HOME > 生薬百選 > 【2008年4月号】生薬百選49 玉竹(ギョクチク)


生薬百選49  玉竹(ギョクチク)



玉竹(ギョクチク)はユリ科のアマドコロの根茎を乾燥したもので「イズイ」とも呼ばれ,滋養強壮に効果のある生薬です。アマドコロは日本各地の山地などに自生し,茎や根茎には甘みがあり,山菜として食用にされます。日曜日の朝のある番組の中で,「都会で発見 山菜の科学」というテーマで,アマドコロが幻の山菜として紹介されました。美肌効果があるということで,タレントの方が女子アナのために山野を探しまわり,ようやく自生しているアマドコロをみつけるという内容でした。




ナルコユリ(左) アマドコロ(右)



アマドコロは同じユリ科の植物でナルコユリとよく似ています。アマドコロの花は花茎から2~3個つきますが,ナルコユリの花は5~6個つきます。最も簡単な区別の方法は,アマドコロの茎には2,3本の稜があるのに対して,ナルコユリの茎は丸くなっているために,茎を触ってみることです。地域の薬草観察会などでアマドコロかナルコユリがみつかると,必ずといってもいいくらい,講師の方から両者の見分け方が紹介されます。その話に従って実際に茎を触って見ると,その明らかな違いが体感でき,「ほほう」とか「なるほど」という声が聞かれます。


玉竹(左2つ) 黄精(右2つ,黒いのは蒸し加工品)



ナルコユリの根茎を乾燥したものは黄精で,玉竹と同じく滋養強壮に効果があるとされています。黄精は日本の薬の公定書である日本薬局方に収載され,多くの滋養強壮ドリンク剤に用いられています。原植物は形態で区別できますが,刻み生薬となった場合には,両者の区別は難しくなります。書籍「和漢薬の選品と薬効 木村雄四郎 著」の中で,市場において両者は昔から混乱していると記されており,性状の違いが詳しくまとめられています。
作用の面から両者を比較した論文があります。糖尿病になったネズミに与えると,両者ともに血糖低下作用がみられていますが,玉竹の場合はインシュリンの感受性を上げることによって血糖値が下がったと考察されています。このことは,インシュリンの感受性低下が原因でおこるⅡ型糖尿病に有効である可能性を秘めているといえます。ただし動物実験の結果だけでの判断は禁物で,今後の研究成果を待たなければなりません。




■ 泊 信義(養命酒中央研究所・主任開発員)
鹿児島県出身。薬草園管理の責務を果たしながら、生薬のDNA鑑別、栽培試験を行なってきましたが、最近では生薬、和漢天然素材を応用した商品開発に関わるようになってきています。