HOME > 生薬百選 > 【2006年5月号】生薬百選26 艾葉(ガイヨウ)
信州ではこれからやっと桜の季節ですが、春ともなりますと道の傍らのあちこちにヨモギ(Artemisia princeps Pamp.)が芽生えてきます。
日本ではヨモギには蓬の字を当てますが、中国では艾(ガイ)がヨモギをさします。そこでヨモギの生薬名は艾葉(ガイヨウ)となっています。お灸のモグサの原料としてもおなじみですね。
またヨモギといえば草もちの色づけですが、元々はハハコグサが用いられたといいます。しかし室町時代の頃より、香りのよいヨモギがハハコグサに取って代わったようです(「京の和菓子」辻ミチ子著)。
芽生えたばかりのヨモギ(左)
昨年摘んで冷凍しておいたヨモギで作った草もち(右)
古くは、端午の節句にショウブとともにヨモギを軒先に飾って、その香りで厄を払ったともいいますが、その香りの成分としては、1,8-シネオールやαおよびβ-ツヨンなどがあります。
生薬としては体を温める性質があるので、冷えによる腹部の痛みや慢性の下痢などに用います。止血作用もあり、血止め草とも呼ばれます。干したものをお風呂に入れたり、柔らかい若芽は草もちに、大きく開いた葉を天ぷらにして食べるなど身近な薬草を大いに活用してみてください。
同属植物のニガヨモギ(Artemisia absinthium 生薬名は苦艾(クガイ))はリキュールのアブサンの原料としても知られており、ヨモギを酒に漬けるのも一興でしょうか。
■ 白鳥 奈緒美(養命酒中央研究所・研究担当)
近頃、読むのは資料ばかりで小説に飢えてます(福井氏の「Op.ローズダスト」が気になってます)。