HOME > 特集記事 > 【2012年12月号】 冷えよサラバ!冬のポカポカぐっすり快眠術

冷えよサラバ!冬のポカポカぐっすり快眠術

冬の悩みのタネといえば“冷え”。冬将軍の到来に先立って、手足に冷えがジンジンと忍び寄ってくる季節になりました。

特に冷えに悩まされるのは、夜。単につらいだけでなく、夜の冷えは“眠り”にも影響を及ぼしかねません。夜が深まるにつれ、あちこちに冷えを感じ、なかなかうまく寝付けなかったり、夜中に目覚めてしまうこと、ありませんか?

これまで元気通信では、何度か冷えにまつわる特集を組んできましたが、今年は冷えと眠りの関係にスポットを当て、ベストな夜の過ごし方を紐解いてみることにしました。ぜひとも参考にしていただき、今年の冬は“ポカポカでスヤスヤ”な夜を過ごしましょう!




冬の冷え、こんな体験ありませんか?

まずは今回の特集にあたり、さまざまな方に“冬の冷え”について伺ってみました。
寒くなるこの季節、みなさまもお困りではないでしょうか。

冷えの悩みといっても、性別や年齢によってさまざま。冷える部位も人それぞれですが、総じて冬の夜の冷えは、眠りを妨げてしまう厄介なもののようです。



トイレでおしりから「冷え」退治!?
韓国の伝統的な冷え対策「よもぎ蒸し」をご存じですか?よもぎなどの薬草を煎じて、その熱や蒸気を体に当てるのですが、どこにあてるかというと「おしり」です。穴のあいた椅子の下には薬草が入った陶器が据えられていて、そこから熱がおしりに届くことになり、ひいては下腹部の冷え対策につながるのだとか。古くから薬草として重宝されてきたよもぎには、血行促進や代謝促進、生理不順など婦人病の改善効果が期待できます。よもぎ蒸しは、蒸気によって皮膚や粘膜から体に取り込もうとするわけですね。

よもぎ蒸しを取り入れているエステなどもありますが、お手軽に自宅で楽しむとすれば、専用の椅子が必要だったりして、ちょっと敷居が高め。しかし、よもぎ以外なにも使わない方法もあります。トイレを利用する方法です。

実際にトイレ用のよもぎ蒸しセット(5個入りで1600円)が市販されていたので、さっそく購入して使用してみました。まずはトイレの水面にトイレットペーパーを浮かべます。そして、紙カップに入ったよもぎに火をつけ、煙が出てきたところで紙カップごと、先程のトイレットペーパーの上に置きます。あとは、いつものように衣服を脱いで座るだけ。おしりの下に火がついたモノがあるので最初はおっかなびっくりでしたが、5分を過ぎたあたりから、少しポカポカしてきました。汗が噴き出るほどではなく、じんわり温まる感覚ですね。15分ほど使用できます。煙がもうもうとしてしまうのがちょっと難点ですが、終わったら後は流すだけという手軽さも。よもぎの香りが好きな人は、リラックス効果も得られそうです!



専門家にきく なぜ冷える?その理由と、眠りとの関係

冬の冷えが眠りを妨げてしまうのは、一体なぜなのか?体の中でどんなことが起こっているのでしょうか?さっそく専門家を訪ねてみました。

今回、お話を伺ったのは、東京・霞ヶ関で婦人科・内科を開業する「霞ヶ関 土居美佐クリニック」の院長・土居美佐先生。冷えに悩む女性が訪れることも多いそうで、西洋医学と東洋医学、双方の見地から治療を行っています。


今回お話をうかがったクリニック
霞ヶ関土居美佐クリニック

婦人科・内科を中心とした女性のためのクリニック。千代田区子宮ガン検診受託医療機関。一般婦人科疾患の保険診療と各種婦人科検診(ドック)の取り扱いも。

東京都千代田区内幸町2-2-1プレスセンタービルB1F
http://www.doimisa-clinic.com/


まずは、冷えの原因から教えていただきましょう。

「冬の冷えは、気温が下がって体表から冷えるパターンが多いのですが、体の内側から冷えることも少なくありません。たとえば、消化管の冷え。近年は冬でもお部屋が暖かく、冷たいものを摂りがちです。冷たいものによって消化管を冷えると、全身に冷えが伝わってしまいます。また、血の巡りがよくない方も要注意。血液は、体の隅々に栄養を運ぶだけでなく、“熱”も運んでいます。その熱が行き届かないわけですから、臓器や手足などの末端が冷えてしまうわけです。体内で“熱”を生む最大の機関である筋肉が少ない人も冷えになりやすいですね。筋肉は、静脈を流れる血を巡らせるポンプの役割も果たしていますので、血の巡りも悪くなりがちです。男性に比べて女性のほうが冷え性になりやすいのは、筋肉が少ないのも原因のひとつ。さらに、加齢などによって血の巡りを促すエストロゲンと呼ばれる女性ホルモンの分泌が低下することも一因です」(土居氏)

さらにもうひとつ、現代社会における冷えの大きな原因として土居先生が挙げたのは、ストレスです。

「ストレスによって、自律神経の働きが乱れやすくなります。自律神経には、外気にあわせて体温を調節する役割もあるため、これがうまくいかずに冷えになるケースです。患者さんの中には、漢方治療によって自律神経の乱れを正すことにより、結果として冷えも治った方もいますね。ただ、一般的にいえるのは、冷えの原因はひとつではないということ。働いている方の場合、ストレスで自律神経が乱れ、運動不足で筋肉も落ち、かつ外食続きで生活習慣病の予備軍だったりと、さまざまな原因が絡みあって冷えにつながっています」(土居氏)

