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生薬百選23 「葛根(カッコン)」


今年の冬は例年に比べ寒さが厳しく、各地で大雪の被害も出ています。こちら伊那谷も雪は例年に比べ少ないものの、毎日厳しい冷え込みが続いています。 冬になると風邪を引く方が多くなりますが、そんな時にお世話になる代表的な漢方処方に「葛根湯」があります。 今回はその中心的な配合生薬である「葛根(カッコン)」を紹介します。



クズの花


葛根はマメ科のクズ Pueraria lobata Ohwi の周皮を除いた根のことで、発汗、解熱、鎮痙剤として使われる生薬です。また、クズから作られる葛湯も、病人の滋養強壮として古くから用いられてきました。主要な成分としては、ダイジン、ダイゼインおよびプエラリンなどのイソフラボンがあり、ダイズの成分として聞かれた方もあるかと思います。



ちなみに葛湯や葛餅に使われる葛粉は葛の根を砕き、水につけて、デンプンをもみだして不純物をのぞいて水にさらして放置し上澄みを捨てます。この作業を繰り返して底に残った白い泥状のデンプンを取り出し、乾燥させて作ります。
クズはその旺盛な繁殖力から時には有害植物と見なされてしまうこともありますが、とても身近で有用な植物でもあるのです。




■ 林 克彦(養命酒中央研究所・主任研究員)
兵庫県出身。生薬の成分などを研究しています。最近、子育ての大変さを思い知らされています。