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生薬百選20 柿


信州では紅葉が終わり、平地でも初霜や初氷の便りが聞かれるようになりました。冬にむけて日に日に寒くなっています。秋が深まるにつれ、柿の実も赤く色づくようになりました。そこで今回は、柿についてお話したいと思います。



柿はカキノキ科の植物で、学名をDiospyros kakiと言い、学名にkaki(カキ)が使われていることから、最も日本らしい果物の一つではないかと思います。その果実には独特の甘味と食感があり、私は好きな果実の一つですが、苦手な方も多いようです。

柿には甘柿と渋柿がありますが、ここ信州では渋柿しかならないようです。気候のせいだと思われますが、甘柿の苗を植えても渋柿になってしまうという話を聞いたことがあります。しかし、渋柿は干したり、さわしたりすることで甘くなります。これは渋味がなくなるのではなく、水に溶けない形になるため、味としては感じなくなるからだそうです。渋味の成分はタンニンで、これは、健康に良い効果があるとされるポリフェノールの一種です。



柿蒂(シテイ):シャックリ止めの妙薬


諺に「柿が赤くなると、医者は青くなる」とあるように、柿には様々な薬効があるといわれています。

例えば、柿の実は柿子(シシ)と呼ばれ、咳を止めたり、血中アルコールの酸化を促進するとされています。干柿は柿餅(シヘイ)と呼ばれ、胃潰瘍や子供の下痢に良いとされ、干柿の表面にふいた白い粉を集めた柿霜(シソウ)は咳を止めるそうです。変わったものでは柿の実のへたは柿蒂(シテイ)と呼ばれシャックリ止めの妙薬とされています。また、柿葉には抗菌作用があることから柿の葉寿司に使われています。柿葉を加工したお茶にはビタミンが豊富に含まれることから、美容や血流を整える作用があるとされています。

その他にも根皮、樹皮、花、柿渋にも薬効があることから、自宅に柿の木が一本あれば諺のとおり医者も真っ青になりそうですね。

秋の果物としては地味な印象のある柿ですが、健康維持に関しては優等生なのかもしれません。




■ 山下 誠也(養命酒中央研究所・研究担当)
秋の最大の楽しみはなんといってもキノコ(松茸)取りです。今年は例年にない不作で4回のチャレンジで僅か2本の収穫に終わりました(涙)。