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植物を育てることで元気になれる「園芸療法」とは?
芳しい花と緑の季節が到来!植物に触れたり、花の香りをかぐだけで元気をもらったり、心が軽くなることはありませんか?実は植物に触れることで、心身にさまざまな作用があるのです。そこで今月の元気通信では、五感に作用する植物や園芸作業を活かした「園芸療法」や、この時季に楽しめる花の名所&イベントをご紹介します。
植物を育てることで心身が生き生き「園芸療法」のススメ
植物を育て、植物に触れることで、心身が生き生きしてくる——そんな植物の力を活かした「園芸療法」を実践している澤田みどり先生に、「園芸療法」のさまざまな効果について伺いました。澤田先生は子ども時代、タンポポなど野の花を摘んで祖父母のお見舞いに行くと、祖父母だけでなく出会う人も花を見て笑顔になることから、植物が持つ優しい力に気付いたそうです。
NPO法人日本園芸療法研修会代表理事
澤田 みどりさん
日本園芸療法学会理事、恵泉女学園大学人間社会学部准教授、兵庫県立淡路景観園芸学非常勤講師、上智社会福祉専門学校非常勤講師。1989年に園芸療法を学びにアメリカ留学。「アメリカ園芸療法協会」の当時の会長ナンシー・スティーブンソン氏に師事。1995年に園芸療法研修会(後にNPO法人日本園芸療法研修会に改名)を設立。日本初の園芸療法実践者育成コースを開設し、園芸療法の普及と教育に努める。
園芸は心にプラス感情をもたらす
種まきや水やりなど、植物を世話して成長を助ける中で、「自分の手で育てている」という自尊心や充実感が生まれ、さらに「大きくなあれ」「もうすぐ咲くかな?」という期待感や、「咲いた!」「実がなった!」という達成感・満足感が得られるなど、園芸は心にさまざまなプラス感情をもたらします。
主役は植物ではなく、植物を育てる人
園芸作業の主役は植物ですが、園芸療法は植物を育てる人が主役です。園芸療法の目的は植物をうまく育てて収穫を得ることではなく、植物を育てる体験を通して心身の機能を改善し、リハビリテーションや治療、福祉、教育、レクリエーションに役立てていくことです。園芸療法の先駆は英米で、1972年に「アメリカ園芸療法協会(AHTA)」が、1978年に「イギリス園芸療法協会(現Thrive)」が発足。日本に園芸療法が導入されたのは1990年代初めで、現在は園芸療法を学ぶ学校や団体も増え、高齢者施設や障害者施設などで広く活用されています。園芸療法士は、育てる人が自発的に植物と関わるように見守りながら支援します。
植物の楽しみ方はいろいろ!
花が咲いたら、花壇や鉢植えで観賞するだけでなく、切り花にして部屋に飾ったり、パンジーや忘れな草などは押し花にしたり、マリーゴールドは草木染にもできます。また、収穫した野菜や果実は料理して食べたり、サツマイモは長いつるを使ってリースをつくるなど、植物の特徴を生かしてさまざまな方法で楽しむことができます。また、枯れた後も、土にまいて次の植物を植える際の肥料に再利用できます。
園芸療法による効果を暮らしの中へ
園芸療法には「生活不活発病(体を動かさない状態が続くことで心身の機能が低下する病気)」を防ぐ効果もあるといわれ、認知症予防や介護予防にも利用されています。日々の暮らしの中に、園芸療法の効果を取り入れてみましょう。
【効果1】五感を刺激
屋外で植物を育て、さらに育てた野菜をいただくことによって、視覚・触覚・嗅覚・聴覚・味覚すべてをフルに刺激されるので、五感を快くリフレッシュさせることができます。
【効果2】感覚をひらく
人は心に傷を抱えていると、それ以上傷つかないように心を閉ざしてしまいがちです。しかし、植物は陽光や雨水があれば独立栄養で自然に育つので、プレッシャーを感じることもなく、その伸びやかな成長に触れることで感動し、心の傷が癒やされたり、閉ざしていた感覚を自然にひらくことができます。
【効果3】季節感の覚醒
四季の移ろいに呼応して、そのときどきに花開き実る旬の植物を育てることによって、鈍っている季節感が目覚め、時間感覚を取り戻したり、過去の記憶を思い出すきっかけにもなります。また、「今週はまびきしよう」「来月は収穫しよう」といった計画的な行動が、日々の暮らしに励みや楽しみをもたらします。
【効果4】コミュニケーション活性化
「芽が出たね!」「つぼみが膨らんだよ!」などと、高齢者も家族や介護者も、植物の成長にわくわく共感し、互いに言葉数や笑顔が増え、会話が盛り上がり、表情も自然と明るくなり、積極的に人と関わるようになります。
【効果5】運動促進
土をいじったり、種をまいたり、水やりをしたり、まびきをしたり、雑草を抜いたり——。植物を育てる際には、自然と屋外で手足を動かすので、普段、運動不足になりがちな人も無理なく運動できます。適度な運動によって、新陳代謝が高まり、快眠導入をもたらします。
【効果6】食欲増進
自分の手で育てた季節の野菜は、とりわけ美味しく感じます。園芸作業には食べる意欲を引き出す力もあるため、食欲が低下している人でも、自分で育てた野菜は進んで完食する場合が多く見られます。
コラム1)シニアの園芸におすすめ「レイズドベッド」
「園芸は好きだけど、地面にかがむ姿勢がつらい…」そんな人には、床面を底上げした花壇「レイズドベッド」がおすすめです。かがまなくても植物を手入れできるので、ひざや腰に負担をかけたくない方や、車椅子の方も気軽に園芸が楽しめます。レイズドベッドをつくれるDIYキットなども市販されています。
コラム2)この季節におすすめの植物は?
