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やっぱり“お肉”!スタミナをつける肉食のススメ

まだまだ続く、厳しい残暑。夏の疲れがたまって体力が低下しがちな季節には、スタミナ補給が欠かせません。そこで今月の特集は、ズバリ“お肉”。「お肉よりも野菜のほうがヘルシー」と考えがちですが、元気な体を維持するために、お肉は欠かせないエネルギー源です。

健康のためにお肉を敬遠している方も多いかもしれませんが、お肉には筋肉や皮膚の元となるタンパク質をはじめ、ビタミンやミネラルが豊富かつバランスよく含まれています。スタミナ補給だけでなく、美容やダイエットの面でも、お肉の栄養素はとても重要です。

ふだん食卓に並ぶ牛、豚、鶏などのお肉を、さらなるスタミナ食に仕上げる調理のコツや、珍しいワニやダチョウのお肉まで、あらためて知っておきたいお肉のこと、さっそく紐解いてみましょう。




「お肉=スタミナがつく」。その理由とは?

「お肉を食べるとスタミナがつく」とよく耳にしますが、そもそも、スタミナとは何でしょう。また、どういった仕組みでお肉がパワーの源になるのか、大豆などの植物性タンパク質だけではダメなのでしょうか?考えるほどに疑問は深まります。

そこで、まずは食<ダイエット>デザイナーの平野美由紀さんに、お肉とスタミナの関係について伺ってみました。

「“スタミナ不足”を端的に言うと、体がタンパク質を欲している状態を指します。タンパク質は、筋肉や体組織の修復・再生、血液や体液などの新生に欠かせない栄養素で、不足すると疲れを覚え、“スタミナ不足”と感じてしまいます。お肉には、野菜や穀物などの菜食では摂りいれることが難しいタンパク質が豊富に含まれているので、疲れた時に『お肉が食べたい!』と思うのは、とても自然な体のシグナルなんです(平野氏)」

もうひとつ、平野さんが挙げるお肉の特長は、ビタミンBやミネラルが豊富な点です。

「タンパク質が補給されただけでは、体の中で効率よくエネルギーに変わりません。ビタミンBやミネラルなど、代謝を促してくれる栄養素が必要で、お肉にはこれらがケタ違いに豊富に含まれています。大豆などに含まれる植物性タンパク質も、しなやかな筋肉をつくるうえで欠かせない栄養素ですが、お肉は、“エネルギー源(タンパク質)”と“潤滑油(ビタミンBやミネラル)”がいっぺんに摂れて、てっとり早くスタミナ補給ができるエリート食材というわけです(平野氏)」

特にスタミナ不足に陥りがちなのは、夏から残暑厳しい頃にかけてだそうです。

「暑い時期にそうめん、うどんなどの麺類や、甘い飲み物やアイスなど糖質が多い食べ物をたくさん摂りがちになりますよね。すると、糖質をエネルギーに変えるビタミンB1が体の中で足りなくなり、食欲不振になってしまいます。肉や魚などタンパク質の多い食べ物を敬遠しがちになり、ますますビタミンB群とミネラルが不足する…まさに負のスパイラルで、体はどんどん疲れていきますので、しっかりお肉を摂りましょう。ただし注意点がひとつ。お肉“ばかり”の食生活ですと、腸内環境が悪化します。じつはビタミンBは、食物として摂りいれるだけでなく、腸内細菌が自然に作り出してくれるものでもあるんです。そのため、腸内環境を正常に保つ野菜や果物、穀物など植物性の食品を摂ることも忘れないでくださいね(平野氏)」

スタミナ補給に欠かせないお肉。しかしひとえにお肉といっても、獣肉の種類や部位ごとに特長があるものです。次は、鶏、牛、豚にスポットを充てて、平野さんにアドバイスをいただいた“お肉をさらなるスタミナ食”にする方法を紹介しましょう。

長寿と美容のために、ご年配の方も積極的にお肉を!! 日本が長寿大国になった理由のひとつは、お肉を中心とした動物性タンパク質を食べるようになったからだという説があります。

