボウシは欧米でガーデニングに利用されています。 擬宝珠の 長き花茎の ひとつ立ち 日のゆく道に 傾きはじむ 這入りたる 虻(あぶ)にふくるる 花擬宝珠
薬用としては、開花期に全草を陰干しするか、必要時に全草を採取して利尿に用います。また、生の茎葉や根をつき砕いた汁をそのまま服用すると、悪性の腫れ物に効き目があるとされています。 出典:牧幸男『植物楽趣』 |