丸い蕾が坊主頭、白い総包が頭巾で「山法師」を連想
6月は春から山々を飾った花々もひと段落する頃ですが、ヤマボウシはそんな季節に咲く、唯一の大形の花といえます。卵形の大きな4枚の真っ白な総包片を開くのが特徴で、花が咲き揃う姿は本当に見事です。多数の小花が球状に集まって咲く花は可憐で、しかも緑の若葉に抱かれているのでいっそう清楚で美しいと感じます。
「山法師」という名前について、牧野富太郎博士は「多分丸い蕾の集まりを坊主頭に、白い総包をそれの頭巾に見立てたのであろう。」と述べています。花の盛りは木全体が真っ白になるほどです。
ヤマボウシは各地の山野に生育する日本特産の植物です。3〜8mほどに成長するミズキ科の落葉高木で、初夏の頃、枝先に花柄を出してその先に一群の花をつけます。似た植物にワシントンに桜を贈った返礼として贈られた花として知られるハナミズキがあります。ヤマボウシとの違いは花の季節が違うことと(ハナミズキは4〜5月ごろ開花)、花が葉に先立って咲くこと、葉の茂る量が少ないことがあり、簡単に区別することができます。ハナミズキをアメリカヤマボウシと呼び、逆にヤマボウシをヤマトハナミズキと呼ぶ人もいます。
ヤマボウシの別名は数多くの呼び名があり、山帽子、山饅頭、唐桑などがよく使われます。
薬用にはこの果実を薬用酒にします。疲労回復や食欲増進、鎮静に効果があるとされています。食用には秋に熟す実はそのまま食べると甘く、ジャムにしたりします。この木は材質が硬いので玄能(石工が石を割るときに使う道具)の柄や掛矢(木槌)、砧の槌、餅搗きの杵などに使われます。
花言葉は、「友情」です。
出典:牧 幸男『植物楽趣』
今月の生薬クイズ
【Q.】 ヤマボウシによく似た植物はなに?
(ヒント:ワシントンに桜を贈った返礼として知られる)
正解は?
➕
【A.】 ハナミズキ