養命酒ライフスタイルマガジン

生薬ものしり事典

生薬ものしり辞典 54
芥川龍之介にも詠まれた「ロウバイ」

花蕾を用いた鎮咳や解熱の生薬

早春に開花するロウバイは、観賞花として人家によく植えられています。中国原産のロウバイ科の落葉低木で、高さは2~4mほど。幹は重なり合って生えて分枝します。1~2月頃に葉が伸びるより先に、2cmほどの香りよい花が咲きます。花は枝の節に密接して下向きに付き、外側が黄色、内側が暗紫色で光沢があります。花が雪のように見えることから、ロウバイの属名は「chion(雪)」+「anthos(花)」です。花言葉は、先導、先見、慈愛、優しい心などです。

日本でのロウバイの植栽の歴史はそれほど古くなく、江戸時代後期に書かれた『本草網目啓蒙』には、江戸時代初期に日本に渡来したという記述があります。花の少ない時期に咲くため、冬の庭木として珍重されたようです。

中国から渡来したことから「南京梅」や「唐梅(カラウメまたはトウウメ)」と呼ばれることもあります。また、花弁の色から「黄梅花」と呼ばれたり、花弁の数が多いことから「九英梅」と呼ばれたり、旧暦の12月を意味する「臘月」の頃に開花することから「臘梅」と呼ばれるなど、多数の別名があります。

ロウバイ

「蝋梅や 雪うち透す 枝のたけ」
これは、明治時代の文豪・芥川龍之介の一句です。ロウバイが詩歌に詠まれるようになったのは江戸時代後期以降だったといわれています。「蝋梅」は漢名で、花弁が蝋細工のように見えることに由来しているようです。

薬用としては蕾が使われ、生薬名も「蝋梅」です。主に鎮咳や解熱、油に花を漬けたものを火傷に用いたとされています。

出典:牧幸男『植物楽趣』