HOME > 特集記事 > 【2012年7月号】 日本の夏、カレーの夏!スパイスで暑さを乗り切ろう

日本の夏、カレーの夏!スパイスで暑さを乗り切ろう

一年中食べているはずなのに、夏になるとひときわ恋しくなるのがカレー。暑い季節はいちだんと美味しく感じられるものですね。夏休みのお昼、扇風機の風のなか家族みんなで楽しむ手作りカレー。暑さの緩んでくれない夕刻に、シンハービール片手に食べる辛い辛いタイ風カレー。蒸し蒸しして眠れない23時、思い出したように戸棚から取り出す夜食のレトルトカレー。いずれもまた、日本の夏の風物詩です。カレーを夏の季語にしてもいいのではないかと思いますが、それはさておき。

さて、このカレーは、実は夏場におすすめしたい食べ物なのです。といいますのも、カレーには多種多様なスパイスが含まれますが、このスパイスこそがまさに元気の源なのです。カレーの本場として知られるインドでは、五千年も前からスパイスが研究されており、体調に合わせてスパイスの配合を変えるなど、東洋医学でいうところの「医食同源」の料理としてカレーが食されています。食欲がなくなったり、胃腸が弱ったり、と体調を崩しがちな暑い季節には、じつにうってつけの料理なのです。

今号の元気通信はカレー特集です。いつものカレーをさらにヘルシーにするスパイスのコツや、カレー定番の“付け合わせ”に隠されたヒミツ、そして銀座の『薬膳カレー』実食レポートまで、どうぞたっぷりお楽しみください。読み終わるころには、なんだかカレーが食べたくなってきている、かもしれませんよ。




こんな時には、このスパイスを!いつものカレーにちょっと足して“夏を乗り切る”カレーにアレンジ

カレーには、ご存知のようにさまざまなスパイスが配合されています。カレーの本場・インドの家庭の台所にはズラリとスパイスが並び、料理のたびにすり鉢ですりつぶして活用していますが、日本ですと「市販のカレールゥ」を使うことが一般的ですよね。このルゥにも、実に数十種類のスパイスが配合されています。

一からスパイスの配合を考え、味を整えるには、かなりの知識と経験が必要となるもの。そこで今回は、市販のカレールゥで作る一般的な家庭のカレーに、代表的なスパイスを少々加えて体づくりに活かす方法をご紹介しましょう。

※以下文中で紹介しているスパイスの量は、カレー4人前に対するものです。



夏、体が火照りがちな時に「コリアンダー」「ナツメグ」

夏の暑さ対策で重要となるのは「汗を掻くこと」。汗は、体内にこもった熱を排出すると同時に、水分で皮膚表面の温度を下げる役割を果たします。カレーに入っている大半のスパイスに発汗効果があるのですが、その代表選手といえるのがコリアンダーやナツメグです。ただし、汗を掻くデメリットもあります。それは、健康維持に必要なビタミンやミネラルが汗とともに失われてしまうこと。そこで、カレーの具としておすすめしたいのが、ビタミン・ミネラルが豊富に含まれたナス、トマト、オクラ、パプリカなどの夏野菜です。夏野菜カレーにコリアンダーとスパイスをチョイ足しすると、バランスのよい一品となります。

【コリアンダー】
和漢名は「胡ずい子(コズイシ)」。タイ料理によく使われるパクチー(香菜)の種です。煮込む最中に、小さじ1杯程度入れましょう。マイルドさが増すと共に、ほんの少し苦味も備わり、さっぱりと後味のよいカレーに仕上がります。
【ナツメグ】
甘酸っぱい香りのナツメグはお菓子作りなどにも使われるスパイス。肉の臭みを消す効果もあります。火にかけると香りが強くなりすぎることがあるので、火を止める間際に小さじ2/3杯程度が適量です。辛みが和らぎ、フルーティーなカレーに仕上がります。


食欲がない体に「クローブ」「クミン」

夏の食欲不振は、冷たいドリンクの飲みすぎなどによる胃腸機能の低下や、暑さによる自律神経の乱れなどが原因です。それらを改善する手助けをしてくれるのが、カレーに含まれるスパイス。特にクローブやクミン、ガーリックやレッドペッパー(唐辛子)は食欲増進効果の期待できるスパイスとして知られています。具としては、お肉ならビタミンB1を豊富に含む豚肉がおすすめ。また、酸味のもとであるクエン酸を多く含むパイナップルにも食欲増進効果が期待できます。

【クローブ】
甘いバニラのような香りと独特の苦味も備わったスパイス。口臭予防にも効果が期待できます。苦味の刺激を際立てないために、カレーには煮込み始めの段階から小さじ1/2程度入れましょう。甘さが程よい隠し味となります。
【クミン】
香りが強く、いわゆる“カレーのにおい”はクミンの香りといっても過言ではありません。辛さと苦さを兼ね備えた独特の薬っぽさが前面に出ないように、煮込み始めの段階から小さじ2/3〜1杯程度、加えておきましょう。


夏バテで調子がイマイチな胃腸に「ターメリック」「カルダモン」

汗を掻くことによって、体内の塩分が失われがちになります。そうなると、消化を促す胃酸の分泌も減り、そこに追い打ちをかけるように冷たいモノを食べる…すると胃がもたれ、下痢などの症状が出やすくなるのです。胃腸の働きが低下すると疲れやすくなり、夏を乗り切るための体力も落ちてしまいます。そこでカレーに少し加えたいのは、ターメリックやカルダモンなどのスパイス。具としては、胃腸に負担をかけずに健胃整腸・消化促進をもたらす豆類がぴったり。胃の粘膜の元となるタンパク質を多く含むタマゴもおすすめです。消化によい温泉タマゴや半熟タマゴを乗せて食べるとさらにパワーアップ!

