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生薬百選 75 ネムノキ


そろそろ夏がやってきます。ネムノキが淡い紅色の花を付けるのも、もう少しです。

ネムノキは高さ10m位になるマメ科の木です。昼は葉っぱが開いていますが、昼下がりから夜になると葉をぴったりと合わせて眠ったようになります。それで「眠の木」と呼ばれるようになりました。またネムリノキ、ネビ、ネブという別名もあります。さらに合歓、夜合という呼び名もありますが、これも夜になるとぴったりと葉を合わせることに由来するといわれています。


花を付けたネムノキ
花を付けたネムノキ


ネムノキの皮は東洋医学では不眠に効き目があるといいますが、これは眠るようにみえるネムノキの特徴と関係があるかもしれません。民間療法では鎮痛、強壮を期待して、秋のお彼岸の頃に樹皮を採取したものを日干しにして、煎じて飲みます。

合歓皮(ネムノキの樹皮)
合歓皮(ネムノキの樹皮)

“この木なんの木”のCMで有名な木はモンキーポッドですが、別名をアメリカネムノキと呼び、同じ仲間です。ネムノキは荒れ地に他の木に先駆けて生える、パイオニア的な植物でもあります。窒素ガスを養分に変換する能力を持ち、土地を肥やす木です。ネムノキによって地面の養分が蓄えられると他の樹木が生え、やがて豊かな森になります。

ネムノキがたくさん生えている林は紅くてふわふわした幻想的な花が並んでいて、蒸し暑い夕暮れ時などはエキゾチックな雰囲気を漂わせます。


■芦部 文一朗(養命酒中央研究所・基礎研究グループ)