養命酒ライフスタイルマガジン

生薬ものしり事典

生薬ものしり辞典 36
蝉の抜け殻が生薬に?!「蝉退(センタイ)」

今回の「生薬ものしり事典」は、過去にご紹介した生薬百選より「センタイ(蝉退)」をピックアップしました。

発熱やじんましんにも効果あり

夏の季語でもある蝉時雨(せみしぐれ)は、暑い季節を象徴する風物詩のひとつ。毎日大合唱されるとうんざりするという人も多いようですが、真夏の暑い盛りに、わずか七日間ほどの生命を燃やして鳴き続ける蝉の声はとてもエネルギッシュです。
この季節には、蝉の抜け殻もよく見かけますが、これは「空蝉(うつせみ)」ともいわれ、晩夏の季語になっています。実は、蝉の抜け殻も生薬になるのをご存知ですか?
「えっ、頭上で大合唱しているあのアブラゼミが生薬になるの?!」と驚かれるかもしれませんが、生薬として使われるのは、スジアカクマゼミという蝉の幼虫の抜け殻です。主に朝鮮半島から中国、台湾、インドシナ半島北部に分布しており、21世紀になってから日本でも分布が確認されましたが、分布範囲は限られているようです。外見はクマゼミによく似た大型種ですが、翅(はね)の脈がクマゼミのように緑色ではなく、赤味がかっていることから、スジアカクマゼミという和名がつけられたようです。

蝉退(センタイ)

スジアカクマゼミの抜け殻を乾燥させたものは、「蝉退(センタイ)」や「蝉蛻(センゼイ)」と呼ばれる生薬として利用されます。見た目はちょっとグロテスクですが、スジアカクマゼミの抜け殻には、甲殻類や節足動物の外皮に多いキチン質が含まれており、風邪などの発熱や悪寒、じんましんなどの皮膚のかゆみ、咽喉炎や結膜炎などの炎症に効くといわれています。昆虫の抜け殻にも、こんな東洋医学的効果があるなんて驚きですね。