養命酒ライフスタイルマガジン

健康の雑学

歩きの雑学

「昔の日本人がしていたナンバ歩きって?!」「イヌやネコはつま先立ちで歩いている?」「闘う最新二足歩行ロボットたち」 ——今月は、歩きの雑学をご紹介します。

昔の日本人がしていた「ナンバ歩き」って?!

歩くときは、右足を前に出すと、右手は後ろに、左足を前に出すと、左手は後ろになるのが一般的です。しかし、古武術研究家の甲野善紀の説によると、江戸時代以前は、右足を前に出すと、右半身(右肩と右腰)も前に出る歩き方が日本人に広く浸透していたそうです。この歩き方を「ナンバ歩き(ナンバ走法)」といいます。「ナンバ」の語源は諸説あり、難儀な場所では上体をひねらず、同じ側の手足を同時に動かすことから「灘場歩き」と呼ばれるようになったという説などがあるようです。実際に江戸時代の浮世絵や大名行列の絵などには、ナンバ歩きと思しき動きをしている人の姿がよく描かれています。

現代においても、日本の伝統武術や陸上競技などに、ナンバ歩きの動きが応用されることがあります。2003年の世界陸上パリ大会で、陸上トラック競技で日本人初の銅メダルに輝いた末続慎吾選手は、200m走のラスト50mでナンバ歩きの動きを取り入れたことで、手足のタイミングが合って最後まで走り切れたと語っています。

ちなみに、運動会でおなじみの「ムカデ競走」でも、ナンバ歩きのように左右の手足を同時に動かして前進しますが、実際のムカデはそんな歩き方はしません。複数の足がウェーブをするように巧みにタイミングをずらしながら前進しています。

イヌやネコはつま先立ちで歩いている?

四足歩行のほ乳類の場合、右前足と左後足、左前足と右後足が同時に着地・離地する歩き方を「斜対歩(しゃたいほ)」といいます。一方、右の前足と後足、左の前足と後足を同時に動かす歩き方を「側対歩(そくたいほ)」といいます。ウマは斜対歩ですが、ゾウやキリンは側対歩です。
足の裏の付け方によっても、歩き方に違いが見られます。

ヒトやクマなど、地面に足の裏を接触する歩行スタイルを「蹠行性(せきこうせい)」といいます。
イヌやネコなど地面に指だけを接触する歩行スタイルを「指行性」(しこうせい)」といいます。
ゾウやウマなど、地面にひづめを接触する歩行スタイルを「蹄行性(ていこうせい)」といいます。

「あれ?イヌやネコは肉球をぺたぺた地面に付けて歩いているのでは?」と思われるかもしれませんが、肉球は指で、かかとは足が後ろに折れている箇所にあるので、実はイヌやネコはいつもつま先立ちで歩いているのです。イヌとネコの歩き方にも違いがあり、イヌは肩幅分だけ足跡が左右に広がりますが、ネコは足跡が一直線になります。ファッションモデルが細いランウェイを一直線に歩くスタイルも、ネコにちなんで「キャットウォーク」と呼ばれます。特に女性モデルは、左右の足が交差するように歩くので、ネコのように腰がセクシーに揺れて優雅に見えるのです。

キャットウォークのモデル

闘う最新二足歩行ロボットたち

現代では人工知能「AI」を搭載したロボットの研究が進んでいますが、ロボットの世界で世界初の二足歩行をしたのは、1960年代末~1970年代始めに早稲田大学の加藤一郎教授らの研究チームが開発したロボットでした。日本で二足歩行のロボット研究が盛んなのは、手塚治虫の漫画『鉄腕アトム』や藤子・F・不二雄の漫画『ドラえもん』など、人間と仲良く共存するロボットキャラクターの影響が根底にあるといわれています。

近年では、国内で『ROBO-ONE』という二足歩行ロボットの格闘技大会も開催されています。2017年には同大会初の試みとして、人が一切操作しない完全自律型の二足歩行ロボット同士が、パンチや投げ技を繰り出す迫力のバトルが繰り広げられたようです。

一方、海外で産業や軍事用に開発されている最新二足歩行ロボットは、一段とワイルドな展開を見せている模様です。ロシアでは、映画の『ロボコップ』ばりに二丁拳銃をバンバン撃ちまくる人型ロボットが登場したようです。またアメリカでも、雪道や林を器用にテクテク歩いたり、重い荷物をタフに運びまくる二足歩行の人型ロボット「Atlas」の最新映像が一般公開され、話題を呼んでいます。ただ、「Atlas」の高い機能を確認するために、ロボットが持ち上げた荷物を人がわざと叩き落としたり、ロボットを後ろからド突いて転ばせたりする実験映像には、「かわいそう!」「いじめないで!」という声が上がっています。たとえ機械とわかっていても、二足歩行の人型ロボットを見ると、人はどうしても感情移入してしまうようです。
https://www.youtube.com/watch?v=zB5051DN5YI

イラスト