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動物園の雑学

「日本人は一生に4回動物園に行く」って本当?世界遺産の中にある世界最古の動物園とは?動物園と縁の深い作家たち——今月は「動物園」の雑学をお届けします。


「日本人は一生に4回動物園に行く」って本当?

「動物園」という言葉を初めて使ったのは、1万円札でおなじみの福沢諭吉です。江戸時代末期に出版された『西洋事情』の中で、西欧の文明のひとつとして動物園を紹介したのです。日本初の動物園である「上野動物園」が開園したのは、その20年後の1882年(明治15年)のことです。その後、明治末期から大正にかけて「京都市記念動物園」「天王寺動物園(大阪)」「名古屋鶴舞公園付属動物園」が開設されました。戦時中は、戦火で動物が脱走するのを防ぐための猛獣処分という悲しいできごともありましたが、戦後は日本全国に動物園が開設され、動物園は老若男女問わず楽しめるレクリエーションとして不動の人気を誇るようになりました。
「日本人は一生に4回動物園へ行く」という言葉もこのころに生まれました。1回目は親に連れられて、2回目は幼稚園や学校の遠足で行き、3回目は自分の子どもを連れて行き、4回目は孫を連れて行くというのです。今は動物園によって、年に何回も入園できるお得な年間パスポートも発行されているので、もっと頻繁に動物園に訪れることができます。一生に4回といわず、ぜひ気軽に動物園に行きましょう。


動物園


世界遺産の中にある世界最古の動物園とは?

世界で1番最初に動物園ができたのは、オーストリアの首都ウィーンにある「シェーンブルン宮殿」です。1752年にできた世界最古の「シェーンブルン動物園」は、世界遺産である宮殿の広大な庭園内に今も優雅にたたずんでいます。当初は貴族専用の小動物園だったようですが、今は当時のクラシックな宮殿を改造した動物舎でオランウータンが飛び回る一方、最新施設ではジャイアントパンダやアフリカゾウなどの人気動物たちが超至近距離で観察できます。中には、貴族の宮殿には似つかわしくないゴキブリの展示まであるそうなので、物好きな方はぜひ立ち寄ってみてください。
さて、次にご紹介するのは、世界で最も規模が大きいといわれるアメリカの「サンディエゴ動物園」です。東京ドーム約8個分の敷地に、約660種・約3600点の動物が飼育されているといわれており、頭上にはロープウェイも走っています。もはやひとつの町といってもいいほどのスケールなので、まずは解説付きで園内を一巡できるバスツアーを利用するのがおすすめです。
人が車に乗って放し飼いの動物を観察できる「サファリパーク」が世界で初めてできたのは1966年、イギリスの「ロングリート」です。ただし、その元祖といえるのは、1964年に「多摩動物公園」で始まった有名なライオンバスなのだそう(※2016年4月からバス発着場の耐震化に伴う工事のため、ライオンバスは運行休止中)。動物園は西洋の概念を輸入したものですが、日本の動物園発のアイデアが世界中のサファリパークの原点になったとは驚きですね。


動物園と縁の深い作家たち

動物園は作家のイマジネーションを刺激するようで、多くの作家が動物園を描いたり、動物園に通ったりしています。村上春樹氏もそのひとり。初期の短編『カンガルー日和』は、千葉にかつてあった遊園地の動物園に行った後に書いたといわれています。この小説の主人公は、新聞で動物園のカンガルーが赤ちゃんを産んだことを知り、1カ月間、恋人と共にカンガルーの赤ちゃんを見物するのにふさわしい朝の到来を待ち続け、ようやくその日が訪れたときにこう語ります。「我々は朝の六時に目覚め、窓のカーテンを開け、それがカンガルー日和であることを一瞬のうちに確認した。二人は電車に乗って動物園へ出かけた。」
筒井康隆氏も『私説博物誌』の中で、動物園について深く語っています。この作品を監修した彼の実父・筒井嘉隆氏は、大阪の「天王寺動物園」を先駆的な動物園に改革した園長だったそうです。しかし嘉隆氏は、戦後すぐに出版された藤井恒夫氏の小説『動物園』を読んで怒り狂い、抗議の手紙を送りつけたのだとか。なぜなら、動物がかわいそうだから全部檻から逃がしてしまうというお話だったからです。
動物に対する思いは人それぞれですが、やはり動物園には人の心を動かす奥深いものが宿っているようです。