今回の「生薬ものしり事典」は、過去にご紹介した生薬百選より「刺五加(シゴカ)」をピックアップしました。
アスリートもご愛用の生薬 |
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生薬のシゴカのもとになるエゾウコギは、ウコギ科の植物です。日本では北海道のみ自生することから「蝦夷ウコギ」と呼ばれていますが、ロシアでは「エレウテロコック」、アメリカでは「シベリア人参(Siberian Ginseng)」と呼ばれています。
生薬としては、根茎が中国の植物名と同じ「刺五加」、根の皮は「五加皮」という名前で用いられています。中国では約2000年前から用いられているといわれています。 ただし、エゾウコギが注目され出したのは20世紀以降です。1960年代に旧ソ連の研究により、世界で初めて抗疲労作用や抗ストレス、集中力増強などの薬効が見出されました。特に注目されたのが、朝鮮人参より優れたアダプトゲン作用です。アダプトゲンとは、生体にとって悪影響を及ぼすさまざまなストレスに対して、環境適応力を高め、生体を守る働き(非特異性抵抗力の増強)のことで、「適応源」や「環境適応源」とも呼ばれます。
さらに、宇宙飛行士が宇宙船内でエゾウコギを飲用していたことでも話題になりました。 エゾウコギの主要成分は、エレウテロサイドE(リグナン)、エレウテロサイドA(サポニン)、エレウテロサイドB(クマリン配糖体)などです。エレウテロサイドEは、脳内ホルモンのひとつであるβ-エンドルフィンの分泌を促進するため、強い抗ストレス作用があるとされています。 これらの作用のほかにも、感冒・インフルエンザ予防、免疫力改善、糖尿病改善などの作用も確認されています。山菜としても用いられるエゾウコギは、今後の研究に期待が持たれる医食同源の代表選手といえるでしょう。 |