HOME > 生薬百選 > 【2010年12月号】生薬百選 81 イチイ
イチイはイチイ科の常緑針葉樹で庭木や生垣によく植えられて親しまれています。初秋には写真のような赤い実をつけます。この実を実際に食べてみると、ほこりっぽいですが、わずかな甘みがあります。中に含まれている種はかみつぶすと苦く、タキシンと呼ばれる毒があります。子供が食べるとき、種も一緒に飲みこんでしまうことが多いので、けいれんを起こすことがあり、注意が必要です。
かつては民間薬として、この葉を乾燥させたもの(一位葉:イチイヨウ)を月経不順や利尿のために飲むことがありましたが、葉にも種と同様のタキシンという毒が含まれているため、今では服用すべきではないとされています。
イチイ |
庭木としてのイチイ |
イチイの実は赤い実ですが、黄色い実をつける仲間があり、キミノオンコと呼ばれます。キミノオンコは北海道の札幌と小樽だけに生えている珍しい植物で、北海道が作成した北海道レッドデータブックに希少種として指定されています。
イチイの仲間は日かげや寒さに強く、樹齢が非常に長いことで知られています。また、赤い実が印象的です。西洋では不死、永遠の象徴とされ、物語にイチイの杖などとして登場することがあります。某魔法学校の小説では重要人物の杖となっています。
イチイの実 |
イチイの葉 |
イチイに微量に含まれる成分のタキソールには抗ガン活性があることが1970年代に発見されました。1人の治療のために、だいたい6本のイチイの木が必要でした。必要なだけのタキソールをとろうとすると、あまりにたくさんのイチイの木を切らなくてはならないので、今ではイチイからとれる他の成分を材料にして、人工的に合成されて病院で薬として使われています。