東洋医学に学ぶ胃腸のケア

健康の源である「気」は胃腸でつくられます

東洋医学では、健康に留意して生活をすることを「養生」といい、「気」を整えることを基本としています。
「気」とは生命活動を営むエネルギーで、西洋医学でいう免疫力(病気に対する抵抗力)にもあたります。
そのため、季節の移り変わりや環境の変化、不摂生、加齢などにより「気」が衰弱すると、抵抗力も弱まり、外部からの病因の侵入をはね返すことができずに病気になりやすくなります。
東洋医学では、「気」は日々の胃腸の働きによってつくられると考えます。
ですから、胃腸を健やかに保つことは健康を守る上で大変重要なのです。
生まれつき胃腸が弱い人だけでなく、加齢に伴い胃腸の働きが弱くなっている人も、胃腸の働きを高めることで「気」を蓄えましょう。
ストレスで胃腸の働きが低下している場合は、胃腸の働きを高めて「気」を補うだけでなく、生活習慣を見直し、「気・血・水」のバランスを整えることで、「気」の巡りを改善させることも大切です。

気・血・水って何?

五臓の役割

胃腸の働きが低下すると、胃もたれや消化不良、食欲不振、便秘、下痢など胃腸に直接関係する症状だけでなく、疲れや肩こり、かぜなどの不調となって全身に様々な症状が起こることがあります。
東洋医学では、「気・血・水」をうまく巡らせるために「肝」「心」「脾」「肺」「腎」という「五臓」が働いていると考えられています。
健康には、五臓の働きを穏やかに整えて「気」を十分に養うことが大切です。
五臓のそれぞれは、西洋医学でいうところの臓器の名称とは必ずしも一致しません。
「脾」は西洋医学でいう胃腸機能の他、消化吸収の働き全体を指します。
体質的に「脾」(胃腸)が弱い人もいますが、現代のストレス社会では、「肝」(自律神経)の乱れから「脾」の乱れを招くケースも少なくありません。
 また、「脾」は「腎」(老化)とも深く関係があります。

「肝」の乱れは年代によって現れ方が違う

「先天の気」と「後天の気」を養生する

「気」には、「先天の気」と「後天の気」の2種類があります。
前者は親から受け継ぎ、生まれながらもっているエネルギーで、心身の生理機能をつかさどる五臓の1つである「腎」に蓄えられます。
「腎」は老化との関係が深く、腎臓、膀胱などの泌尿器や内分泌にかかわります。
後者は「脾」(胃腸)と関係が深く※、日々補充するエネルギーで胃腸の働きによってつくられます。
「先天の気」は生まれた段階でほぼ総量が決まっており、加齢と共にすり減っていきます。
「後天の気」は暮らしの中で食養生などを通じて補充できるものですが、それをつくる胃腸の働きもまた、年齢と共に衰えていきます。
不摂生により「先天の気」を不必要にすり減らすことなく、養生を通じて胃腸の働きを高め、「後天の気」を蓄えていく。
これを日々の生活の中で実践していくことが大切です。

※「後天の気」は「肺」(呼吸)とも関係するが、通常は同じ空気を吸い込んでいるため、個人差がある胃腸の働きと比べ、呼吸器の病気がなければ「肺」による「後天の気」の優劣はみられにくい。

「先天の気」

「後天の気」

エネルギーボールを意識する

東洋医学に見る胃腸と老化

熱を発している 冷えて寒さに弱くなる

体格がよく 疲れにくい体 胃腸が強い 華奢な体格で 疲れやすい体 胃腸が弱い

東洋医学では、「老化」の状態を2つの流れで捉えています。
1つは、「陽から陰」への流れです。
古代中国では万物を「陰」と「陽」に分けて様々な現象を捉えてきました。
この陰陽論は医学にも用いられ、東洋医学では、新陳代謝が活発で、体が熱を発することができる状態を「陽」。
体の一部または全部の新陳代謝が低下し、体が冷えて寒さに弱くなる状態を「陰」と考えています。
もう1つは、「実から虚」への流れです。
「実」とは、体格がよく、積極的で疲れにくく、胃腸が強い状態のことをいい、一方「虚」は、華奢な体格や水太り、消極的で疲れやすく、胃腸が弱い状態のことを指しています。
歳をとるに従い、誰でも「陽から陰」、「実から虚」に向かっていくと考えられています。

「心身一如」の考え方