戦前までの日本人は魚を食べてはいたもののの、摂取するタンパク質は大豆などの植物性タンパク質が主でした。平均寿命が欧米諸国のレベルに到達したのは、戦後まもない頃。そこから急激に平均寿命が延び、昭和60年頃には世界一となりました。その延びと比例して、日本人の動物性食品の摂取量は増えてきています。平均寿命を左右する脳卒中などのリスクが、動物性タンパク質の摂取によって軽減されることも明らかになってきました。

今回、お話を伺った平野美由紀さんも、「高齢者の方にお肉を食べてほしい」と語ります。

「確かに肉類を食べないで長寿の方もいらっしゃいますが、かなり稀です。肉を噛むことによって丈夫な歯と顎が培われること、消化酵素が十分分泌されていることも長寿の秘訣といえるでしょう。また、寿命だけでなく“見た目”もお肉を食べるか否かによって変化します。これまで多くの方に食生活のアドバイスを行ってきましたが、30〜50代の頃に肉類を食べて健康だった方が、高齢になって摂取量を減らすと、皮膚に斜めのたるみやしわが出てしまいます。でもご安心ください。肉類を毎日100g食べていただくと、3〜4日で張りのある肌に戻りますよ。他にも、お肉を食べる生活にシフトしたことで、元気になった、歩けるようになった、寝つきや目覚めが良くなったという人もいます。基礎体力に関わってくるのでしょう。(平野氏)」




牛、豚、鶏・・・いつものお肉を、さらなるスタミナ食にかんたんアレンジ!!

日本人の食卓に上る三大食肉といえば、牛、豚、そして鶏。夕食の献立を考えるとき、「今日は疲れたから牛肉にしよう」「キムチがあるから豚と炒めよう」などと、なんとなく決めている方が多いのでは?もちろん、そうした決め方でもなんら問題はありません。しかし、自分や家族の体調から、どの肉、どの部位にするかを決めてみるのもおすすめです。それぞれの特長を踏まえつつ、スタミナがさらにつく調理法をご紹介しましょう。

牛肉

肩からお尻にかけてのロース部分は、牛肉のうま味要素といえる脂身が多め。一方、腰からお尻にかけてのランプ、もも肉などは赤身で、鉄分などのミネラルと、タンパク質を豊富に含んでいます。肥満気味の方や、肌荒れが気になる方には赤身がおすすめです。

シンプルレシピ ニンニクや玉ねぎと一緒に炒めるとスタミナアップ!!

【作り方】
(1)ニンニクや玉ねぎ(長ねぎ、万能ねぎでも可)を少量の油で焼く。
(2)香りが出たところで、牛のもも肉の薄切りを加えて塩コショウで炒める。
(3)みりんとしょうゆをサッかけて香ばしく仕上げて出来上がり。

「もも肉は脂肪が少なく、タンパク質やビタミン、ミネラルが豊富。ビタミンB1の吸収を高めるために、ニンニクやねぎ類に含まれる硫化アリルを合わせています。パサつきが気になる方は、片栗粉をからめて、しゃぶしゃぶ風に召し上がるのもおすすめ。万能ねぎ、しょうが、みょうが、シソなどの薬味や、消化を促進してタンパク質の吸収を高める大根おろしやとろろと合わせていただきましょう(平野氏)」


豚肉 ビタミンBの量は随一!

お肉の中でも特にビタミンB(ビタミンB1、B2など)を多く含むため、スタミナ補給に適しています。レバーには鉄分が多く含まれていますが、お肉そのものに含まれるミネラルは牛に比べると若干少なめ。また、豚肉の脂身は血中コレステロールを下げる脂肪酸が多く含まれています。

シンプルレシピ ミネラル豊富なエノキダケやニラと合わせる!

