食用や医療用麻薬に広く利用 |
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梅雨の時期は、大型で原色に近い花が目を引きますが、ケシはその代表といえます。ケシには多くの種類がありますが、日本でよく目にするのは、葉がアザミに似ている「アザミゲシ」や、「虞美人草(ぐびじんそう)」「ポピー」とも呼ばれる「ヒナゲシ」、茎・葉に固い毛が生えている「オニゲシ」などの園芸種で、いずれもその特徴を示す名がつけられています。単に「ケシ」という際は、ヨーロッパ東部原産の麻薬採取用として栽培される薬用ケシの種を指すことが多いといえます。 くれないの 唐くれないの 芥子の花 夕陽をうけて 燃ゆるが如し 罌粟咲きぬ さびしき白と 火の色と ならべてわれを 悲しくぞする 芥子咲いて 其の日の風に 散りにけり
ケシの名は「昔これに芥子という字を用いたときの音であろう。漢名は『罌子粟(おうしぞく)』『罌粟(おうぞく)』を使う」と植物学者の牧野富太郎博士は述べています。「芥子」は「カラシナ」のことで、カラシナの種子がケシに似ていることに由来します。漢名の「罌」は「腹が大きく口がつぼんだ甕のこと」で、果実の形が似ていることに由来します。「粟」は果実に粟のような種子を内蔵しているからです。ケシ坊主の形が米俵に似ていることや、花の形から「米殻花」「御米花」「象殻」「嚢子」「阿芙蓉」などの別名もあります。
食用としては、ケシの種子を和菓子やアンパンの表面にまぶしたり、七味唐辛子の原料や、金平糖の芯、小鳥の餌に使ったり、油の抽出に使うなど幅広く利用されてきました。また、若葉も食用に使われます。薬用としては、未熟果に傷をつけ、溢れた乳汁を集めた阿片を原料に医療用麻薬(モルヒネ、コデインなど)として利用されてきました。なお、種子を輸入する際に蒸気加熱が行われ、発芽しないように操作されています。 出典:牧幸男『植物楽趣』 |