HOME > 健康の雑学 >  【2012年12月号】 冷えと眠りの雑学

冷えと眠りの雑学


サンタがプレゼントを靴下に入れる理由は?偉人たちの驚きの暖房術とは?寝る時に被る帽子「ナイトキャップ」の由来とは?冷えと眠りにちなんだ雑学をご紹介します。


なぜサンタクロースは靴下にプレゼントを入れる?


古くから欧米で愛用されてきた暖房器具といえば暖炉です。体を温めてくれるのはもちろん、暖炉の中でゆらぐ火を眺めていると、心がゆったりと落ち着いてきそうですね。

暖炉がある家では、自然と家族みんなが暖炉のまわりに集まるそうです。体だけでなく、心も温めてくれる家族の団らんをも演出しているんですね。暖炉の床の部分は、英語で「Hearth」。同時に、「Hearth」には「家族」という意味もあり、綴りが「Heart(心)」と似ているのも、やはり暖炉が家庭に温もりを与えてきたことに由来しています。古代ローマにおいても、暖炉はラテン語で「focus(焦点)」。家族が集まる場所ゆえの名前ですね。

暖炉にまつわる心温まるエピソードをもうひとつ。4世紀、小アジアのミュラ(現在のトルコ周辺)にニコラウスなる心優しき司祭がいました。あるとき彼は、貧しい家に住む三姉妹が身売りしなくてはならない状況であることを知ります。不憫に思ったニコラウスは、彼女らの住む家を訪れ、窓からそっとお金を投げ入れました。あくる日も同じように窓からお金を投げ入れるニコラウス。三姉妹ゆえに、3回お金を投じようと考えたのです。しかし3回目の訪問時、窓は締まっていました。三姉妹の親は「お金を恵んでくれている人が誰なのか知りたい。窓を締めておけばドアから訪ねてくるだろう」と考えたからです。

しかしニコラウスは、最後まで名乗り出ませんでした。彼がとった行動は、家の煙突にお金を投げ入れること。エイヤッと投げたお金がうまく煙突に入り、暖炉のそばに干していた靴下に偶然入ったのだとか。そして三姉妹とも身売りをまぬがれ、嫁入り道具も揃えることができて、めでたく結婚できたという話です。

そう、この話は、“靴下にプレゼントをいれるサンタクロース”の由来のひとつ。聖(セント)・ニコラウスがなまって「サンタクロース」になったといわれています。



フトンの上に椅子!?偉人たちのビックリ就寝暖房術


歴史に名を刻んだ偉人たちの中にも、若かりし頃は貧しく、生活に困っていた人が少なからずいます。彼らは、冬の夜の寒さをどのようにしのいでいたのでしょう。偉人達の、ちょっと風変わりな“暖房術”を紹介してみましょう。

まずは、放射線の研究に没頭し、ノーベル物理学賞とノーベル化学賞を受賞したキュリー夫人(1867〜1934)。当時、彼女が生まれたポーランドはロシアの統制下にあり、父は職を失い、家族は家を失い、母と姉はチフスで亡くなるなど、絵に描いたような不幸が相次いで起こりました。

貧困のため、薪などの燃料を買うお金もなかった彼女が、夜に寝る際の“暖房術”として活用したのは、なんと「椅子」。まず、薄いふとんの上にコートやセーターなどを載せ、その上に椅子を載せて寝ていたというエピソードがあります。椅子の重さによってギュッとふとんが体に密着するものの、そんなに効果はなさそうですよね…。ただ、“温かくなった気がする”だけでも、当時の彼女としてはよかったのかもしれません。

次に紹介するのは、明治から昭和にかけて活躍した日本の学者、南方熊楠(みなかた・くまぐす)(1867〜1941)。18か国語を操ったといわれ、博物学、生物学、天文学、人類学、宗教学など多くの学問に通じた知識人・熊楠も、若い頃は貧窮にあえいでいました。

彼が海を渡り、イギリスの大英博物館で働いていた頃の話。学問に夢中だった熊楠は、欲しい本があれば衣服やふとんを売り払ってでも手に入れ、余ったお金で酒を飲む暮らしぶりでした。そのため、家では主に裸で過ごし、寝具はペラペラの敷ぶとんが一枚だけ。そんな彼の暖房術は「猫」です。飼い猫の「チョボ六」を抱いて寝ることによって寒さをしのいでいました。ここで「猫のエサ代のほうがお金かかるんじゃないか…」と素朴な疑問が浮かび上がりますが、そこはそれ、知識人でありながら稀代の変わり者であった彼は、まず自らが食べ物を口にいれて咀嚼し、汁とともに栄養分を飲みこんだら残りかすを吐き出して、それを猫のエサにしていたのだとか…。



お酒?帽子?ナイトキャップのヒミツ


「ナイトキャップ(nightcap)」ということばをご存じですか?「お酒でしょ」という方もいれば「寝る時に被る帽子でしょ」という方もいらっしゃるはず。どちらも正解です。この2つのナイトキャップについてご紹介してみましょう。

まずはお酒の“ナイトキャップ”。“寝る前に飲むお酒”のことで、欧米には寝つきをよくするためにナイトキャップをたしなむ文化があります。それに伴って、ナイトキャップ向きのカクテルも考案されてきました。そのままズバリの「ナイトキャップ」というカクテルは、ブランデーをベースにした、オレンジの香り豊かなお酒。「ビィトウィーン・ザ・シーツ」というカクテルは“シーツに包まれて”というちょっと意味深なネーミング。ブランデーやラム、レモンジュースなどが入った、度数が高めの一杯です。総じてナイトキャップとして好まれるお酒は、豊かな香りとほのかな甘みを伴ったものが多いようです。

次は帽子の“ナイトキャップ”。先端に毛の球がついた、サンタクロースが被っている帽子といえばイメージしやすいですよね。ただし、あれは男性用のナイトキャップ。女性用は、フリルがあしらわれたドアノブカバーのようなかたちをしています。童話「赤ずきん」で、狼がおばあさんに化けたときに被っている帽子が、まさに女性用ナイトキャップです。

寝る際に帽子を被る文化は、日本人の私たちからすると少々理解しづらいと思います。なぜこのような帽子が生まれたのか?その理由は諸説あり、「暖房器具のない時代の寒さ対策」「シラミ予防」などさまざまですが、欧米らしいのは、「短髪隠し」説。中世ヨーロッパの上流階級層では、カツラが一大ブームでした。薄毛を隠すというよりは、威厳を出すためのカツラです。よく音楽室に飾ってあるバッハの肖像画のイメージですね。外出時にはいつもカツラをつけていましたが、帰宅してカツラをとり、短髪をさらすと何か落ち着かない…威厳がなくなった気がする…そんな思いからナイトキャップが愛用され始めたという説です。また、昔は毎日お風呂に入る文化がなかったため、整髪油が枕につくのを避け、寝グセ防止のために被り始めたという説もあります。

お酒と帽子の名前が同じ理由は不明ですが、ひとつ、共通しているものをみつけました。北欧ケルト民話に「クルーラホーン」という妖精がいて、ナイトキャップを被った姿で描かれています。この妖精が出現するのは酒蔵で、大のお酒好きなんだとか。もしかすると、この妖精が2つのネーミングの由来かもしれません。