東洋医学では、人には「先天(せんてん)の気」と「後天(こうてん)の気」があると考えられています。「先天の気」とは、その人が生まれながらに持っているエネルギーのこと。このエネルギーは「腎(じん)」に蓄えられています。

「先天の気」は、生まれた段階でほぼ総量が決まっており、自然の成り行きとして、年齢を経るごとに減少していきます。生活習慣の乱れやストレスでもすり減ってしまいます。

「後天の気」は東洋医学の「脾(ひ)」と関係が深く、西洋医学でいうと、胃腸などの消化器系を意味します。後天の気は、暮らしの中で補充できるものなので、日々の努力は報われやすいで
す。これらの気は体調を崩すと減ってしまうため、体調を崩さないだけでも老化防止につながるといえるでしょう。「先天の気」を不必要にすり減らさず、食養生などを通して「後天の気」を蓄えていく。これを日々の生活の中で実践していくことが大切です。

東洋医学では、「老化」の状態を2つの流れで捉えています。1つは、「陽(よう)から陰(いん)」への流れです。古代中国では万物を「陰」と「陽」に分けて様々な現象を捉えてきました。この陰陽論は医学にも用いられ、東洋医学では、新陳代謝が活発で、体が熱を発することができる状態を「陽」、体の一部または全部の新陳代謝が低下し、体が冷えて寒さに弱くなる状態を「陰」と考えています。

もう1つの流れは、「実(じつ)から虚(きょ)」への流れで
す。「実」とは、体格がよく、積極的で疲れにくく、胃腸が強い状態のことをいい、一方、「虚」は華奢な体格や水太り、消極的で疲れやすく、胃腸が弱い状態のことを指しています。

歳をとるに従い、誰でも「陽から陰」、「実から虚」に向かっていくと考えられています。その背景には、体の臓器そのものの機能が衰えることと、それぞれの調整力が低下することが関係しています。