HOME > 生薬百選 > 【2006年7月号】生薬百選28 ヒカゲノカズラ


生薬百選28  「ヒカゲノカズラ」


6〜7月といえば梅雨ですね。ジメジメして嫌な感じがしますが、比較的日当たりの良い山の中や林道沿いの土手などが鮮やかな黄緑色の絨毯のように見えることがあります。

今回は、このような植物の1つで、多くの方々の目に映ったことはあっても、恐らく殆どの方がその名を知らないうちに忘れていく哀れな植物を紹介します。



ヒカゲノカズラ


今回の薬草、その名も「ヒカゲノカズラ」と言います。
なんと梅雨向きの暗い名前でしょうか!更に陰気なことに、この植物はシダ植物!!まさに梅雨にぴったりです。

写真は研究所内で撮影したもので、分岐しながら地を這っている緑色のモコモコしたものが茎葉で、長い紡錘形で上に伸びた白っぽいものが胞子嚢穂です。
しかし、生薬名は「伸筋草(シンキンソウ)」と言う梅雨に似合わない健全(?)な名前です。その名のとおり、筋肉の凝りをとって軟らかくする、関節痛や捻挫等の薬とされて成分として、アルカロイド類やテルペン類が知られています。また、「ヤマノカミサマノフンドシ」という神々しい方言もあるそうです。



生薬:伸筋草


使用法ですが、中国では全草を乾燥したものを湯煎あるいは酒に漬けて服用するか、患部に外用します。日本では、金魚などの産卵用の藻場として使われてきたそうで、食用とするところもあるそうです。ちなみに私は、子供の頃他人の背中に「毛虫」と言って入れるという素晴らしい使い方をしていたことを記憶しています。




■ 泊 信義(養命酒中央研究所・主任研究員)
梅雨も嫌いじゃありませんが、部屋が黴びるのは怖いです。