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怒りの雑学

怒りの雑学「怒りのあまりキレるのは…?」「神話の神々は人間顔負けの怒りん坊!?」「怒りのあまり憤死した歴史上の人々」――今月は怒りにまつわる雑学をご紹介します!

怒りのあまりキレるのは…?

怒りのあまりキレるのは…?


怒りを表す言葉はとてもバラエティーに富んでいます。例えば毛髪が逆立つほど怒り狂うさまを「怒髪天を衝く(どはつてんをつく)」と言いますが、これは中国前漢時代の書『史記』に出てくる故事に由来します。目上の人を激怒させることを意味する「逆鱗(げきりん)に触れる」という言葉も、中国戦国時代の書『韓非子(かんぴし)』の故事に由来します。逆鱗とは竜のあごに生えている鱗で、この鱗に触れると竜の怒りを買って殺されるのだとか。逆鱗にはなるべく触れたくないですね。

古い言い方で、怒りっぽい人を「癇癪(かんしゃく)持ち」といい、何かにイラっとすることを「癇(かん)にさわる」「癪(しゃく)にさわる」などと表現します。医学的な病名ではありませんが、「癇」は全身が発作的にけいれんすること、「癪」は胸や腹などが激しく痛むことです。

昨今は、怒ることをよく「キレる」と言います。これは、怒りに堪える度量を袋に例えたことわざ「堪忍袋の緒が切れる」に由来するという説と、激怒した時に浮き出た血管が切れることに由来するという説がありますが、後者のほうが有力といわれています。額に浮き出た血管を十字型やY字型でデフォルメした「怒りマーク」(「怒筋(どすじ)」とも呼ばれる)は、マンガやアニメ特有の怒りを表す記号「漫符(まんぷ)」として知られており、スマホなどの絵文字にもなっています。血管がぶちキレるほど怒りを炸裂させないようにしたいですね。

神話の神々は人間顔負けの怒りん坊!?

古今東西、神話に登場する神々は、意外と怒りん坊です。例えば、旧約聖書『創世記』では、アダムとイブが禁断の果実を食べたことが神の怒りに触れ、エデンの園を追放されてしまいます。同じく旧約聖書に出てくる「バベルの塔」も、人間の傲慢さに怒った神によって破壊されたと伝えられています。

「日本神話」に登場する神々も、怒りん坊エピソードのオンパレードです。太陽神アマテラスが天岩戸(あまのいわと)に閉じこもって世界が闇に包まれてしまった有名な「天岩戸伝説」も、弟のスサノオの度重なるやんちゃぶりにキレたのが原因といわれています。アマテラスの両親は国造りに貢献した男神イザナギと女神イザナミですが、イザナミは火の神を生んだ時に大やけどを負ってしまいます。愛妻を亡くして逆上したイザナギは、わが子である火の神を殺してしまいます。さらに怒りの悲劇は続き、イザナギは亡き妻イザナミ恋しさに黄泉の国にまで向かうのですが、腐りかけた醜い姿を見られたことに逆ギレしたイザナミに殺されかけて決裂してしまうのです。神話にはおおらかな神々もたくさん登場しますが、神様はひとたびぶちキレると人智を超えた怒り方をするようです。

怒りのあまり憤死した歴史上の人々

あまりに怒り過ぎると、頭にカーッと血が上り、心臓がバクバクして身体によくないといわれます。実際、怒りが引きがねとなって身体に変調を来して「憤死」してしまった人が少なからずいます。有名なのは「カノッサの屈辱」(11世紀)で知られるローマ法王グレゴリウス7世。法王は屈辱を与えた神聖ローマ皇帝ハインリッヒ4世に復讐されてローマを追われ、南イタリアで憤死したと伝えられています。

日本でも、奈良時代に桓武天皇の弟の早良親王が藤原種継を暗殺した疑いで淡路に流される途上、怒りのあまり絶食して憤死したといわれています。江戸末期の幕臣・水野忠徳も、徳川慶喜への進言がばっさり退けられ、隠居先で失意のあまり憤死したといいます。

古代中国の歴史を元にした小説『三国志演義』に至っては、登場人物の多くがこれでもかと憤死します。諸葛亮(しょかつりょう)を恨んで血を吐いて憤死した武将・周瑜(しゅうゆ)、同じく諸葛亮に舌戦で言い負かされて憤死した王朗(おうろう)、上司と対立して憤死した陸遜(りくそん)など、枚挙にいとまがありません。あまりカッカし過ぎないようにくれぐれも気をつけましょう。