東洋医学から読み解く、 私たちの体の変化
東洋医学の教科書ともいえる文献『黄帝内経(こうていだいけい)』には、「女性は7の倍数」「男性は8の倍数」の年齢の時に節目を迎え、体に変化が訪れるという記述があります。
これに基づくと、人の一生のライフサイクルを下のような表で表すことができます。「節目年齢」で、自分の体の変化が早まっていたりしないか、確認してみましょう。
女性の節目年齢は7年周期
- 7歳
- 永久歯に生え変わる
- 14歳
- 初潮を迎える
- 21歳
- 女性の体ができ上がる
- 28歳
- 女性として体が最も充実する
- 35歳
-
容姿の衰えが見え始める
☆顔がやつれ始め、髪も抜けやすくなる。
肌のケア、髪のケアも入念に。婦人科系トラブルにも注意しましょう。
- 42歳
-
白髪が目立ち始める
☆顔にシワが目立つ。心身の不調が起こりやすくなる。
血行をよくする、体を冷やさない対策をとりましょう。
- 49歳
-
閉経。子を授かることが難しくなる。
☆閉経前後の不定愁訴が起こりやすくなる。
ストレスケア、ゆったり過ごす工夫を。生活習慣病にも注意しましょう。
- 50代
- 肝気が衰え始める
- 56歳
-
☆イライラ、眼の疲れ、体力低下が起こりやすくなる。
心と眼のケアを心がけましょう。こまめに体を動かす習慣を。
- 60代
- 心気が衰え始める
- 63歳
-
☆動悸、息切れ、慢性疲労、不眠が起こりやすくなる。
疲れ、血行促進、質の良い眠り対策をとりましょう。
- 70代
- 脾気が虚弱になる
- 70歳
77歳 -
☆食欲不振、胃腸虚弱、便秘・下痢が起こりやすくなる。
胃腸ケア、便秘対策を。生きがいを持ちましょう。
- 80代
- 肺気が虚弱になる
- 84歳
-
☆かぜをひきやすく、皮膚の乾燥、咳が起こりやすくなる。
免疫力を下げない、のどのケア、こまめな水分補給を心がけましょう。
- 90代
- 腎気が減少する
- 91歳
-
女性としてすばらしい長寿。心身をケアして元気に年齢を重ねましょう。
男性の節目年齢は8年周期
- 8歳
- 永久歯に生え変わる
- 16歳
- 精通を迎える
- 24歳
- 男性の体ができ上がる
- 32歳
- 男性として体が最も充実する
- 40歳
-
衰えが見え始める
☆抜け毛、歯のトラブルが起こりやすくなる。
髪のケア、歯のケアも入念に。
- 48歳
-
白髪が目立つ
☆顔にシワがより、白髪が増えやすくなる。疲れが抜けにくくなる
体の変わり目だと心得ましょう。
- 50代
-
肝気が衰え始める
☆イライラ、眼の疲れ、体力低下が起こりやすくなる。
心と眼のケアを心がけましょう。こまめに体を動かす習慣を。
- 56歳
-
生殖能力が衰える
☆筋肉が衰え、体に老化が見え始める。
- 60代
-
心気が衰え始める
☆動悸、息切れ、慢性疲労、不眠が起こりやすくなる。
疲れ、血行促進、質のよい眠り対策を。
- 64歳
-
老年期に入る
☆歯や髪が抜けやすくなる。
- 70代
- 脾気が虚弱になる
- 72歳
-
☆食欲不振、胃腸虚弱、便秘・下痢が起こりやすくなる。
胃腸ケア、便秘対策を。生きがいを持ちましょう。
- 80代
- 肺気が虚弱になる
- 80歳
88歳 -
☆かぜをひきやすく、皮膚の乾燥、咳が起こりやすくなる。
免疫力を下げない、のどのケア、こまめな水分補給を心がけましょう。
- 90代
- 腎気が減少する
- 96歳
-
男性としてすばらしい長寿。心身をケアして元気に年齢を重ねていきましょう。
この表は、『黄帝内経素問(こうていだいけいそもん)』の上古天真論(じょうこてんしんろん)と、『黄帝 内経霊枢(こうていだいけいれいすう)』天年(てんねん)篇を資料とし、作成したものです。
「肝(かん)」「心(しん)」「脾(ひ)」「肺(はい)」「腎(じん)」について 詳しくはこちら
節目年齢には個人差がありますので、表示の年齢はあくまでも目安です。
二千年の時を経た東洋医学の教え
