HOME > 生薬百選 > 【2006年6月号】生薬百選27 タラ


生薬百選27  「タラ」


信州の長い冬がようやく終り花と緑の季節がやってきました。 4月下旬から5月上旬の信州は春の花が一斉に咲きます。梅や桜もほぼ同時に咲くので見栄えは良いのですがあっという間に終り、少しもったいない気がします。 花の後は芽吹きの時期となり山菜の旬となります。

今回は山菜と関連の深い樹木「タラノキ」についてお話したいと思います。



タラノキはトゲの多い樹木で、日当たりの良い山林周辺部で普通に見られます。ウコギ科の落葉樹で学名はAralia elataといいます。 背の高いウコギ科の植物という名前からもわかるように、本来は背の高い 樹木です。しかし最近小さなものしか見当たりません。 採ってはいけない2番芽や3番芽まで採ってしまうため木が生長できないという話です。

この新芽は山菜として良く食される「たらの芽」です。いろいろな食べ方があるようですがお勧めは天ぷらです。味だけでなく栄養的にも優れ、タンパク質やカリウムおよびビタミン類が多く、最近話題のポリフェノールも多く含まれています。最近では栽培品がスーパーでも入手できるようになりましたが、時期外れの真冬から売っているので季節感が薄れてしまい少し残念です。



たらの芽


この根皮や樹皮は「タラコンピ」として日本をはじめ韓国や中国で、糖尿病、 腎臓病および健胃強壮を目的とした民間薬として使われています。 糖分の吸収を抑制する成分としてエラトサイドという物質が入っています。 この効果は「タラコンピ」だけのものではなく「たらの芽」や「タラノキの葉」にもある といわれています。 この「タラノキの葉」をお茶に加工したものもあり、糖尿病の妙薬として民間で用いられているようです。

ただ体に良いからといって「たらの芽」の天ぷらを食べ過ぎては意味はないと思いますが...




■ 山下 誠也(養命酒中央研究所・主任研究員)
この冬も「ずく」(生薬百選6)はなく雪山からは遠ざかっています。おかげで徐々に体が重くなりつつあります。この春こそはと決意をし....物置の自転車を眺める今日この頃です。