一見、睡眠とかかわりがなさそうな病気や不調にも
背後に睡眠の問題が隠れていることがあります。
ここでは睡眠と関連する主な病気や不調についてご紹介しましょう。
睡眠不足で免疫力が落ちるとかぜをひきやすくなるといわれるように、
免疫と睡眠は深い関係があります。
私たちには細菌やウイルスなどの病原から体を守る免疫システムが備わっています。
病原に感染すると、白血球は免疫細胞を活性化するサイトカインという物質をつくり出します。
この物質の中には病原を退治する作用だけでなく、眠りを誘発する作用もあることが分かってきました。
かぜをひくとだるくなり眠くなるのは、免疫が活性化している証明といえます。
そのためかぜやインフルエンザにかかった時には、眠る時間をしっかり確保することが大切です。
就寝中は自律神経のうち副交感神経が優位になり、血圧が下がりますが、
睡眠不足だと交感神経が優位になり、日中同様の血圧の高さになります。
また、睡眠不足は血糖値を下げるインスリンの働きを低下させ、血糖コントロールが悪くなります。
不眠の人はそうでない人に比べて高血圧の発症リスクは約2倍、糖尿病は約2~3倍といわれます。
さらに近年では、睡眠不足だけでなく、眠れないで悶々としている状態自体が、
長期的には高血圧や糖尿病のリスクを高めることが分かってきました。
不眠に適切に対処していくことが、生活習慣病の予防のためにも必要といえます。
睡眠時間が短くなると、肥満になりやすいことが数々の研究から報告されています。
睡眠が不足すると、食欲を増強させるホルモンであるグレリンの分泌が増えたり、
満腹を感じさせるホルモンであるレプチンの分泌が減少したりすることで、
満腹感が得にくくなり、過食傾向になりやすいのです。
睡眠時間と肥満の関係では、睡眠時間が極端に短い人が肥満のリスクが最も高く、
8時間以上と長い人もやや高く、7時間前後の標準的な睡眠時間の人が最もリスクが低いことが
分かっています。このことからも、健康のためには睡眠は適切にとるのがよいといえます。
不眠はうつ病の初期に多く見られる症状で、次第に気分の落ち込み、興味の減退など、
その他の症状が加わってきます。このため、うつ病の人が自分ではそれと気づかずに、
不眠を訴えて受診するケースも少なくありません。
また、ここ20年ほどの間に、不眠がうつ病のリスクを高めることが分かってきました。
不眠になった人は、うつ病になるリスクが約2倍といわれていますが、特に寝つきの悪さ(入眠障害)が
関係しているのではないかと考えられています。
うつ病の治療においては、抗うつ薬の投与と共に、不眠を改善することが第一方針とされています。