HOME > 生薬百選 > 【2008年2月号】生薬百選 47 蒼朮(ソウジュツ)
生薬中の薬効成分が視覚的に確認できる例として蒼朮を紹介します。
蒼い(青い)朮と書きますが、昔は赤朮ともいわれていた程で、写真のように青とは程遠い色をしています。原植物はキク科の「ホソバオケラ」で、特徴は鋭く長いトゲのある葉(苞葉:ホウヨウ)に囲まれた花が咲きます。江戸時代に佐渡で栽培されたことがあり、日本では「サドオケラ」という別名もあるそうですが、『佐渡おけさ』とは関係ないそうです。 |
秋から冬にかけてこの根(根茎)を掘り出し、それを乾燥させたものが蒼朮です。 |
医療の現場では、ガンの切除後や制癌剤によるガン治療時に免疫増強を目的として、十全大補湯という漢方処方が使用されます。この処方中に蒼朮または白朮が使われており、その免疫増強効果に大きく関わっているという報告があります。 |
このカビのような部分を、顕微鏡で見ると写真のようにいくつもの透明な結晶が伸びているのを見ることができます。表面に析出する結晶は、β-オイデスモールとヒネソールという成分の混合物で、蒼朮の主要成分です。これらには潰瘍を防止する作用、肝障害を抑制する作用、腸管の運動を促進させる作用などが報告されています。
■ 泊 信義(養命酒中央研究所・主任開発員)
鹿児島県出身。薬草園管理の責務を果たしながら、生薬のDNA鑑別、栽培試験を行なってきましたが、最近では生薬、和漢天然素材を応用した商品開発に関わるようになってきています。