養命酒ライフスタイルマガジン

生薬百選

生薬百選5
ナンテン

難を転ずるとの語呂合わせから、お正月の縁起物に使われたり、災難よけに庭先に植えられたりします。中国原産の植物ですが、果実を咳止めに用いるようになったのは中国から伝わった知識ではないようです。漢方処方には用いられず、民間薬的に単独で使われています。ナンテンエキスを配合したのど飴が有名になって需要が増し、薬用向けに国内生産(産地は大阪、奈良、和歌山)や輸入量が増えました。

果実にはο-メチルドメスチシンを主とするアルカロイドが含まれていますが、樹皮、根皮や葉にもアルカロイドが含まれています。アルカロイドとは、構造の中に窒素を含む塩基性の植物成分の総称で一般に作用が強く、毒物や劇物に分類される成分が多くあります(タバコに含まれるニコチンもそうですね)。ナンテンのアルカロイドは、医薬品として適量を摂取する分にはよいのですが、量を越すと中毒を起こすこともあるので要注意です。
紅い実のナンテン(写真左)以外にシロミナンテン(写真右)もあります。

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白鳥 奈緒美 (養命酒中央研究所・研究担当)

作家買いと称して、好きな作家の本は片端から漁る重度の活字中毒病患者です。