
東洋医学で「健康」とは、心身のバランスが整っていることを指します。全身の調和がとれた状態を「中庸」といい、病気になりにくい健康な体であると考えられています。 心身のバランスは、「熱性・寒性」、「実証・虚証」、「気・血・水」などといったいくつかの“ものさし”を用いてみることができます。


養生の道は、心身のバランスがとれた「中庸」を守ることにあります。中庸とは必ずしも「真ん中」や「中間」という意味ではありません。他者との比較や平均値といったものでもなく、自身に合った中庸の状態を保つことが大切です。また、心身のバランスに偏りがあるからといって、極端になり過ぎてもいけません。例えば体が冷えた「寒」の状態だからと体を温める食材ばかりを食べ過ぎると今度は「熱」に傾き過ぎ、バランスが崩れます。何事も「過ぎる」行為を避け、「ほどほど」を心がけましょう。
一方で、ストレスフルな生活や環境、加齢、季節など様々な「変化」が原因となってこの心身のバランスが崩れると、不調が現れます。特に現代人は冷房や冷蔵庫などの電化製品の普及などを背景に、生活は便利になった反面、体が冷えて寒さに弱い状態である「寒」に傾きやすくなっています。また、社会の高齢化に伴い、体力が不足して体質的に弱った状態である「虚」の人が増えています。

心身のバランスが崩れて不調がある時は、「中庸」から外れている状態です。不調を解消して健康を維持するには、不調の原因を探り、心身のバランスをとることで体を「中庸」の状態に戻すことが大切になります。体が冷えて寒さに弱い状態である「寒」の時には体を「温める」ことで、また、体力が不足して体質的に弱った状態である「虚」の場合は「補う」ことで体の偏りをなくし、「中庸」の状態へ導くことができます。東洋医学ではこのことを「温補」と呼び、古くから養生(健康法)の基本としてきました。
