HOME > 生薬百選 > 【2007年3月号】生薬百選36 当帰(トウキ)


生薬百選36 当帰(トウキ)


当帰は「婦人病の聖薬」と呼ばれ、漢方では多くの処方に使われています。
性能的には補血薬の要薬ですが,活血作用も持ち合わせていることから、いわゆる「血の道症」の万能薬です。日本では、古くから奈良県の大深地方で栽培されていたオオブカトウキを生薬名「大和当帰」と呼び、北で栽培されたものを「北海当帰」と呼んでいます。 セリ科の特有の香りがあるので煎じていればすぐに当帰と分かります。



トウキ(研究所見本園にて撮影)


当帰が入った代表的な処方に四物湯があり、私はこの四物湯の薬理学的な研究を行い、貧血改善作用、末梢の微小循環の改善作用、記憶障害の改善作用等を有することを見いだしてきました。
当帰にも同じような作用が認められ、また、別に筋弛緩作用、血圧降下作用、末梢血管の拡張作用、血液凝固抑制作用等も報告されています。



当帰(生薬)


さて、中国の民話では、妻の婦人病を機に家に寄りつかなくなった夫に、妻はこの薬草を飲んで病を癒し、「恋しい人よ、当(まさ)に我が家に帰るべし」と言ったのが、当帰の名前の由来とされています。
私の好きな生薬の一つです。




■ 小島 暁(養命酒中央研究所・所長)
漢方と薬理学が専門。家庭でできる薬膳にもトライしています。