【作り方】
(1)耐熱の器に玉ねぎスライス、エノキダケを敷き、豚もも肉の薄切りを広げる。
(2)3cmほどの長さに切ったニラを乗せ、ラップをして電子レンジで加熱。
(3)火が通ったら、刻んだキムチとごま油を少々絡めて出来上がり。

「スタミナ補給には、ビタミンB1を多く含むもも肉や脂身の少ない肩ロースがおすすめ。ミネラルを豊富に含むエノキダケやニラなどと合わせましょう。ちなみに、暑い時期には豚の冷しゃぶも美味しく感じますが、その際よく使われる薄切りバラ肉はビタミンB1が少なめ。しかもビタミンB1は水溶性なので、切断面から水に流れてしまい、スタミナ食としてはあまりおすすめできません(平野氏)」


鶏肉

皮やお尻の部分(ボン尻)は脂肪が多めですが、全体的に低カロリーな鶏肉。特にむね肉やささみ、レバーなどはタンパク質が豊富でカロリーは比較的低めです。体にとって重要なミネラルのひとつ、鉄分はレバーに多く含まれます。肉体的疲労に対して回復効果が期待できるおすすめの部位は、むね肉。活性酸素の除去効果を持つ抗酸化物質(イミダゾールペプチド)が多く含まれています。

シンプルレシピ ゴーヤとニンニクで疲れを吹き飛ばそう!

【作り方】
(1)むね肉の皮目に塩、こしょうを振る。
(2)皮目をフライパンの鍋肌につけて弱〜中火で10分ほど焼く。
(3)裏返して5分ほど焼く。その際、ゴーヤやニンニクスライスを入れて炒めれば出来上がり。

「鶏の胸肉は大きな身のままを皮目からゆっくり加熱することで、皮はカリカリで身は驚くほどふっくらジューシーに仕上がります。ゴーヤの苦み、ニンニクの香りが食欲をそそると同時に、消化酵素の分泌が高まり、消化吸収もアップ。また、ニンニク由来のビタミンB1の吸収効果で、持続的にエネルギー産生を行うアリチアミンが補給され、疲労回復効果が期待できます。(平野氏)」




体験レポート いざ調理!ワニとダチョウが我が家にやってきた

日本人の肉食文化といえば、先に挙げた牛、豚、鶏をメインに、ときおり羊や馬などを食べる程度です。それ他の獣肉の味は、なかなか想像がつかないもの。そこで今回の体験レポートは、珍しいお肉を購入し、実際に食べてみることにしました!はたしてその味や、いかに!!


食べ物関連の体験レポートといえば私、編集部員Kです。今回、珍しい肉を食べるということで、各方面をリサーチしていたところ、個人でも単品から購入できるオーストラリア産のダチョウ肉、ワニ肉、ラクダ肉の販売サイト「Plus Impact Japan」さんを発見しました。せっかくなら自分で調理してみようということで「お試しコンボ」を購入。残念ながらラクダ肉は品切れでしたが、ダチョウ肉、ワニ肉(ボンレスミート)、さらにワニの舌(タン)が我が家にやってきました。


それにしても、ワニ肉のパッケージの威圧感がすごい…少々ビクビクしながら開封して、いざ調理です。同サイトに載っていたメニューを参考に、なるべくお肉の味がダイレクトに伝わるよう、シンプルな料理を作ってみました。

まず1品目は、ダチョウ肉のたたき。塩とこしょうで下味をつけて冷蔵庫で寝かせた後、フライパンにオリーブオイルを敷いて、表面を強火で焼き上げました。ポン酢と大根おろしを添え、ちょっと和食風にアレンジ。さっそく頂くと…味も食感も、牛肉のたたきとそっくり!とても柔らかく、レアな部分もしっかりと噛み切れます。噛めば噛むほどに、赤身の味がじんわりと口の中に広がっていく感覚です。臭みもまったく感じませんでした。ダチョウってたしか、鳥でしたよね…なんでこんなに牛肉っぽいの!?なんとも不思議な体験です。

ここで素朴な疑問がひとつ。オーストラリアの人びとは、日常的にダチョウを食べているのでしょうか?同社の代表、アダム・リチャード・ハリガンさんにお話を伺ってみました。

「お肉専門店で購入できますが、家庭で食べるよりもレストランやホテルなどで食べることが多いですね。ダチョウ肉は、主にヨーロッパと北米に輸出も行っています。鶏肉、牛肉、豚肉に比べて脂肪分やコレステロール値が低く、高タンパクで鉄分が豊富な赤身が特長です。カロリーも低いため、ヘルシーフードとして注目されていますよ。特にスポーツ選手やモデルなどから高い人気を得ています(ハリガン氏)」