この“自律神経の乱れ”は、睡眠とも深い関係があるようです。

「気持ちが高ぶっている状態の“交感神経”から、リラックスモードの“副交感神経”にスイッチが切り替わることで、人間は眠りにつきやすくなります。自律神経が乱れると、このスイッチの切り替えもなかなかうまくいかなくなり、冷え+眠れない症状に陥ってしまいやすくなるんです。また、冷えの症状が悪化すると、しもやけのような痛みが生じることもあり、熟睡できない原因のひとつになります。その結果、質の高い睡眠がとれず、自律神経の乱れに拍車がかかる悪循環になってしまうんです」(土居氏)

では、どのような点に気をつければよいのでしょうか?

「自らの冷えの原因を医療機関等で突き止めて対応するのがまずひとつ。加えて、冬の夜の過ごし方に気を配ることです。人間は、体の表面ではなく、深部の体温が下がるときに眠気を覚えるようになっています。ドラマや映画などで、寒さで凍死しそうな時に“眠くなってきた”と言うことがよくありますが、これは深部体温が下がっているから。ですから、いったん深部の体温を故意に上げて、だんだんと下がっていく“山”を作ってあげることが大切です。深部体温が上がると、体は熱を下げようとして、手足など体の表面に温かい血を運びます。外気に近いところを血が巡ることで、血液の熱が下がり、ひいては深部も下がっていくことになります」(土居氏)

意外と密接した関係にあった「冷え」と「眠り」。次は、土居先生から伺った、具体的な冬の夜の冷え対策をご覧いただきましょう。




ひきつづき専門家にきく 冬の夜の冷え対策 YES or NO

よかれと思ってやっている冷え対策が、実は逆効果になってしまうことがあるのをご存知ですか? ここでは適切な冷え対策についてひきつづき土居先生に伺っていきます。その対策はYES? それともNO? クイズ感覚で答えてみてくださいね。

Q1 眠る2時間ほど前に筋肉トレーニングをするとよい こたえ NO 解説 はげしい運動をすると、神経が高ぶり、副交感神経へ切り替わらずに眠れなくなりがち。筋肉をつけること自体は冷えに効果的ですが、筋トレをするなら夕方。寝る前はストレッチなど軽めの運動がおすすめです。

Q2 1日3食のうち、夕食のボリュームを最も多くする こたえ NO 解説 漢方の世界では、朝・昼・晩の食事比率は「4・4・2」がベストだといわれていますが、おすすめの比率は「3・4・3」です。夕食のボリュームが大きいと、消化吸収のために血液が胃などの消化管に集中し、末端に行き届かずに手足が冷えやすくなります。

Q3 冬でもお風呂は“ぬるめの温度にゆっくり浸かる” こたえ YES 解説 ぬるいお湯に浸かると、自律神経の働きが回復するケースが多く、血管も拡張します。ゆっくり浸かることで体の表面だけでなく深部の体温も上がるため、眠りを誘いやすくなります。入浴時間は、寝る1〜2時間前くらいがおすすめ。

Q4 寝る間際は、部屋の明かりを少し落とすようにする こたえ YES 解説 パソコンやテレビ、最近ではベッドの中でスマートフォンをみる方も多いようですが、これらの明かりは交感神経を優位にさせるため、寝つきが悪くなりがちです。お部屋の照明も少し落として、副交感神経が優位になるよう環境を整えましょう。

Q5 「むくみ」を伴っている冷えの場合、足を少し高くして寝る こたえ YES 解説 むくみは、細胞間に余計な水分がたまっている状態で、水分そのものが体を冷やしてしまいます。よって、足を少し高くして眠るのがおすすめ。むくみを伴っていない冷えの場合は、高くする必要はありません。


温故知新!昔の“着るふとん”と、いまの“着るブランケット”
「掻巻」←なんと読むか、わかりますか?ご年配の方はご存じかもしれません。また、なぜか山梨県ではコレを現在も愛用している方が多いのだとか……答えは「かいまき」です。ひとことでいえば“袖つきのふとん”のこと。冬の夜、ふとんからはみでた肩に冷えを感じる方や、寝相が悪くて掛布団を蹴散らしてしまいがちな方におすすめ。子どもの寝冷え対策としても便利ですね。昔ほど一般的に使われなくなったものの、現在でも市販されています。着物のように帯を巻いて使えば、体にフィットして保温性は抜群!ただし、あまりきつく帯を巻くと、ちょっと寝返りが打ちづらいところが難点です。寝返りは、特定の部位に圧力がかかるのを避け、血の巡りをよくして疲労をとるための行為ですので、ゆったりと使用しましょう。

そんな掻巻が“着るふとん”だとすると、現在は“着るブランケット”も市販されています。「あったかすっぽりケット(テイジン)」は、すっぽりとポンチョのように被ることが可能。保温性も高く、重量も1kg以下。着たままふとんに入るもよし、毛布のようにして使うもよし。暖かさはさらにアップします。また、折り返しの襟がついているので、首元も冷えにくいですね。お風呂上がりから寝る前に体が冷えやすい方には、ありがたい存在といえるかもしれません。




今月の特集、いかがでしたか? 寒い夜でもグッスリ眠れる“ポカポカ体質”をめざして、ぜひとも冷えをやっつけてくださいね。この冬こそは、冷えよ、サラバ!(冷え対策には薬用養命酒もおすすめですよ!)