養命酒ライフスタイルマガジン

健康の雑学

月の雑学

「人間の体には“月”がいっぱい?!」「月をめぐる世界のミステリアスな伝説」「月を眺めるためだけに建てられた日本の名建築」——今月は月に関する雑学をお届けします!

人間の体には“月”がいっぱい?!

肩、背、骨、胃、脳、胸、腰、胴、腹、腕、腋、肘、腿、膝、股、臓、腑、腸、肺、肝、脾、腎、膀胱、筋、肌…人体を表す漢字の部首の多くに「月」がついていますが、空の月と何か関係があるのでしょうか?漢字の「月」は、半月や三日月に似た形をしていますが、これはもともと月の欠けた形をかたどって作られた文字だからです。

ただ、「肉」という漢字が偏に簡略化された形も「月」になり、これを「にくづき」といいます。身体に関する漢字に使われている「月」は、天空の月ではなく、実は「肉」に紐づいていたのです。「肉」はもともと動物の肉をかたどった文字で、「熊」「豚」といった動物を表す漢字にも使われています。「河豚(ふぐ)」や「海豚(いるか)にも豚が使われているのは、豚のようなコロンとした体形に由来するようです。

一方、人体には、空の月に由来する言葉もあります。例えば、膝の関節のクッションの役割を果たしている三日月形の組織は「半月板」と呼ばれています。また、心臓の左心室から出る大動脈にある半月形の3枚の弁は「半月弁」といいます。手相では、掌の7つの膨らみに、太陽丘、火星丘、金星丘…といった惑星の名がそれぞれ付いており、小指の下から手首にかけての膨らみを「月丘」といいます。身体の至る所に月があるのを想像すると、人体そのものが宇宙のように思えてきますね。

月をめぐる世界のミステリアスな伝説

古来より月は人々の想像を掻き立てるミステリアスな存在でした。日本でスタンダードなウサギの餅つき伝説に類似した伝承は、アジアからアフリカ、南米まで幅広い地域に見られますが、インドやビルマではウサギが黒焦げになってしまうなど、地域によってストーリーが異なります。月面の影はウサギ以外にもいろいろなものに例えられており、沖縄の宮古島では「水桶を担ぐ人」に見立てた生死にまつわる伝説が残されています。また、スウェーデンには、闇夜に紛れて悪事を働いていた2人の泥棒が、月光を消そうとタールを担いで月まで行ったところ、タールで身動きできなくなってしまい、そのトホホな姿が今も月面に見えるというコントのような伝説があるようです。中国には月にまつわる故事が多く、唐代の書物『西陽雑俎』には、月に生えている桂の木を伐り倒すことを命じられた罪人が、斧で伐っても伐っても木が永遠に生え続けるという月桂の故事が出てきます。中国の桂と月桂樹は別物ですが、よく似ていることから、日本に渡来した際、月桂の故事にちなんで「月桂樹」の字が当てられたそうです。

しかし、こうした古今東西の先人たちが語り継いできた月をめぐる物語も、1969年の「アポロ11号」の月面着陸によって全て妄想に過ぎないことが判明しました。月には餅つきウサギも、トホホな泥棒も、桂を伐る罪人もいないどころか、草木1本生えていないことが明らかになったのです。ただ、大気がなく風も吹かないはずの月面で星条旗がはためいているといった映像の不可解な点が指摘され、「アポロ11号の月面着陸の映像自体がヤラセだったのでは?!」という都市伝説が近年浮上しています。今も昔も、月をめぐるミステリアスな伝説は尽きないようです。

月を眺めるためだけに建てられた日本の名建築

日本の名建築

電灯もテレビもスマホもなかった時代、日が暮れた後に夜空に輝く月を観賞することは、いにしえの人たちの大切なエンタテインメントでした。日本には、そんな月を愛でるためだけに設計された建築が幾つかあります。その筆頭に挙げられるのが、京都の「桂離宮」です。桂離宮が建つ桂地方は古くから観月の名所で、地名は中国の「月桂」の故事に由来するそうです。桂離宮の中には「月見台」「月見橋」「月波楼」「浮月の手水鉢」「歩月」など、月に関する名称や装飾が多数見られます。『月と日本建築 桂離宮から月を観る』を著した学者・宮本健次氏によると、桂離宮の書院群のある方角は創建当時の中秋の名月の出と一致しており、建物の配置が月の運行と一体化しているのだとか。また、通常より床が高く、軒が短くなっているなど、少しでも長く月見が楽しめる設計になっているそうです。

同じく京都の「銀閣寺」も、正面にある「月待山」から昇る月の出を待つためにつくられた建物です。庭に敷石が敷かれたり、軒裏に銀箔が貼られることで、月光が反射して室内に入ってくる効果まで計算されていたのだとか。

桂離宮も銀閣寺も、月に対する情熱に驚かされますが、桂離宮の造営を切望した八条宮智仁親王も、銀閣寺の建立を夢見た足利義政も、政治的には不遇でした。満たされない思いへの癒しを美しい月に求めたのかもしれません。