『黄帝内経(こうていだいけい)』は今から二千年前に書かれた書物です。伝説上の帝王である黄帝(こうてい)が問い、医学の師である岐伯(きはく)がそれに答える形式で、東洋医学の思想や養生(ようじょう)=生活の仕方が説かれていきます。
そこには「腎気※(じんき)」から見た体の年齢変化として、女性は7歳から49歳までを7年周期で、男性は8歳から64歳までを8年周期で表したライフサイクルが記されています。
※【腎気】=東洋医学において成長、発育、生殖にかかわるエネルギー 。
■黄帝内経に基づく人の体の変化
女性
- 7歳
- 歯が生えかわり、髪が長くなる
- 14歳
- 月経が始まって、子を産めるようになる
- 21歳
- 体が成熟し、背丈も伸びきる
- 28歳
- 筋骨がしっかりし、髪の長さが極まり、身体が盛んになる
- 35歳
- 顔の色艶にかげりが出て、髪や頬のハリに衰えが現れる
- 42歳
- 顔がやつれ、髪に白いものが混じり始める
- 49歳
- 肉体が衰え始め、閉経を迎える
男性
- 8歳
- 髪が長くなり、歯が永久歯に生えかわる
- 16歳
- 精通を迎え、子をつくることができるようになる
- 24歳
- 筋骨がしっかりし、背丈も伸びて最も盛んになる
- 32歳
- 筋肉が強壮となり、肌肉が豊かでたくましくなる
- 40歳
- 体力や毛髪の成長にかげりが見え始める
- 48歳
- 肉体的に衰えが始まる。しわや白髪が目立ち始める
- 56歳
- 生殖能力が弱まり、全体の老化が見え始める
- 64歳
- 五臓六腑を始め身体的に衰え、歯や髪が抜ける
現代にも通じる7と8の節目年齢
黄帝内経による人の体の変化では、女性は49歳で閉経を迎えるとあります。現代の女性の一般的な閉経年齢も50歳前後でほとんど変わりません。女性の体が28歳、男性が32歳でピークを迎えるという点においても、現代の医学的な認識とほぼ同じで、医学が日進月歩している現代においても、二千年前の体の変化が当てはまることが分かります。
■年齢カーブは養生次第で変えられる
黄帝内経による人の体の変化は、表のような年齢カーブになりますが、このカーブは養生次第で、下がり幅の少ない緩やかなカーブに変えることができます。一方で不摂生をしている人の年齢カーブはぐんぐん下降し、老化を加速させます(右上参照)。中高年以降に目指すべきは緩やかな年齢カーブ。現状維持できれば大きなプラスです。
今の自分の体と向き合おう
自分の体は自分が一番よく知っているはずなのですが、若くて最も元気だった頃のイメージが強く残っていると、自分の体への過信から無理をしてしまい、体調を崩してしまうことがあります。まずは今の自分の状態を正確に知ることが大切です。
心身の変調チェック
加齢に伴う心身の変調をチェックしてみましょう。 次の項目で当てはまるものにチェックを入れてください。
元気や気力がなくなってきた
大声でないと聞こえづらい
疲れやすくなった
めまい感や耳鳴りがしやすい
いつも眠い
歩く速さが遅くなって、よく人に抜かれる
全身に冷えを感じることが多くなった
膝痛や腰痛など足腰のトラブルが多い
根を詰めると腰が重く、だるく感じる
性欲をほとんど感じない
皮膚にツヤや潤いがなくなってきた
トイレを我慢しにくく、尿漏れしやすい
白髪が増えてきた
夜間、トイレに2回以上行く
髪が細くなり、ボリュームが少なくなった
下半身太りしやすくなった
チェックが16個中8個以上の人は…
生命エネルギー、成長、老化にかかわる「腎」の働きが弱くなっているようです。このまま放っておくと心身の老化が進んでしまいます。 食べ物や生活習慣などを見直しましょう。
コラム
“ものさし”を持つことが大切
節目年齢は自分の体をチェックするための目安になります。もう一方で大切なのは、自分自身の基準を持つことです。体調や体質が千差万別なら、健康の保ち方や加齢への対処法も人それぞれあって当然。そこで必要なのが、自分を客観的に見るための、自分の“ものさし”なのです。自分のものさしを持つと、昨日と今日の自分の体調や気分の変化に敏感になります。変調に早く対応することもできるでしょう。