生薬百選
生薬百選76
オオアザミ
キク科に属するアザミには、ノアザミ、ノハラアザミなど多くの種類があり、モリアザミは根が食用され、ヤマゴボウの漬物として使われています。今回その中のひとつであるオオアザミを紹介します。
オオアザミの花と葉
オオオアザミの花(近写)
オオアザミは、キク科の植物で、葉にミルクをこぼしたような白い模様があるのが大きな特徴です。聖母マリアがこぼしたミルクのあとだという言い伝えもあり、ミルクシスル(Milk Thistle)やマリアアザミ(Mariendistel)という呼び名もこのことに由来していると言われています。葉の縁には鋭いトゲがあり、写真を撮る時に無意識にさわってしまい痛い思いをしました。盛夏になると写真のような紫色の頭状花を咲かせます。
左:オオアザミの種子
右:タンポポの種子
花が咲いた後に綿毛のついた種子をつけます。タンポポと比べると種子が大きく、綿毛の柄の部分がありません。
この種子に含まれるシリマリンという成分が、肝臓をいたわる効果があり、肝機能を高めるため、慢性肝炎や肝硬変にも有用だという報告もあります。ヨーロッパにおいて、オオアザミは2000年にわたり民間薬として使われ、主に肝臓や胆管の疾患の治療に利用されてきました。日本でもオオアザミを含んだサプリメントも販売されています。
他にも毒キノコであるタマゴテングダケにも有用であるとも言われています。シリマリンが毒成分から肝細胞を保護する働きがあるからです。ドイツではこのキノコ毒の緊急治療にも用いられるそうです。
入江 陽(養命酒中央研究所・商品開発グループ)