4月末のこの時季は、キュウリ、ピーマン、ナス、トマトなどの夏野菜の苗を育てるのに適しています。また、サトイモは5月初めに、サツマイモは5月末~6月に植えると、夏の間にどんどん育って、10~11月の実りの秋に収穫期を迎えます。いずれも栽培が比較的簡単で、深めの野菜用プランターがあればベランダでも栽培できます。軽く通気性がよいフェルトプランターもおすすめです。夏はベランダの床が熱くなって根を傷めるので、風呂用のスノコなどを敷いて、直に置かないようにしましょう。
GWに楽しみたい!全国のフラワースポット
花はその種類によって、心身に作用するさまざまな香り成分が含まれています。例えばバラやラベンダー、ゼラニウムには、リナロールやゲラニオールといった香り成分が含まれており、匂いをかぐだけで副交感神経を優位にする、ストレスや不安を軽減するなどの効果が期待できます。GWは旬の花々が香る全国の花スポットでリフレッシュを!
花 SPOT1
【東京】旧古河庭園「春のバラフェスティバル」
旧古河庭園は、大正ロマンの香り漂う洋館を背景に、約90種180株の華やかなバラが咲き誇るのが魅力の、洋風庭園を備えた都内でも希少な庭園。5月9日~6月7日には、見頃を迎えるバラを堪能できる「春のバラフェスティバル」が開催されます。バラの香りには女性ホルモンを活性化させる働きがあり、若返り効果も期待できるので、おすすめです。
花 SPOT2
【長野】養命酒 駒ヶ根工場 健康の森「芍薬フェスタ」
南アルプスと中央アルプスを背景に広がる養命酒のふるさと駒ヶ根工場。5月末~6月上旬には、エントランスの四季咲きの丘に約3000株の芍薬が開花し、毎年大人気の「芍薬フェスタ」が開催されます。芍薬にはバラや菊と同じ香り成分が含まれているので、菊のような清々しい香りやバラのような甘い香りが楽しめます。
花 SPOT3
【富山】砺波チューリップ公園「となみチューリップフェア2015」
北陸新幹線開通で沸く富山県砺波市はチューリップ栽培で知られる街。4月23日~5月6日に開催されるチューリップフェアでは国内最多650品種・250万本のカラフルなチューリップが北アルプスの雄大な山々を背景に咲き誇ります。チューリップは香りがあまりないイメージがあるかもしれませんが、リフレッシュ効果のある爽やかな香り成分リモネンやユーカリプトールが含まれた品種もあります。
となみチューリップフェア2015
花 SPOT4
【埼玉】羊山公園「芝桜まつり」
埼玉県秩父市を見晴らす羊山公園にある約18,000m2の広大な「芝桜の丘」には、4月中旬~5月上旬をピークに、鮮やかなピンクや白のグラデーションに彩られた40万株もの芝桜の花じゅうたんがお目見えします。甘い香りに包まれた園内では、4月15日~5月6日に「芝桜まつり」が開催されます。
芝桜の丘(羊山公園)
花 SPOT5
【茨城】国営ひたち海浜公園「みはらしの丘」
茨城県ひたちなか市にある広大な「国営ひたち海浜公園」。市内で最も標高の高い「みはらしの丘」には、4月下旬~5月下旬にかけて、450万本の可憐なネモフィラが丘一面をブルーに染め上げます。五月晴れの青い空と海と丘が融け合ったヘブンリーな光景に、日頃のストレスも一気に吹き飛びます!
国営ひたち海浜公園
春から夏にかけて、まさに百花繚乱のこの季節に、公園や森林、フラワースポットに足をのばし、いろいろな植物に触れる機会を持ちたいですね。草花や樹木のフレッシュな息吹を五感で満喫して、心身の健康に役立てましょう。
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