【ターメリック】
和漢名は「ウコン」。なんとも食欲をそそるカレーの黄色は、このターメリックによるものです。カレーを煮込んでいる途中に、小さじ1/2〜1杯程度加えましょう。
【カルダモン】
“スパイスの王様”と呼ばれる高級食材。古代インドでは健胃薬としても重宝されていました。カレーには、火を止める間際に小さじ1/2杯程度が適量。さわやかな香りが広がり、カレーの美味しさも引き立ちます。


インドの家庭では、意外に「ナン」を食べない? 日本でカレーといえばライスと一緒に食べることが一般的ですが、インドでは(ライスも食べるものの)ちょっと勝手が違います。よく日本のインド料理店で、小麦粉を発酵させた「ナン」を提供していますが、実はインドの一般家庭ではほとんど食べられていません。ナンを焼く釜が家庭にないことも一因でしょう。そこで一般的に食べられているのが「チャパティー」と呼ばれるもの。ナンと違い、全粒粉を使ってフライパンで焼きあげます。全粒粉は、胚乳だけを用いる通常の小麦粉と比べ栄養価が高く、食物繊維や鉄分、ビタミンB1の含有量も多い優良食品です。




実食レポート 夏のデトックス!野菜&ハーブたっぷり「薬膳カレー」

星の数ほど、というと言い過ぎですが、それでもたくさんのカレーのお店がある東京。カレーに一家言持っているぞ!というようなカレーマニアの方でなくとも、あちらこちらのカレー屋さんを食べ歩く楽しみがあります。今号の特集でもどこか一店、ということで、「元気通信の誌面にぴったりのカレーを見つけました!」とK記者が報告してきた東京・銀座の「野菜のデトックス薬膳カレー」をご紹介します。花の銀座のカレーは、果たしてどんな味がするのでしょうか? それではK記者の実食レポートをご覧ください。



編集部員のKです。「元気通信」2012年4月号で“世界一くさい”食品を食べた者です。あれは大変な取材でした。しかし今日は、テレビや雑誌等にもたびたび登場している話題のカレーを食べられるとあって、大いに楽しみでお腹を空かせてきました!(※編集部員M註:本当は品川にあるという超極激辛カレーも食べに行ってほしかったんだけど…。)



東京は銀座一丁目駅からほどなくのところにあるビル。その9階に上がると、今回訪問するお店「銀座カフェ・ビストロ」があります。実はこの「銀座カフェ・ビストロ」、隣接する「ウェルタス銀座クリニック」(医療法人永滋会の美容・内科部門)がプロデュースしているんです。現代人の乱れがちな食生活をサポートすることで健康に貢献したい、という考えからビストロをオープンさせたのだとか。クリニックがプロデュースする飲食店、というところに興味をひかれます。

いざ、店内に入ってみるとなんともオシャレ! Tシャツじゃなくて、もう少しマシな恰好をしてくるべきだったかなと恐縮していると「全然構いませんよ。“ビストロ”ですから気軽に、カジュアルに楽しんでくださいね」と、マネージャーの永井咲有さん。ありがとうございます。さっそく、お目当ての「野菜のデトックス薬膳カレー」を注文しました。



しばらくして運ばれてきた薬膳カレーとご対面です。まず圧倒されたのが、彩りの美しさ!豆類、カボチャ、ブロッコリーにたまねぎ、れんこん、パプリカ…野菜の量は半端じゃありません。チーズやエビも良いアクセントになっています。見た目がいわゆるカレーライスとは少し違う感じがしますが、いざ一口食べてみると…うむ!スパイスの香りと味、まごうことなきカレーです。ただ、カレー特有のねっとりしたルゥの感覚というよりは、かなりサラリとしています。

油や塩、砂糖を極力抑え、特製ソースをかけて食べる!!
「やはり美味しさもさることながら、健康をつかさどるカレーに仕上げることが主な目的でしたので、油や塩、砂糖は極力使っていません。もちろん、固形のルゥではなくスパイスを配合して作っています。そのため最初は“これがカレー!?”と驚かれる方もいらっしゃいますね。そこで、カレーに2つのソースを添えて提供しています。このソースを適宜加えながら、楽しんでいただければと」。(永井氏)

なるほど。私たちが考えるカレーは、“油ありき”の料理。油を極力控えると、こうした食感になるわけですね。つづいてゴマ風味のソースと、バルサミコ酢風味のソースを少しかけて食べてみますと、これがカレーにしっかりと合います!ブロッコリーの食感とカレーの風味、ソースのうま味が絡み合う感覚です。

