養命酒ライフスタイルマガジン

健康の雑学

冬支度の雑学

金沢・兼六園で有名な「雪吊り」は「りんご吊り」が由来?冬眠中のリスはこっそり「食っちゃ寝ライフ」を送っている?! 今月は冬支度にまつわる雑学をご紹介します。

冬に備える「炉開き」の由来は陰陽五行説にあり?

寒くなっても、今は暖房を入れるだけですぐに温かくなる便利な時代です。しかし、電気もガスもなかった頃は、本格的な冬がやってくる前に、暖をとるための準備が欠かせませんでした。そのひとつである「炉開き」は、旧暦の10月に当たる亥(い)の月の亥の日に、囲炉裏(いろり)や炬燵(こたつ)に火を入れる準備をしたり、夏の間にしまってあった火鉢を出したりする風習です。囲炉裏にくべるたきぎや火鉢に入れる炭の調達も、寒い冬を乗り越える冬支度に欠かせない仕事でした。

「陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)」では「亥」は水の性質を持つとされ、火災の難を逃れると考えられていました。そのため、江戸時代の庶民は、亥の月の亥の日を選んで炉開きを行っていたのです。茶の湯の世界でも、炉開きの日を境に、畳の一部を切って床下に備え付けられた小さな囲炉裏を開きます。この日は初夏に摘んで寝かせておいた新茶を初めて使う日でもあるため、「茶人の正月」とも呼ばれます。
囲炉裏の原型は縄文時代からあったといわれ、100年ほど前までの農村では、暖房・炊事・照明の機能が三位一体となった囲炉裏は、常に一家団らんの中心にありました。今はスイッチひとつでどの部屋もすぐに快適に温まりますが、家族揃って過ごす時間は減っています。囲炉裏の周りに身を寄せ合って寒さをしのいでいた昔のほうが、ホッと心温まる時間が今よりずっとぜいたくにあったといえるかもしれませんね。

囲炉裏
囲炉裏

金沢・兼六園の「雪吊り」は「りんご吊り」が由来?

東北や北陸など雪深い地域では、雪が降る前に、積雪で樹木の枝が折れないように縄で枝を保護する「雪吊り」が行われます。雪吊りの代表的手法のひとつである「りんご吊り」は、木の幹の側に柱を立てて、その先端から枝々へと放射状に縄を張る方法ですが、これは、りんごの木の枝が果実の重みで折れないようにするための手法がもとになっているそうです。
日本三大名園のひとつ「兼六園」の名木・唐崎松の雪吊りは、金沢の冬の風物詩としてことに有名ですが、これもりんご吊りの手法が用いられています。雪吊りが必要な樹木には、松をはじめ、桜、ツツジ、アオキ、八つ手などがありますが、常緑の松は雪の重みがかかるので、特に入念な雪吊りが施されるのだとか。金沢の繁華街では、兼六園の雪吊りに合わせて、伝統工芸品の金箔をあしらった「金箔雪吊り」や「雪吊りイルミネーション」などもお目見えし、北陸の冬を鮮やかに彩ります。

ライトアップされた「兼六園」の雪吊り
ライトアップされた「兼六園」の雪吊り

急な積雪に見舞われることがある東京でも、雪吊りが見られる公園があります。そのひとつとして知られる新宿の「甘泉園公園(かんせんえんこうえん)」では、雪吊り職人が年々減っていることから、区の職員が手作りで設置しているそう。 デング熱騒動による園内閉鎖が11月に解かれた代々木公園でも、11月末に雪吊り作業の様子を一般公開するイベントが行われ、冬季は園内の方々で雪吊りが見られます。

冬眠中のリスはこっそり「食っちゃ寝ライフ」を送っている?!

自然の中で生きる動物たちも、冬が来る前に冬越しの準備をせっせと始めます。例えば、秋になるとリスがほっぺたをプックリ膨らませて忙しそうに働いているのは、冬眠前に温かい寝床をこしらえ、備蓄食料をしっかりキープしておくためです。札幌の円山公園にある原始林では、秋になると北海道やサハリンに生息するエゾシマリスが、木の実や落ち葉をほほ袋いっぱいに詰め込んでは、地中の巣穴に繰り返し運び込む様子が見られます。そんな大忙しのエゾシマリスの姿が見えなくなると、札幌に本格的な冬がやって来るそうです。ただし、エゾシマリスは冬眠中でも時々目を覚まし、秋の間に貯めこんでおいた備蓄食料を食べては栄養補給をする「食っちゃ寝ライフ」を送っているのだとか。

エゾシマリス
エゾシマリス

一方、クマはリスと違って冬眠中は断食状態になるため、冬眠前にがっつり過食してエネルギー源の脂肪を体内にたっぷり貯めこみます。冬前に、人里にクマが現れて騒動になることがありますが、土地開発などで山森が削られたりして、餌になる木の実が不足していることが一因ともいわれています。人里に出るクマは、環境破壊への警鐘なのかもしれませんね。