2品目は、“鶏から”ならぬ“ワニから”。すなわち、ワニのからあげです、牛乳、たまご、小麦粉で衣を作ってサッと揚げてみました。生肉の状態で、ほんの少し独特のにおいを発していたので、衣にローズマリーやタイム、オレガノ、セージなどのハーブを混ぜ合わせたところがミソですね。さっそく食べてみると…味はあっさりとしていて鶏肉のよう!ダチョウが牛でワニが鶏で…ちょっと混乱してきました(笑)。食感は、筋繊維がしっかりしている印象(思い込み?)で歯ごたえがありますが、それでも鶏肉とほぼ変わりません。

そして最後は、ワニの舌。牛タンならぬ、ワニタンです。塩とこしょうを振って、オリーブオイルで焼き上げたステーキです。ワニ特有の柄が入った皮がついているため、他の肉に比べ、ワニタンはちょっと見た目が怖いですが、思い切ってガブリ…驚きました、これは牛タンとはまったく違います。フワフワとしているゼラチン質は、焼肉の「ホルモン」に近い食感をもたらします。それでいて、味は濃厚。

「ワニ肉は、ケアンズなどの観光地があるクイーンズランド州のレストランでよく提供されています。タイ料理、中華料理、オーストラリアモダン料理(フュージョン)のレストランであれば、クイーンズランド州に限らずオーストラリア国内でワニ肉を食べることができますよ。鶏肉や牛肉に比べて低脂肪、低カロリー、高タンパクで、コラーゲンが多く含まれています(ハリガン氏)」

いやはや、実に新鮮な体験でした。食べる前は「硬そう」「臭いかも」といった懸念がありましたが、良い意味で裏切られました。どれもかなり美味しい!ちなみに、今回品切れだったラクダ肉もかなりヘルシーで、ハリガン氏いわく「健康食材として、オーストラリア心臓病協会(National Heart Foundation)の承認を受けています」とのこと。ラクダが入荷されたら、仕事抜きにして注文したいと思います!!



牛?豚?鶏?いいえ、カンガルーのお肉です。 アツアツの鉄鍋に、ふんわりチーズとたまごの香り。真ん中に乗っているのはミートソースですが、実はこれ、カンガルーのお肉なんです。

この珍しい一皿「カンガルーミートチーズオムレツ」を堪能できるのが、東京・渋谷の「獣27」というお店。カンガルーってどんな味なんだろう?おそるおそるスプーンでかき混ぜて一口食べてみますと、あ、これはマイルドで美味しい!牛肉を使ったミートソースにひけをとりません。「カンガルー肉はくさみがある」と噂に聞いていたのですが、店員さんに聞いてみると「牛乳に浸して臭みをとっています」とのことでした。

カンガルーだけではありません。「鹿肉と彩り野菜のカレー」は、どうやらスパイスで鹿肉のアクを消しているようです。それでも何度か噛んでいると、ほのかに独特の野趣あふれる味が口の中に広がります。野趣でいえば「猪バラ肉の薫製」もおすすめ。メニューの中ではもっとも獣肉独特の香りと燻製の風味が混ざり、お酒がすすみます。

一方、「ワニのピッツァ」のワニ肉はツナのようなフレーク状になっていて、カジュアルに仕上がっていました。そして、編集部員Kが体験レポートで食べた「ダチョウのたたき」。体験後に「牛だよ!牛なんだよ!」と口角泡を飛ばしていたKさんですが、なるほど、まったくそのとおり。こんなにあっさり食べられるとは、思ってもいませんでした。

日本でなじみのない素材も、独特な調理がほどこされているので違和感なく楽しめますが、それでも普通の牛や豚とはかすかに違う後味に、ふだんは食べない動物を食べている、という感覚をおぼえます。

一風変わった肉料理がカジュアルなカフェめし感覚でいただける「獣27」。一度足を運んで、異国の食文化を体験してみてはいかがでしょうか。

◇獣27
東京都渋谷区円山町5-18 道玄坂スクエア1F 03-3770-4227