ちなみに、ご飯もデトックス仕様。黒米、玄米、胚芽米に十穀米が配合されているうえ、「炊き込む段階でこんにゃくを加え、ご飯部分のカロリーを抑えている」とのこと。食べた感じではまったくわかりませんでした。ちなみにルゥも、ピューレ状にした野菜やワインを煮込んで作っているそうです。

永井さんのお話を聞きながらモグモグ食べていると、根菜など“噛む”ことを促進させる食材がたくさん入っていることもあり(食物繊維もたっぷり!)、お腹が満たされてきました。お肉が入ってなくても、かなりの満足度です。

あ、そうだそうだ、ターメリックやコリアンダー、レッドペッパーなど、カレーでお馴染みのスパイス以外に、キッカやツルドクダミ、チンピ、エゾウコギ、カンゾウなどの東洋ハーブや、タイム、セージ、レモンバーム、ローズマリー、エキナセアなどの西洋ハーブも、仕入れや季節状況に応じつつカレーに加えているとのこと。なにゆえこうしたレシピになったのか、配合を担当した漢方生薬認定薬剤師・伊師頼子氏に聞いてみました。

「女性のお客様が多いのではと考え、デトックス、リフレッシュ、美肌アンチエイジング、疲労回復、この4つのコンセプトに合わせたブレンドを心がけました。同時に、独特な味や苦味、クセを極力抑えて食べやすくすることにも注力しましたね。また、病院ではありませんから、当然ながらお薬のように回数を制限することはできません。極端に言えば毎日でも来店されるお客様がいるかもしれません。そのような場合にも対応できるよう、体に優しいブレンドにしています。」(伊師氏)

なるほど、ハーブが確かにうまくカレーの味に隠されていて、苦味などはまったく感じませんでした。

ボリュームも味もばっちりで、カラダに良さそうなハーブがたっぷりの薬膳カレー。この夏、元気も美も授かりたい方は、ぜひ足を運んでみてはいかが?





カレーには欠かせない あの定番の”脇役”たちも健康に一役買っていた!!

立役者のカレーライスとともに、ちょこんと食卓に現れる“脇役”たち。見た目や味の点だけではなく、健康の面からでも実は大事な存在であることをご存知ですか? せっかくですから、脇役たちも“夏仕様”にして、カレーからさらに元気をもらいましょう!

【付け合せ】夏は“酸っぱいらっきょう”で元気に!

らっきょうや福神漬けなど、カレーの付け合せにもいろいろとありますが、どちらかというと夏はらっきょうをお勧めしたいところ。らっきょうには血の巡りを向上させ、食欲増進、消化吸収などの効果が期待できます。疲労回復のビタミンと呼ばれるビタミンB1の吸収率を高める効果もあります。ビタミンB1を多く含む食品といえば豚肉。豚肉カレーの付け合せにはぜひとも活用しましょう。
さらに酢漬けのらっきょうなら、なおよし。酢に含まれる酢酸は新陳代謝を促すため、疲労回復やダイエットにも効果的。抗菌・防腐作用もあるので、食べ物が傷みやすい夏に最適です。


【飲み物】水よりも牛乳やヨーグルトドリンクを!

夏の辛いカレーには、キーンと冷えたお水を飲みたくなるもの。しかし、冷えたお水はせっかくカレーで活性化した胃腸の機能を落としてしまいかねません。氷をいれず、常温に近い水にするなどの心がけが大切です。 また、辛味は生理学的には「味覚」ではなく、ヒリヒリする「痛覚」に分類されます。そのため、水で洗い流すよりも、脂肪分を含む飲み物で舌や口内に膜を張ってガードするほうが、辛味を抑えるには効果的。インドの人びとが、カレーといっしょに「ラッシー(ヨーグルトドリンク)」や「チャイ(ミルクティー)」を飲むことは、理に叶っているといえます。


【サラダ】体調を考えつつ、体を冷やす生野菜も適度に

生野菜は体を冷やす作用があります。クーラーで冷えたオフィスで過ごし、ダイエットしているから昼食は生野菜のサラダだけ…というのはもってのほか。代謝が落ち、ダイエットにも逆効果です。
しかし、体を温めるスパイスをふんだんに使ったカレーと一緒に食べるのであれば、さほど気にする必要はありません。また、野菜には豊富な酵素が含まれています。酵素は、ビタミンやミネラルを体に摂りいれるための大切なサポート役。熱に弱いため、生野菜のほうが加熱した野菜よりも豊富に酵素が含まれています。体調や環境と相談しつつ、適度に生野菜を食べるよう心がけましょう。





インドで生まれ、イギリスを経由して日本にやってきたカレー。国民食と言っても過言ではないほど日本に定着したのは、単に美味しいからではなく体にも良いから、なのかもしれませんね。

さて、夏も目前。今日はさっそく、お家でカレーライスはいかがでしょうか。もちろん、スパイスの一工夫も忘れずに…。