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体をケアする生活の仕方=「養生」の知恵
江戸時代の儒学者である貝原益軒(かいばらえきけん)が記した『養生訓(ようじょうくん)』では、養生とは、「変(へん)」に備える術であると述べてあります。「変」とは、気候の変化、仕事や人間関係など社会環境の変化、年齢の変化など、あらゆる変化を含んでいます。
現代に生きる私たちにも、常に様々な変化がつきまとっています。江戸時代と比べればはるかに便利な時代ですが、人間が「変」と共に生きている点は変わりません。古くからの養生の知恵が現代に活かされる理由は、そこにあるのです。
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四季の変化 -
年齢の変化 -
環境の変化
「変」への調整力を維持し、さらには高めていくことが養生のポイントです。そのカギを握るのは「気」です。気を整えるために毎日の生活で心がけたいのが、「睡眠」「運動」「食事」「感情」です。

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その不調、「未病」ではありませんか?
何となく体がだるい、肩こりがつらい、食欲がない……。そんな不調を抱えていませんか。東洋医学ではこういった状態を「未病」と呼び、治療の対象となります。未病を解消することは、病気を防ぐことにもつながります。
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自分に適した睡眠時間で質のよい睡眠を
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睡眠は「気」を補うものです。睡眠がうまくとれていないと、気をすり減らし、老化の速度を早めてしまいます。
人によって必要な睡眠時間は異なりますが、一般的には、なるべく0時前に寝床に入り、最低でも6時間は寝るのがよいとされています。長ければ長いほどよいというものでもなく、ほどほどが大切。「十分に休息できた」という感覚を大事にしながら、自分に適した睡眠時間を見つけてください。
その際、睡眠の質も重要です。就寝の3時間前までには食事を済ませ、食べ物が消化してから寝るのが安眠の秘訣です。また、寝る前の習慣として、「腎(じん)」の気を補うツボ押しがおすすめです。
夜に質のよい睡眠がとれない時は、昼寝を活用して気をチャージしましょう。ただし、夜の睡眠に影響がないよう30分程度がおすすめ。気分のリフレッシュや、その後の集中力アップにも効果的です。 -
■「腎」の気を補うツボ(図)
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湧泉(ゆうせん)
足裏の中央よりやや上にあるツボ。指を内側に曲げた時にへこむ
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腎兪(じんゆ)
へその真後ろにある背骨から指2本分外側にあるツボ
長時間の昼寝は夜の睡眠に影響がでてしまう。
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楽しいことのあとは気の調整を
旅行後、心はリフレッシュしたのに体がぐったりしている、という経験はありませんか。楽しい行事である旅行も、体にとっては「変」(=変化)。体は普段よりも余計なエネルギーを使っています。ですから、旅行後はしっかりと「気」を調整することが必要です。旅行の予定をたてる際は、旅行期間プラス少なくとも同じ期間の旅行後の休息を踏まえ、余裕をもって日程を組みましょう。
軽い運動を毎日の習慣にする
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運動して汗をかくと「気」の巡りがよくなります。血液循環を促し、体内の老廃物を排出する効果もあります。貝原益軒 (かいはらえきけん)の『養生訓』では、「日々朝晩運動すれば、鍼や灸をしなくても、飲食や気血は滞ることなく、病気にかからない」としています。
ただし、中高年以降になると運動とのつき合い方に注意が必要です。運動するにはエネルギー(気)が必要。このことを考慮して、無理のない運動を行うことが大切です。これを怠ると、健康のために始めた運動で気をすり減らし、かえって老化を進めてしまうということにもなりかねません。
理想的な運動養生としては、ウォーキングや犬の散歩などの軽い運動を、汗が爽快に感じる程度まで毎日行うこと。ストレッチやヨガも有効です。毎日が無理な場合は週1日からでもよいので行い、徐々に頻度や程度を上げていくとよいでしょう。 -
軽い運動から始めてみよう。
血の巡りをよくする
ストレッチ。
血液循環をよくするのでストレッチも有効。起床時や寝る前、入浴中に行うとよい。
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床に座り、足首を前方にそらせながらゆっくりと力いっぱい膝を伸ばす。腿に力を入れて5秒間静止。これを10回繰り返す -
片方の膝を曲げて、両手で抱え5秒間静止。反対の膝も同様に行う。5回繰り返す。
食養生で腎の働きを補う
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食事は「気」を補うものです。その役割を果たすためには食事面での養生、「食養生」が大切です。食養生のポイントは、 まず 「旬の食材をバランスよく摂ること」です。旬の食材には季節の変化に心身が順応する効果が期待できるため、食養生の方法として理に適っています。また、「夕食は寝る前の3時間以上前に」「食べる量は腹八分目」も食養生の大切なポイントです。
さらにここでは、加齢で衰えた「腎」の働きを補う食養生についてもご紹介しましょう。
腎の働きを補う食材は、山いもや納豆などの「ネバネバ食品」、黒豆や黒ごまなどの「黒い食材」です。加えて、塩辛い味覚が腎を補うとされていますが、塩分の過剰摂取は体に害を及ぼすので、海藻類や貝類などの「海の食材」を活用するとよいでしょう。こういった食材を日々の食生活に取り入れて、「腎」を養生することは、加齢に伴う老化の速度を緩めることにつながります。 -
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薬酒を飲むことも養生のひとつ
古くから中国では、「生薬」をお酒に漬け服用していました。生薬とは、植物をはじめ、動物や鉱物などの天然産物由来の薬物のことで、乾燥させたりして漢方薬に用いられています。
生薬は単体でも効能がありますが、複数の生薬を組み合わせることで効能の幅を広めたり、強めたりといった生薬の協力作用が期待できます
生薬はお酒に漬けることで、有効成分が速やかに吸収され、効率よく体を巡ります。この「生薬+お酒」の効果を利用したのが「薬酒」です。生薬の中には熱に弱いものもありますが、それらはお酒に漬けることでその薬効が抽出でき、お酒の力によって味わい深く、飲みやすくすることができます。また、お酒は感情を和らげ、リラックスする効果が期待できることもあり、これも薬酒の利点といえるでしょう。薬酒を生活の中に取り入れることは、日々の養生にプラスの効果をもたらします。 -