養命酒ライフスタイルマガジン

生薬ものしり事典

生薬ものしり辞典 50
真珠を粉末にした贅沢な「珍珠(チンジュ)」

今回の「生薬ものしり事典」は、過去にご紹介した生薬百選より「珍珠(チンジュ)」をピックアップしました。

解熱、鎮痛、滋養強壮に役立つ生薬

真珠には特有の美しい光沢(テリ)があり、古今東西の人々を魅了し続けてきました。宝石の真珠として一般的なのは、見事な球状をした養殖真珠でしょう。

真珠を作る貝を「母貝」といいます。日本の海水養殖真珠の母貝は主に「アコヤガイ」ですが、他にも「クロチョウガイ」「シロチョウガイ」「アワビ」などが知られています。

また、淡水産真珠では「イケチョウガイ」「カラスガイ」「ドブガイ」などが知られています。

写真1はアコヤガイの養殖真珠を用いたブローチと、南洋パールがあしらわれた宝飾用ルースです。シロチョウガイに加え、クロチョウガイから採取されたものの一部が広義の南洋パールとして流通しているといわれています。

写真1.左:真珠のブローチ, 右:南洋パールのルース

写真1.左:真珠のブローチ, 右:南洋パールのルース

海辺のお土産店には、写真2のように貝の中にある真珠の採取体験ができる缶詰が売られていることがあります。

写真2.左:缶詰外観, 右:母貝と真珠

写真2.左:缶詰外観, 右:母貝と真珠

宝石として珍重される真珠は、別名「珍珠(チンジュ)」と呼ばれ、生薬としても利用されてきました。生薬としての真珠「珍珠」には、宝石としての価値が劣るものが粉末化されて用いられています。ただし、粉末化された生薬の「珍珠」は、100gあたり数万円で流通しており、宝飾用途でなくとも高価なものといえます。

真珠を生薬にする際、核となる貝殻片などを使った養殖品(有核真珠)の場合は、表面にある真珠層と呼ばれる部分を削って粉末化しますが、天然品の無核真珠の場合は、真珠全体を使うようです。

珍珠の主成分は炭酸カルシウム。他にタンパク質などが含まれています。

主な効能は、解熱、鎮痛、鎮静、滋養強壮などとされており、頭痛、目の病気、不眠症、口内炎などにも用いられています。

写真3.生薬用の中国産淡水真珠

写真3.生薬用の中国産淡水真珠

淡水真珠の母貝の1つであるイケチョウガイは、琵琶湖水系の固有種です。全国各地でイケチョウガイを使って水質改善と真珠生産を目的とした養殖が図られています。

養命酒製造の商業施設である「くらすわ」の前に広がる諏訪湖でも、同様の試みが検討されているようです。将来、「くらすわ」にも諏訪湖産真珠関連商品が並ぶ日が来るかもしれません。